「73歳の最高権力者」にくすぶり続ける健康不安説…「意識喪失」「緊急搬送」も取り沙汰された習近平主席、“最大の謎”はなぜ「院政」ではなく「終身独裁」を目指すのか(デイリー新潮)|dメニューニュース
中国の「1982年憲法」は文化大革命の反省を踏まえ、国家主席の任期を「1期5年、連続は2期10年まで」と定めた。習近平・国家主席は2013年に選出されたため、本来であれば23年に引退するはずだった。ところが習主席は18年に任期の制限を撤廃してしまう。多くの専門家が習主席は「終身独裁を狙っている」と分析した。事実、2023年の全国人民代表大会で習主席は3期連続で国家主席に選出された。(前後編の前編)
***
田中三郎氏は中国軍事問題の研究家として知られ、月刊誌『軍事研究』に発表する論文は高い評価を受けている。田中氏は防衛大学校から陸上自衛隊に進み、一貫して中国人民解放軍の調査、研究を積み重ねてきた。中国の専門家だけあり、自衛隊から外務省に出向した経験も持つ。
田中氏は「習主席が本当に終身独裁者として君臨するつもりなのか、それを見るには今年10月に行われる5中全会(党中央委員会第5回全体会議)と、来年秋に開かれると言われる党大会が大きなポイントになります」と言う。
「今後の習主席について考える前に、彼が任期制限の撤廃に踏み切ったのは、実のところリスクの非常に高い決断だったことを確認しておきましょう。2期10年の終わりが見えてきたタイミングで後継者を指名し、引退後は院政を敷くほうが、終身独裁を目指すよりは安全です。前例を踏襲すれば共産党員も国民も表立っては異議を唱えません。党内の平穏を保ったまま、権力移行はスムーズに進行する展開が期待できます。さらに習主席は前主席として党上層部に睨みを利かせ、自由にコントロールすることも狙えます」
ところが習主席は前例を踏襲せず、終身独裁の実現を目指すという危険な賭けに打って出た。
30秒間の意識喪失
「なぜ習主席はこれほど最高権力の座に固執しているのか、究極的には謎と言っても過言ではありません。ただし、昨日今日の決断ではなかったことは確かです。長期的な計画を立て、虎視眈々と終身独裁の実現を目指してきたのは間違いありません。さらにロシアのプーチン大統領に対する強い憧れも指摘できるでしょう。プーチン大統領の強権的な姿勢を見るにつれ、同じ存在になりたいと願い続けてきたと多くの専門家が分析しています」(同・田中氏)
5中全会は10月26日から29日まで北京で開催される予定になっている。後で詳しく見るが、習主席の超強権的な姿勢は党内に多くの“敵”を作っている。
習主席は5中全会で独裁者として君臨して党をさらに引き締めようとするのか、意外にも融和的な姿勢で“敵”の籠絡を図るのか──。まず田中氏が注目するのは習主席の健康問題だ。
「9月12日から13日まで、インドのニューデリーで第18回BRICS首脳会議が開かれました。12日午後は首脳会議の第1セッションで、インドのモディ首相が演説を行っていました。その際、習主席が約30秒間、意識を喪失していたとの情報が飛び交ったのです。13日の夜に専用機で習主席は北京に戻ったはずなのですが、飛行機から降りる姿は確認されませんでした」(同・田中氏)
払拭できなかった健康不安説
しばらくすると「習主席は脳梗塞を発症。北京到着後、軍用機で中国人民解軍総医院北京301医院に緊急搬送された」との情報が流れたという。
インドやシンガポールのメディアが習主席の異変を伝え、さらにアメリカのウォール・ストリート・ジャーナル紙が「首脳会議の晩餐会を習主席は体調不良で欠席した」との記事を配信した。
中国に戻った習主席について、「9月24日には習主席とトランプ大統領の首脳会談がセッティングされているが、体調不良でキャンセルする可能性がある」との見方も浮上した。
9月23日、習主席はワシントン郊外のアンドルーズ統合基地に到着した。これで健康不安説を“フェイク・ニュース”と一蹴したメディアもあったが、そう簡単ではない。
まずイギリスのインディペンデント紙が「基地に到着した習氏は手すりと彭麗媛夫人の手をしっかり握りながら、ゆっくりとタラップを降りた。このため健康不安説を払拭することはできなかった」と報じた。
さらにウォール・ストリート・ジャーナル紙も「中国側の要求」について記事を配信した。それによると、「習氏の休憩時間を充分に確保する」、「ホワイトハウスに専用の休憩室を用意し、習氏と彭麗媛夫人以外の立ち入りは禁止」、「24日の昼食会は中止」──というものだったという。
病で倒れたほうが中国は平和
「日本のメディアは言及しませんでしたが、私もアンドルーズ統合基地に到着した習主席の姿には違和感を覚えました。特に彭麗媛夫人の手をしっかり握る姿は、身体のバランスを取るのに苦労しているようにも見えました。また最近の習主席は軍事パレードに姿を見せても、兵士に敬礼しなくなっています。腕が動かせないのか、たとえ動かせても負担が大きいのかもしれません。いずれにしても習主席は来年6月で74歳です。持病があって当たり前でしょう。しかも皮肉なことに習主席が病で倒れたほうが、むしろ権力の委譲はスムーズに進むと考えられます。もし彼が元気な姿で10月の5中全会や来秋の党大会に出席したのなら、権力闘争の死闘が繰り広げられる可能性を考える必要があると思います」(同・田中氏)
後編【習近平氏“一強”体制に渦巻く不穏な空気…「人民解放軍」「太子党」にも容赦しない大粛清で“孤独な最高指導者”をおびやかす反撃の狼煙は上がるか】では、粛清やパージの対象となった人民解放軍や太子党はどう習主席に反撃するつもりなのか、権力闘争の詳細についてお伝えする──。
デイリー新潮編集部