2m冠水したアンダーパスで15分の救出劇…水につかった車から高齢女性救出、富山県警が66歳男性に感謝状

 大雨で冠水した富山県高岡市のアンダーパスで、水につかった車から高齢女性を救出した男性に高岡署から感謝状が贈られた。当時の水深は2メートル近く。泳いで車にたどり着き、片手で天井の標識にぶら下がり、もう一方の手で車が沈まないように引っ張り上げ続けた。男性は、「とっさに体が動いた」と振り返った。(原中翔輝)

ドアが開かない

現場のアンダーパス

 この男性は、同市能町の造園会社員東 登嗣(たかし) さん(66)。

 現場は、同市野村の国道8号下をくぐる市道に設けられたアンダーパス(高さ3メートル)で、大雨に見舞われた8月7日朝、冠水した。同市伏木古国府ではこの日、午前8時8分までの1時間に55・0ミリの非常に激しい雨が降っていた。

 東さんは、雨で仕事がなくなり車で帰宅。午前8時25分頃、ここに通りかかり、80歳代女性の軽乗用車が手前で止まるのを目撃した。

 「ひょっとすると入っていくのでは」

 予感は的中し、アンダーパスに進んだ軽乗用車は、窓ガラスの下の辺りまで浸水した。東さんは近くに停車し、長袖、長ズボンの作業服姿で長靴を履いて水中へ。「怖くはなかった。とにかく引っ張り出さないとまずいと思った」と振り返る。だが、内部まで水が入った軽乗用車の左後部ドアは、開かなかった。

浮力が味方

東さんが当時つかんだ高さ制限標識(26日、富山県高岡市で)

 東さんは水から上がり、近くの医療事務今井美香さん(61)に110番を依頼。長靴を脱いで再度救出に向かった。そのわずかな間に、軽乗用車は奥へ沈み込んでしまった。身長1メートル67の東さんが立てない深さで、平泳ぎで軽乗用車にたどり着いた。

救助のイメージ

 見上げるとアンダーパスの天井が迫っていた。同時に、集まってきた付近住民らの姿が見えた。「ロープはないか」と声をかけつつ、天井にあった高さ制限の標識に左手をかけ、右手で車体をつかんで、軽乗用車がそれ以上沈まないように引っ張り続けた。浮力が味方をしてくれた。

 住民がロープを上から垂らすと、東さんは顔を泥水につけ、軽乗用車の後ろの車軸にロープを巻きつけた。その後、住民や消防隊員らがロープを引っ張り、女性は助け出された。15分程度の救出劇だったという。

 110番した今井さんは「東さんはぬれても『大丈夫』と言って、立派だった。何度も女性に『頑張って』と声を掛けていた」と振り返る。東さんは「少し水を飲んだが、健康に問題はない」と笑う。

女性は退院

 高岡署から26日に感謝状が贈られた。手渡した豊田馨署長は「水深は2メートル近くあっただろう。勇敢な対応に頭が下がる」とたたえた。女性は水を飲み、一時意識を失う重症だったが、15日に退院。現在は日常生活を送っているという。東さんは「退院したと聞き安心した。近隣の人の協力で救助できた」と今井さんらへの感謝も忘れなかった。

 今年春から能町自治会長を務める東さん。役員会でもこの経験を踏まえて、注意を呼びかけた。「いろいろな場所にアンダーパスはある。気をつけてほしい」

アンダーパス 大雨注意

 線路や高速道路の下をくぐる立体交差道路「アンダーパス」は、国土交通省によると、全国に3661か所、県内に125か所ある(2022年3月末時点)。

 県道路課が「冠水が想定される箇所」としてまとめた資料では、富山市が64か所で最多。射水市32か所、黒部市29か所、入善町27か所と続く。

 大雨が降ると、アンダーパスはなぜ危険なのか。日本自動車連盟(JAF)富山支部事業係の林宏二さんは「車は、ある程度浸水を想定して設計されているとはいえ、エンジンは吸気口に水が入ると止まり、電気系統がぬれると壊れる」と解説する。「大雨のときはアンダーパスのような、水がたまりやすい場所には行かないで」と呼びかける。

 冠水したアンダーパスで車が動かなくなったら、すぐに脱出を試みる。水位が高く、ドアが水圧で開かないときは「窓ガラスを下げて脱出できなければ、ハンマーなどで窓をたたき割ってほしい」(林さん)。

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