坂口健太郎が語る”今”の生き方。「この撮影の直後に体重を10キロ増やしました」
「元交際相手の男が女性を殺害しました」
こういう報道があったとき、あなたはどう思うだろう。
もちろんどんな理由があるにせよ、人を殺めてしまうことは絶対許されない。それは当然として、その事件が起きた“背景”は、その事件に関わるすべての人の人生に大きく影響するのではないだろうか。
坂口健太郎さんが主演する映画『私はあなたを知らない、』は、「愛する人を殺めてしまうという重い罪を犯した孤独な青年と、母を奪われた娘が13年の時を経て対峙する」物語。中野量太監督が2016年の『湯を沸かすほどの熱い愛』以来10年ぶりにオリジナル脚本で挑む作品だ。
「孤独な青年」西山夕平を坂口さんが、夕平が初めて愛した恋人・紗月を堀田真由さんが、紗月の娘である朝子を早瀬憩さん(幼少期・倉田瑛茉さん)が演じている。
坂口さんにインタビューをした前編で、坂口さんはこのように語っていた。
「もちろん夕平が紗月にした行為は肯定されるべきではないと思うんです。でも今回の本で言うと、『元交際相手の男が女性を殺害しました』というニュースがあったとしたら、その報道ではわからないような部分の蓋をちゃんと開いて、本当は何が2人の間にあって、どういう存在がいてということを考えさせる赤裸々な話でもあるなと思うんです」
後編では坂口さんと夕平との共通点を探っていく。
映画を見ていて、筆者は一瞬そこにいるのが坂口さんだと気づかないシーンがあった。それくらい、夕平は息をひそめてそっと生きている。ワールドワイドなエンタメの世界で活躍する坂口さん個人とはかけはなれているようにも見える。しかし肉体をもって演じたとき、坂口さんは夕平の寂しさを理解したという。
夕平は天涯孤独な青年で、喜怒哀楽を出さずに生きてきた。しかしあるとき、一生懸命運動会の練習を頑張った朝子を応援したいがために、保育園で感情を隠さずに爆発させてしまう。「感情の放出の仕方もわからなかったのではないか」と坂口さんは語っていたが、では坂口さん自身は感情を出すことは得意なのだろうか。
「僕は、ポジティブな感情を出すのがすごく上手いと思います。なぜ『上手い』と言ったかというと……。自分が感情を出す時は、絶対にその対象がいるじゃないですか。それが個人なのか、チームなのか、チームでなくても複数人いるのかもありますが。例えば主演する時に、”そこでポジティブな感情を今出す”ということの意味を分かりながら出している瞬間もあったりします。主演をやらせていただく時に、主演が一番苦しくあれとも思うし、主演が一番楽しそうであれとも思ったりするのですが、一番きつそうな人が一番笑ってるのって、救われたりもするじゃないですか。だから俳優部という部署の一人として、そういう意味を考えて出してるのかもなと思う時もありますね」
ではネガティブな感情はどうなのだろうか。
「ネガティブなことは……僕多分それは肉体的にも精神的にもそうなんですけど、そういうネガティブな瞬間のダメージには割と鈍いところがあるんです。
肉体的なことで言うと、怪我でボロボロになって初めて病院に行くみたいなタイプなんですよ。整体の先生にも、『なんでここまで放っておいたの?』と言われたことがあります。『いてて』となった時も限界を超えているような時があるから、『感じないようにしている』という言葉があってるかもしれません。鈍いんです」
坂口さんの言葉に、渡辺淳一さんのベストセラー『鈍感力』というエッセイを思い出す。この作品がベストセラーとなったのは2007年のこと。些細なことで揺るがない「鈍さ」こそ、生きていく上で最も大切で、源になる才能だと説いていた。「坂口さん、鈍感力があるんですね」と言うと、こう返ってきた。
「それは結構あるかもしれませんね。だからいつも一定に見られるし、『いつもある程度テンションが高くて、ある程度丁寧に喋るし、いい関係を築けそうな雰囲気を持っていたりもする』と言われることもあるんですね。でもそれはある意味、夕平じゃないですけれど、自分のことを守るためでもあるし、相手のことを傷つけないためでもあったりします。怒らなければいけないときは怒りますけどね」