史上最強の選手は誰!? 歴代日本人DFの最高市場価値ランキング1〜10位。日本を代表する鉄壁の男たち

 サッカー選手のバリューを表す指標のひとつである「市場価値」は、時代によって大きく変動する。今回は、データサイト『transfermarkt』が算出した金額をもとに、日本人選手の歴代最高市場価値ランキングを紹介する。今回はDF編。※金額が並んだ場合の順位はサイトに準拠。市場価値は1月27日時点

10位:吉田麻也

【写真:Getty Images】

生年月日:1988年8月24日 最高市場価値:700万ユーロ(約11.2億円)

更新日:2018年1月2日(当時29歳)

 歴代日本人DFの最高市場価値ランキングで10位に登場したのは、長らく欧州リーグで活躍した吉田麻也だ。

 欧州や南米、アフリカといった地域出身者と比べると、日本人センターバック(CB)はどうしても体格で劣ってしまう。欧州リーグで日本人CBが活躍するのは至難の業と考えられてきたが、そんな常識を覆してみせたのが吉田だった。

 189cmという恵まれた体格をもつ吉田は、外国人CB並みとも言える空中戦の強さが最大の強み。また、危機察知能力に長けており、危険なエリアを未然に防ぐことも得意とする。

 2010年1月にVVVフェンロへと移籍して欧州初挑戦に乗り出した吉田は、2012年8月にサウサンプトンに加入。世界中から猛者が集うプレミアリーグへと参戦した。

 屈強なアタッカーと対峙しても当たり負けしない日本人CBの姿を目の当たりにして、多くのプレミアファンが驚いたことだろう。サウサンプトン在籍中の2018年1月には、市場価値700万ユーロ(約11.2億円)を記録。当時29歳の吉田は、高いレベルが要求される舞台で自身のキャリアにおける最高額を叩き出してみせたのだった。

 その後、吉田はサンプドリアやシャルケなどの欧州5大リーグクラブでプレー。現在はロサンゼルス・ギャラクシーに所属している。36歳となりキャリアの終盤に差し掛かっているのは事実だが、日本人CBの“パイオニア”として欧州リーグで存在感を発揮した功績はいまだに色褪せることがない。


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 歴代日本人DFの最高市場価値ランキングで9位にランクインしたのは、欧州5大リーグクラブで不動の右サイドバック(SB)として活躍した酒井宏樹だ。

 酒井が欧州初挑戦に乗り出したのは、2012年7月のことだった。ハノーファーに加入すると、ブンデスリーガのプレースピードの速さやチーム戦術への適応に苦しんだ時期もあったが、徐々にクラブの確固たる信頼を獲得。右SBのファーストチョイスとして試合に出続けた。

 欧州における酒井の評価がより高まったのは、2016年7月に移籍したマルセイユ時代だ。欧州屈指の名門クラブでも、酒井はレギュラーを確保。ダイナミックなオーバーラップと右足から放たれる高精度のクロスを武器に、リーグ・アン有数の右SBとして名を馳せた。

 マルセイユ在籍中の2018年7月には、自己最高額の市場価値800万ユーロ(約12.8億円)を記録。当時28歳の酒井はサッカー選手として脂がのってきた頃で、ピッチだけでなく市場でも存在感を発揮し始めた。マルセイユ加入時の市場価値は200万ユーロ(約3.2億円)だったため、約2年の間に4倍の伸び率を見せたことになる。

 2019年12月まで最高額を維持していた酒井の市場価値は、その後下落。浦和レッズ在籍時の2022年1月にはピーク時の半分を下回る350万ユーロ(約5.6億円)の値を付けた。

 だが、酒井は市場価値とはまた別のところで新たなバリューを生み出している。2024年7月には、同年3月創設の“新興クラブ”オークランドFCへ加入。今シーズンのキャプテンを任されるなど、34歳となった今もなお進化を続けている。


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 歴代日本人DFの最高市場価値ランキングで8位に食い込んだのは、ベルギーで充実したキャリアを築いている渡辺剛だ。

“パイオニア”の吉田麻也が欧州リーグに残した足跡を辿り、多くの日本人センターバック(CB)が海を渡った。渡辺も日本を飛び出して欧州挑戦に乗り出した1人であり、現在はヘントの主力CBとして活躍している。

 渡辺は2022年1月にコルトレイクに移籍したものの、移籍初年度の2021/22シーズンはジュピラー・プロ・リーグで7試合の出場にとどまり、大きなインパクトを残すことができなかった。

 潮目が大きく変わったのは翌2022/23シーズンで、渡辺はコルトレイク守備陣の中心としてリーグ戦全試合にフル出場。 “鉄人”ぶりを見せつけてベルギーで一躍名の知れた存在になると、2023年7月には強豪・ヘントに加入を果たした。

 新天地でも主力CBの座を射止めた渡辺は、市場においても成長ぶりを披露する。2024年10月には自己最高額となる900万ユーロ(約14.4億円)を記録したが、これはコルトレイク加入時の市場価値80万ユーロ(約1.3億円)と比べると10倍以上もの金額である。

 渡辺は現在も自己最高の市場価値を維持している。さらに上の金額へと到達するための必須条件は「ベルギーからのステップアップ」か。ヘント入団会見で「夢は日本代表で活躍することと、ドイツでやりたい」(クラブ公式YouTubeより)とブンデスリーガに対する憧れを告白しているが、27歳という年齢を考えれば、移籍のタイミングはこの1~2年がベストかもしれない。


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 歴代日本人DFの最高市場価値ランキングで7位に入ったのは、欧州における日本人サイドバック(SB)の地位を高みに押し上げた内田篤人だ。

 2010年7月、内田はシャルケに移籍して欧州挑戦を始めた。当時シャルケの監督を務めていたのは、“鬼軍曹”フェリックス・マガト。厳しいトレーニングを課すことで知られる指揮官の下、内田は日々鍛錬を積み、右SBのレギュラーを掴んだ。

 移籍初年度の2010/11シーズンは何かと印象に残るシーズンで、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)では準々決勝で長友佑都が所属するインテルと対戦してCL初の日本人対決が実現。シャルケはクラブ史上初のCLベスト4に食い込み、内田は日本人選手として初の同大会4強経験者となった。

 一方、内田が自己最高額の市場価値を記録したのは少々意外なタイミングだ。2015年2月、当時26歳の内田には900万ユーロ(約14.4億円)の価値が付いた。

 だが、2014/15シーズンは序盤戦から負傷に苦しんだ1年であり、市場価値記録を更新した翌月の同年3月には膝蓋腱を痛めて戦線離脱。そのままシーズンを終え、オフの同年6月には右膝の手術に踏み切っている。市場での存在感とは裏腹に、内田はキャリアの中でも難しい時期を過ごしていたのだ。

 176cmと決して大柄な体格ではないものの、内田はブンデスリーガやCLといった舞台で屈強なアタッカーたちと堂々と渡り合った。クールな言動からは想像もつかない“熱さ”が内田の欧州挑戦を支え、市場価値の上昇に繋がったのだろう。日本人SBの先駆者として内田が欧州で残した功績は非常に大きい。


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 歴代日本人DFの最高市場価値ランキングで6位に入ったのは、長身の左利きセンターバック(CB)として欧州の強豪クラブから注目されている町田浩樹だ。

 現代サッカーのCBはハイレベルなビルドアップ能力が求められており、なかでも左利きCBは希少性が高いと言われているが、町田はそれに当てはまる。左利きの利点を最大限に生かしたビルドアップが売りのCBで、ディフェンスラインから崩しのパスを打ち込めるため、対戦相手からすればやっかいな、チームメイトからすれば頼りになる存在である。

 町田は2022年1月にユニオン・サン=ジロワーズに期限付き移籍すると、2023年3月には完全移籍に移行。得意のパス出しに加えて190cmの恵まれた体格を生かした空中戦でも強さを発揮し、ベルギーで存在感を高めていった。

 2023/24シーズンはジュピラー・プロ・リーグで23試合に出場。主力CBとしての地位を確立したことで市場価値も高騰し、2024年6月には自己最高額の1000万ユーロ(約16億円)に到達した。

 現在も自己最高の市場価値を維持している町田には、強豪クラブからの関心の噂が絶えない。昨夏の移籍ウィンドウではドイツやイングランド方面からの関心が各メディアで伝えられたが、その数ヶ月前からトッテナムやクリスタル・パレス、ノッティンガム・フォレストといったプレミア勢が熱心に町田の動向を探っていたという(イギリスメディア『Sport Witness』より)。

 今後、最高市場価値ランキングのさらに上位で町田の名を見つけることがあるとするならば、ベルギーからステップアップして欧州5大リーグに参戦した時だろう。


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 歴代日本人DFの最高市場価値ランキングもいよいよトップ5。5位に入ったのは、日本人サイドバック(SB)の可能性が無限大であることを欧州の舞台で証明してみせた長友佑都だ。

 冬の移籍ウィンドウ最終日である現地時間2011年1月31日、「日本人SBの長友がインテルへ期限付き移籍で加入」という衝撃のニュースが世界を駆け巡った。2009/10シーズンにイタリア史上初の主要タイトル3冠(セリエA、コッパ・イタリア、UEFAチャンピオンズリーグ)を達成したインテルに日本人選手が移籍するというインパクトは絶大なものがあった。

 さらに、同日、期限付き移籍で加入していたチェゼーナへの完全移籍が発表されていたばかりだったこともあり、長友のインテル入りは多くのサッカーファンに驚きをもって受け止められた。

 2010/11シーズン、長友はCL準々決勝で内田篤人が所属するシャルケと対戦。日本のサッカーファンはCL初の日本人対決に沸いた。シーズン途中の加入ながら抜群の運動量と機動力で存在感を発揮した長友は、翌2011/12シーズンの始動日となった現地時間7月1日、5年契約でインテルへ完全移籍。自らの実力で3冠王者との契約を勝ち取った。

 2014年1月、当時27歳だった長友の市場価値は1400万ユーロ(約22.4億円)に到達した。2013/14シーズンはリーグ戦34試合に出場して自己最多の5得点7アシストを記録しただけでなく、移籍4シーズン目にして初めてゲームキャプテンを任された記念すべきシーズンでもあった。

 インテルはサイクルの終焉を迎えて低迷期に入っていたものの、長友はサイドを惜しみなく上下動して献身的にチームを支え続けた。170cmと小柄な長友が、セリエAやCLといったフィジカルに優れたアタッカーが居並ぶ舞台で堂々たるプレーを披露した意味はとてつもなく大きい。

 日本人SBの価値を大きく引き上げた功績を加味すれば、22億円を超える市場価値を記録したのも当然の結果である。


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 歴代日本人DFの最高市場価値ランキングで4位にランクインしたのは、高い攻撃性能を持つ右サイドバック(SB)の菅原由勢だ。

 2019年7月、菅原はAZアルクマールに期限付き移籍で加入し、19歳で欧州初挑戦に乗り出した。すると、移籍初年度の2019/20シーズンから右SBを任されただけでなく、攻撃センスを見込まれてウイングの位置でもプレー。翌2020/21シーズンに契約が完全移籍へ移行すると、同シーズンでは右SBのレギュラーをより確実なものとした。

 エールディヴィジを代表するSBへと成長した菅原は、AZ在籍最終年の2023/24シーズン中に自己最高の市場価値を記録する。2023年12月に叩き出した金額は1500万ユーロ(約24億円)。AZ加入直後の2019年9月時点で100万ユーロ(約1.6億円)だった市場価値は、約4年の間に15倍もの伸び率を見せたことになる。

 オランダで目覚ましい活躍を披露した菅原だが、2024年7月に移籍したサウサンプトンでは思うようなプレーができず苦戦している。現在の市場価値は1200万ユーロ(約19.2億円)だが、パフォーマンスを向上させることができなければ金額がさらに下がる可能性も十分にある。

 とはいえ、チーム全体が低調な出来に終始しているため、その状況に引きずられるようにして菅原のプレーぶりが悪化しているのもまた事実だ。AZ時代に幾度となく見せた右サイドを蹂躙するようなプレーを復活させて市場での存在感を取り戻すためには、残留争いに身を投じるようなクラブではなく、より良いエネルギーに満ちたクラブに移籍するのが最善の手だろう。菅原はまだ24歳、才能を発揮できずに燻るにはあまりにも若すぎる。

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