トランプ関税復活、米高裁が差し止め一時停止 不透明感続く

[29日 ロイター] - 米連邦巡回控訴裁判所(高裁)は29日、トランプ大統領の広範な関税の大部分を差し止めた国際貿易裁判所の判断を一時停止し、関税措置を復活させる判断を下した。

ワシントンの連邦高裁は政権側の控訴を検討するため地裁の判決を一時停止するとし、原告らには6月5日までに、行政には同9日までに回答するよう指示した。

国際貿易裁判所は28日、合衆国憲法は議会に他国との通商を規制する独占的な権限を与えているなどとして、トランプ大統領が発動した一連の関税の大部分を差し止めていた。これを受け株価は上昇していたが、今回の高裁の判断で市場は明確な方向感を失う展開となった。 もっと見る
ベセント米財務長官は29日のFOXニュースのインタビューで、日本を含む貿易相手国が米国と誠実に交渉を続けているとの認識を示した。トランプ政権の関税を差し止める貿易裁判所の判断後も、これらの国々の態度に変わりはないと指摘した。 もっと見る

<市場は大きく反応せず>

米国株式市場は高裁の判断に大きな反応を示さず、小幅に上昇して取引を終えた。市場は、トランプ氏が大規模な関税を発表してはすぐに延期するというパターンに慣れており、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「TACO(Trump Always Chickens Out=トランプ氏はいつも尻込みする)」という略語までつくった。

記者から「TACO」という造語への感想を求められたトランプ氏は28日、その質問は「意地悪だ」とし、「それは交渉と呼ばれるものだ」と関税の変更を擁護した。

米連邦巡回控訴裁判所は29日、トランプ大統領の広範な関税を復活させる判断を下した。23日撮影(2025年 ロイター/Nathan Howard)

50パーク・インベストメンツ(ニューヨーク)のアダム・サルハン最高経営責任者(CEO)は「トランプ氏はすでにこうした関税の大半を緩和しているので、裁判所の判決は単なるニュースの見出しに過ぎない」とし「個人的には、市場が暴落しない限り、このニュースは二次的な副産物に過ぎない」と述べた。

<不確実性は継続>

市場の反発を受けて、トランプ大統領は大半の輸入関税を90日間停止し、貿易相手国と二国間協定を締結する方針を示している。

ただ、英国と今月締結した協定以外に合意はまだ実現しておらず、関税を巡る国際貿易裁判所の判決や控訴手続きの不確実性から、日本などの国々が早期の合意に踏み切れなくなる可能性もあるとアナリストらは指摘する。

フォービス・マザーズ・インターナショナル・アドバイザーズのチーフエコノミスト、ジョージ・ラガリアス氏は「今後数日中に控訴審の判断が出ない場合、(貿易相手国の)主な利点は準備のための時間的余裕と、当面は15%を超えることができない関税の上限設定だ」と述べた。

オックスフォード・リサーチの推計によると、国際貿易裁判所の判決を受けて米国の実効関税率は全体で約6%に引き下げられるはずだったが、高裁の緊急停止措置により約15%にとどまることになる。トランプ氏就任前の実効関税率は2─3%だった。

A chart showing U.S. average effective tariff rates going back to 1790

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