TSMC熊本県拠点拡張の遅れ、交通渋滞悪化を指摘-魏哲家CEO
台湾積体電路製造(TSMC)の魏哲家最高経営責任者(CEO)は3日、同社の熊本県での拠点拡張にわずかな遅れが生じている原因として、悪化する交通渋滞を挙げた。日本政府が主導する半導体製造プロジェクトの幾つかの障害が浮き彫りとなった。
魏CEOはまた、今後5年間で米アリゾナ州で製造能力を拡大するため、TSMCが1000億ドル(約14兆3000億円)を追加投資する方針を重ねて表明した。トランプ米大統領と生産的な協議を行った点を強調する一方、熟練労働者の不足や必要最小限の工期を理由にこの大規模拡張を5年で完了するのは「非常に困難だ」とトランプ氏に伝えたことも明らかにした。
魏CEOは台湾の新竹市で開催された株主総会後に記者団に対し、トランプ氏とのやり取りは温かいものだったと説明。「彼は『ベストを尽くしてくれればそれで十分だ』と言っていた」と話した。
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これら二つのプロジェクトは、地政学的緊張の高まりと人工知能(AI)開発に不可欠な米エヌビディア製チップへの需要増加を背景に、TSMCが海外での生産を進める原動力を体現している。
TSMCは長年、主に本拠地である台湾で操業してきたが、日本政府からの数多くの支援と優遇措置を取り付けた後、日本に工場を建設した。その後、トランプ氏が大統領に就任して間もなく、同社は米国への投資を大幅に増やす計画を発表した。
TSMCが熊本県に第2工場を建設する計画は、日本が半導体分野での主導権を取り戻し、人口減少に直面する中で技術者を呼び込むという野心に重要な意味を持つ。しかし、第1工場稼働に伴う労働者の急増が地方のインフラに既に負担をかけているほか、同時に米国での計画が進むことで、日本での生産拡大の緊急性は相対的に低下しつつある。
林芳正官房長官は3日午後の記者会見で、魏CEOの発言についてコメントは控えるとしつつ、「世界経済の不確実性の高まりや国内インフラ、労働力の不足などは、民間企業の投資のちゅうちょにつながる」と指摘した。その上で、対内設備投資の加速化に向け、国際環境の変化を踏まえた投資促進や、海外から人材と投資を引き付ける環境の整備などが必要だとの認識を示した。
一方、TSMCがアラブ首長国連邦(UAE)に先進半導体の生産設備を建設する方向で検討しているとブルームバーグ・ニュースは先に報じた。しかし、魏CEOは同地域にチップ工場を建設する計画はないと述べた。
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原題:TSMC Blames Japan Delay on Traffic After ‘Warm’ Talks With Trump(抜粋)