GLP-1RAが化膿性汗腺炎の症状を包括的に改善
フランス・Rennes University HospitalのLouise Gouvrion氏らは、3カ月以上GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)を使用した患者を対象に、化膿性汗腺炎に対する有効性を検討する後ろ向き多施設コホート研究を実施。投与開始時と6カ月後を比較した結果、化膿性汗腺炎の疾患活動性(HS-PGA)をはじめとする評価項目がいずれも有意に改善したとJAMA Dermatol(2025年8月13日オンライン版)のResearch Letterに報告した。(関連記事「セクキヌマブで化膿性汗腺炎の疼痛が改善」「化膿性汗腺炎、CKD併存例で入院高リスク」)
GLP-1RAの体重減少作用と抗炎症作用に注目
化膿性汗腺炎は過体重や肥満と関連があり、患者の約半数に認められる。機能不全に陥った脂肪組織は抗炎症性のアディポネクチンを減少させる一方で、炎症性のアディポカインやサイトカインを過剰に産生し、化膿性汗腺炎の病態生理に寄与している。GLP-1RAは、強力な体重減少作用を発揮するとともに、抗炎症作用を有する可能性も指摘されている。そこでGouvrion氏らは、同薬の化膿性汗腺炎への有効性を検討した。
対象は、2017〜24年にGLP-1RAを3カ月以上使用した化膿性汗腺炎患者66例(女性58%、年齢中央値46歳、糖尿病合併例86%、BMI中央値39.4)。化膿性汗腺炎の重症度を表すHurleyステージはI期30例(45%、軽症)、Ⅱ期21例(32%、中等症)、Ⅲ期15例(23%、重症)。GLP-1RAの内訳はセマグルチド48例、デュラグルチド13例、リラグルチド5例であった。
主要評価項目は、開始時、6カ月後、中止または最終受診時におけるHS-PGAスコア、疼痛・排膿のNumerical Rating Scale(NRS)スコア、直近3カ月間の急性増悪(フレア)の頻度、皮膚科用QOL質問票(DLQI)スコア、BMIとした。
HS-PGA平均スコアは2.8から2.1に有意に改善
6カ月後のHS-PGA平均スコアは2.8から2.1に改善。疼痛NRSスコアは5.0から3.5、排膿NRSスコアは5.6から4.2に改善した。フレア頻度は4.8回から3.2回、DLQIスコアは16.2から11.8、BMIは39.9から37.2へと、いずれも有意に改善した(排膿NRSスコアのみP=0.001、その他はP<0.001)。また、Hurleyステージが1段階以上改善した割合は54%、2段階以上改善は12%であり、最終受診時にはそれぞれ62%、32%に増加した。
さらにGLP-1RA導入前の12カ月間に他の化膿性汗腺炎治療の変更が行われていなかった34例でも全評価項目で同様の有意な改善が認められ、効果がGLP-1RAの導入に関連する可能性が高いことが示唆された。
以上から、Gouvrion氏らは「GLP-1RAは化膿性汗腺炎管理において有益な可能性がある」と結論。効果の背景として①体重減少による摩擦や浸軟の軽減、慢性炎症の改善、②GLP-1RAの抗炎症作用や創傷治癒促進などの直接的効果―を挙げている。
(編集部・長谷部弥生)