赤沢氏「作品すべて拝読、ラスト泣きそうに」百田氏「あかん、ファンに」有本氏「…甘い」

日本保守党の百田尚樹代表(左)と赤沢亮正経済産業相=20日午後、国会内(奥原慎平撮影)

日本保守党の百田尚樹代表は20日、参院経済産業委員会で赤沢亮正経済産業相が先に行った大臣所信の一部の表現ぶりを「意味が分からない」と追及した。小説家の百田氏は自身の作品執筆の際は「読者に理解されるか注意する」という。これに対し、赤沢氏が「百田先生の小説はほぼ読んでいる」と応じると、その後、百田氏の赤沢氏への思いに何らかの〝異変〟が生じたようだ。その様子をみた同党の有本香事務総長はX(旧ツイッター)に「あかん」と書き込んだ。

「中国語かいな」

百田氏はベストセラー「永遠の0」などの著者で知られる。この日の委員会ではまず、「私は小説家」と自己紹介したうえで、大臣所信での表現ぶりに「いくつか気になる。最初のページに『所信的挨拶(あいさつ)』とか。こんな日本語あるんかな。中国語みたい」と〝嫌み〟を交えて疑問視していた。

具体的には、大臣所信に盛り込まれた言葉「DX」(デジタルトランスフォーメーション)や「GX」(グリーントランスフォーメーション)、「フュージョンエネルギー」(核融合)などが一般の人にとっては分かりにくいと指摘した。

「極め付きは『ディープテック・スタートアップ』…ほとんどの国民が意味が分からないのではないか。近くにあった国語辞典にも載っていなかった」(百田氏)

「特に至高なのが…」

やや好戦的とも思われるような百田氏の指摘に対し、答弁に立った赤沢氏は、穏やかな様子でこう切り出した。

「私は百田先生の小説はほぼ全部読んでいる」

「特に至高だと思ったのが、『プリズム』(幻冬舎)。こんなこと書ける人がいるのか。天才だなと何年も前だが震えた覚えがある」

ここでいう「プリズム」は、百田氏の平成23年作の長編恋愛小説だ。こうして赤沢氏は百田氏を持ち上げてみせたのだが、「その百田先生から『お前の日本語は分かりづらい』と言われ、傷つく部分もある」と自嘲気味に語り、今後も分かりやすい表現を心がけると強調した。

その後、質疑のなかで百田氏はメガソーラー(大規模な太陽光発電施設)の開発推進などの見直しを求め始めた。赤沢氏が石破茂前政権下で担当した日米関税交渉を巡り、5500億ドル(80兆円超)の対米投資で合意したことを疑問視し、「日本人1人当たり66万円。こんな投資を勝手にさせられたらたまらない」と指摘した。

「舌鋒は少々緩く」

「国内投資を重点化すべきだ」などと経産委員としての〝本題〟に切り込む百田氏に、赤沢氏は「特に巨額であるとは考えていない」などと丁寧に反論を重ねていた。

一連の質疑が終わった後、赤沢氏は百田氏に改めて、「『永遠の0』も『海賊とよばれた男』も素晴らしかった。『プリズム』のラストには泣かされた」と伝えたという。

両氏の応酬を、国会内の委員会室で傍聴した有本氏は自身のXに「ほめ殺しの〝一撃〟をかまされ、百田代表、少々舌鋒(ぜっぽう)が緩くなったような気がします」と書き込むと、百田氏も「あかん、赤沢大臣のファンになりそうや」と投稿した。

これを見た有本氏は「あかん、甘い…」と苦言を呈した。百田氏の初めての委員会質疑はこうして終わった。

日本保守党の百田尚樹代表=20日午後、国会内

ただ、百田氏が疑問視した「ディープ~」に対する、赤沢氏の説明はやや難解なものだった。

「テクノロジーの中で、ゲームチェンジャーになるような、インパクトのあるテクノロジーのスタートアップだ」

カタカナ語を多用した答弁に対し、百田氏は「訳の分からん外来語がようけあったが、それは置いておく」と述べるにとどめていた。(奥原慎平)

「マナー悪い観光客が減るのは大いに結構」百田氏

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