なぜフランス人はデモし、日本人は従うのか?「大きな政府」で異なる国民行動の実像(Wedge(ウェッジ))

フランスでは、教育改善や物価高対策訴え各地で大規模デモが繰り広げられている( ロイター/アフロ)(WEDGE Online(ウェッジ・オンライン))

 フランスでは、年金改革や増税、公共サービスの縮小が打ち出されるたびに、大規模なデモやストライキが起きる。2026年10月にも、連日日本のメディアでも報道されている通り、教育環境の悪化や生活費の上昇への抗議が全国に広がった。10月17日のデモには政府発表で約55万人が参加し、多くは平和的に行進したが、一部では暴動に発展した。

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 日本でも、社会保障負担は増え、実質賃金や生活水準をめぐる不満が蓄積している。それでも、政府や企業の方針を変えさせようと企図するデモやストライキは起きない。争議行為を伴う労働争議は、ピークだった1974年の9581件から2025年には77件まで減少した。 背景には、企業別組合を基礎とする労使協調の定着がある。組合は労働者全体の利益より所属企業の存続と成長を優先し、経営側との対抗関係より運命共同体に近い関係を形成した。労働者を代表するはずの組合が企業内部の調整機関となり、労使協調は次第に癒着的な関係へ傾いていった。

 フランス人は好戦的で、日本人は従順だからだろうか。国民性という説明はわかりやすい。だが、根本にあるのは国家と市民との関係である。より正確にいえば、国民が国家を自分たちの交渉相手として扱ってきたフランスと、国家を所与の秩序として受け入れてきた日本との違いである。


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 日本も大きな政府へ向かっている。2026年度一般会計当初予算では、社会保障関係費が39兆559億円、国債費が31兆2758億円、地方交付税交付金等が20兆8778億円である。 合計は94兆2095億円となり、歳出総額122兆3092億円の77.0%に達する。社会保障、政府債務、地方財政の維持が財政運営の中心となっている。 日本の大きな政府は、フランスとは異なる歴史から生まれた。これまで本連載「解剖:「大きな政府」を好む日本」でも述べてきた通り、明治政府は欧米列強に追いつくため、中央集権的な官僚機構を整備し、産業、教育、軍事、金融、交通を国家主導で形成した。明治憲法制定後も、政府は超然主義を掲げ、行政官僚が国益を定義し、社会を導く構造を築いた。

 この意味で、日本には明治以来の国家社会主義的な伝統がある。市場や私企業を残しながら、官僚が国家目標を定め、企業と国民をその実現へ導く統治である。


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 日本人が政府に従う背景には、国家に守ってもらう代わりに、その決定を受け入れる関係がある。災害、景気悪化、物価高、老後、医療、介護、子育て、雇用と、問題が生じるたびに政府の対応が求められる。日本人は国家を、条件を交渉する相手より、生活を守り不安を取り除く保護者として受け止めてきた。 人々は行政の決定に従う一方、国家が暮らしを保障することを期待する。政府も給付、補助金、規制、公共事業、社会保障を通じて応えてきた。国家への服従と依存は表裏一体である。

 不満も政府への要求として表れ、人々は自ら決定する市民より、給付を待つ受益者になっていく。政府支援は安心をもたらす一方、恒常化すれば、市民、家族、地域社会が自ら問題を解決する力を弱める。

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