カリブ海の巨大陥没孔「グレート・ブルーホール」、最新探査で明らかになった衝撃の事実(Forbes JAPAN)
自然現象で発生する陥没孔は、シンクホール、あるいはドリーネとも呼ばれる。侵食や化学的な変化によって地下に空洞が生じ、それが崩壊して、地表に達する大きな穴が開いてできるものだ。 【画像】グレート・ブルーホールの空撮写真 シンクホールは陸上でよく目にする地形だが、海中にも存在し(ブルーホールと呼ばれる)、沿岸の浅瀬に、深い円形の陥没孔として現れることが多い。 こうしたブルーホールは、海水位が今よりずっと低かった数千年前に地上だった場所において、石灰岩にできた洞穴を起源とするケースが多い。時が経つにつれて、海面が上昇した際に、これらの洞穴に海水が入り込んでその一部が崩壊し、私たちが今日目にするような、海底の巨大なブルーホールが形成された。 こうしたブルーホールの中でも、最大級の大きさと知名度を誇るのが、中米の国ベリーズ沖にある「グレート・ブルーホール」だ。直径318m、深さ124mというこの巨大なブルーホールは、地元の漁業者には何世代も前から知られていた。しかし国際的な注目を浴びるようになったのは、海洋探査の技術が進んだ20世紀半ばになってからだった。 世界各地の海への関心が高まるなかで、この特異な海洋地形も、人々の興味を引きつけるようになっていった。 ■ジャック・クストーが、自分のテレビ番組でグレート・ブルーホールを一躍有名に 1960年代末になると、海洋探査は大きな変革期を迎えた。スキューバ技術や海中写真術、潜水艇の進歩により、深海へのアクセスがかつてないほど容易になった。それと同時に、テレビや、科学的な知識を求める好奇心に刺激された一般の人々も深海に魅せられ、これによって海洋調査は一気にメジャーな存在になった。 当時、こうした動きの最前線に立っていたのがジャック・クストーだ。クストーはフランス海軍退役後に海洋学者に転じ、映像制作や環境保護活動に従事した人物だ。 クストーはすでに、秘境のサンゴ礁や古代の沈没船、環境に重要な意味を持つ海の生態系を紹介し、世界の注目を集めていた。さらに、科学上の新発見を、映像を駆使して語るストーリーと融合させるという、これまでにない方法論を確立したことで、世に知られるようになった。 ジャック・クストーは1971年、自身のクルーと共に海洋調査船「カリプソ号」に乗り込み、ベリーズに赴いた。その目的は、この国にあるサンゴ礁「ライトハウス礁」の海底にぽっかりと開いた巨大な真円のシンクホール「グレート・ブルーホール」の探査だった。 この探査は、クストーがホスト役を務める著名なテレビシリーズ『クストーの海底世界』の一環として実行されたものだった。 この時点で、このブルーホールがカルスト地形(石灰岩地域で、雨水、地下水などの溶食によって生じた特殊な地形)に起源を持つことは、地質学者によってある程度は把握されていた。だが、クストーの探査に対するアプローチは、彼らとは異なっていた。彼がこの地に赴いたのは、この自然の驚異を世界中の人に見せるためだった。 実際、この地に魅せられたクストーは、その後、グレート・ブルーホールを「世界のスキューバダイビングスポット」ベスト5の一つに選んでいる。 クストーの探査は、グレート・ブルーホールが、かつては石灰岩でできた地上の洞穴だったことの裏付けとなる証拠を、初めて広く世に示したものだった。この洞穴は、海水位が低かった最後の氷河期に形成されたものだ。クストーの撮影チームが撮影した海中に沈む鍾乳石の映像は、海面が上昇するに従って洞穴が崩壊し、海水に浸されたことを示し、地質学上の定説を裏付けるものとなった。