「どっちに蹴るか」湘南GKの“誘い”にも乗らず…川崎F宮城天が堂々PK弾「ああいうところで譲っていたらいつまでも中心選手にはなれない」

[4.2 J1第8節 川崎F 2-0 湘南 U等々力]

 1-0で迎えた後半アディショナルタイム2分、自ら掴んだ絶好のチャンスを譲るつもりはなかった。「PKは絶対的な自信があったので。練習もしているし、PKが来た時の想定は常にできている。取った瞬間に決められると思った」。川崎フロンターレFW宮城天は並み居る名手を押しのけ、堂々とPKキッカーに名乗り出ると、短い助走からゴール右ギリギリにシュート。開幕節・名古屋戦以来の今季2点目が勝利を決定づけるダメ押しゴールとなった。

 待ちに待った後半37分の途中出場から8分後、宮城は自らの仕掛けでチャンスを切り開いた。ペナルティエリア左でボールを持つと、あえて縦に持ち出すことを選択。「自分が出場する時はカットインを警戒されることがすごく多くて、ゴール近くになるとシュートを警戒してくるので、縦は確実に抜ける手応えがあった」。これがMF藤井智也のファウルを誘い、PK獲得につながった。  今季の川崎Fはキッカーが「自分が取って蹴りたいならその人が蹴る」(宮城)という方針。ピッチにはFWエリソン、FW家長昭博といった名手も揃っていたが、迷わずペナルティスポットに立った。 「そこは自分の得意な部分なので。ほぼシュートと同じ感覚で蹴れていて自信があったし、外さないと思っていたので。いろんな人をはねのけて蹴ったんで絶対に決めないとなとは思った。でもああいうところで譲っていたらいつまでも中心選手にはなれないし、スタメンを目指してやっているので、目に見える結果を全力で取りに行った結果だと思う」(宮城)

 キックの直前に給水に向かっていると、昨夏まで1年半川崎Fでプレーしていた湘南GK上福元直人からの冗談まじりの“誘い”もあった。「どっち蹴るか教えろよって。どうせチップキックとかしてくるんだろって。こっちは緊張してるのに……(笑)」。それでもキックが乱されることはなく、自分の間合いから冷静に右のコースに蹴り込んだ。

「(共に在籍していた期間中は自身が)ほぼケガしていて(上福元に)自分のPKの感じがわかられていなかったんで助かりましたね」

 そう照れ笑いを浮かべた宮城は「そろそろ点を決めたいと思っていたので、ゴールパフォーマンスも考えていた」というセレブレーションも披露。「膝スラしたい気持ちはあったけど、膝をケガしたのに膝スラすると怒られるんで、滑るとなったら前からしかないかなって」。頭からのスライディングでベンチメンバーのほうに突っ込むと、すでに交代していたFW山田新たちからの手荒い祝福を受け、久々のゴールの味に浸った。

 今季は開幕節で途中出場からゴールを記録したものの、J1リーグ戦での先発機会はなかった宮城。前節・FC東京戦から始まる週2試合ずつの7連戦に燃えていた。 「この7連戦は一番チャンス。やっぱりスタメンで出たいので。スタメンで出た時に自分のプレーができる自信もあるので、今日みたいに結果を出さないとスタメンで使ってもらえない現状。そこに気持ちを込めたやった結果、点も取れたし、アピールできたのかなと思う」。先発奪取にも弾みをつけるゴールとなった。  左ウイングではFWマルシーニョも好パフォーマンスが続いており、ポジション争いは熾烈。それでもJ2で武者修行した一昨季、怪我に苦しんだ昨季の経験がいまの宮城を支えている。  持ち味の仕掛けだけでなく、「守備の部分もずっと課題を持ってやれているので、少しずつ上達している感覚がある」と手応えも深めるこの1年。「自分の武器だけではなく、他の部分も表現していかないと優勝するための戦力になれないので考えながら過ごせている」。まずは「途中出場でもスタメンでも結果を残せる時間はあるので、準備はずっとし続けたい」と虎視眈々と出番を狙いつつ、与えられた役目で結果を残し続けていく構えだ。 (取材・文 竹内達也)★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!●2025シーズンJリーグ特集

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