福間香奈女流名人「感謝の気持ちで」ママでも防衛…西山朋佳女流三冠を迎え8日から女流名人戦

 将棋の岡田美術館杯第51期女流名人戦五番勝負が8日、大阪府高槻市の関西将棋会館で開幕する。福間香奈女流名人(33)=清麗、女流王座、女流王位、倉敷藤花=の元にたどり着いたのは、前期、女流名人位を福間に奪われ、奪還に燃える西山朋佳女流三冠(29)=白玲、女王、女流王将=。12月中旬に第1子となる長男を出産し、2月に3か月半ぶりに戦線に復帰した福間。時代を二分する両者に、近況や番勝負へ向けた抱負を聞いた。(田中 昌宏、瀬戸 花音)

福間香奈女流名人 ブランク不安も実戦で勘戻す

 ―挑戦者は西山女流三冠に決まりました。

 「つい最近まで編入試験を戦われていましたし、今一番乗りに乗っている印象を受けます。かたや私は産前産後で(休場)期間が3か月半あるなど、環境がガラッと変わった。不安はあるんですが、将棋を指しているときは純粋に楽しいと感じています」

 ―体調はどうでしょうか。

 「妊娠期間中は気をつけていても体調を崩すことが多かったんですが、産後は体のケアに努めないといけなくて。大丈夫だと思っていても貧血とか起きますし、なるべく体を大事にして過ごしています」

―現在は研究はどのようにしていますか。

 「時間を見つけて子供と一緒に寝て、子供の機嫌のいい時に簡単な詰将棋とかをしています。睡眠が取れないこともありますが、できるときにできることをしている感じ。実戦不足で勘が鈍っているところはあると思いますが、指していく中で徐々に戻していければ」

 ―女流棋士の仕事と子育ての両立で感じることは。

 「男の子ってやっぱり重いんですねえ…(笑)。一番は自分の母親にすごく感謝の気持ちが芽生えました。私にすごく愛情を注いでくれたので。そこを目指してやっていきたいなと思う反面、アスリートの方では、出産されて現役復帰されている方もいらっしゃる。勇気をもらえますし、自分もそういう形で頑張っていきたい」

 ―女流名人のタイトルは12連覇、陥落、そして前期の3期ぶり奪還と、代名詞でもあります。

 「自分にとって、なじみの一戦という印象。今期は出産を経て3月に延期していただいた。関係者の方にすごく感謝しているので、そういう気持ちを持って対局を迎えられたらと思います」

 ◆福間 香奈(ふくま・かな)1992年3月2日、島根県出雲市生まれ。33歳。森鶏二九段門下。6歳で将棋を始める。2004年に女流棋士に。08年の倉敷藤花戦で初タイトル。通算獲得数は女流史上最多59期。11年から奨励会に在籍して女性初の三段に。18年に年齢制限で退会。23年、奨励会元三段の福間健太さんと結婚。昨年11月17日から休場し、同12月中旬に第1子の男児を出産。今年2月13日に復帰。川又咲紀女流初段は妹。

西山朋佳女流三冠「未知数で新鮮」 棋士編入試験で得た胆力武器に

 ―前期奪われた女流名人位奪還を目指す戦いになります。

 「前期の女流名人戦番勝負は完敗の対局が多く、何とか1勝返せたような内容でした。ボロ負けだったような記憶もあります」

 ―好調、不調の波はあるタイプですか?

 「完全にお尻に火がついたら頑張れるタイプですが、前期は火がつく前に終わってしまったような感じでした。今年は変えようと頑張りたいなと思います」

 ―第52期の予選からは、奨励会を退会した中七海女流三段も参加。女流棋界にも新風が吹いています。

 「中さんには奨励会時代によく話しかけていて、よく笑ってくれた記憶があるんです。堅実な将棋で、完全なるオールラウンダー。好きな将棋で、ワクワクして見ています。いつか対局で当たりますし、すごく注目していただけると思うので、怖い半分、楽しみ半分です」

 ―普段、高頻度で戦っている福間女流名人とは産休の関係で対局がない期間がありました。

 「こんなに福間さんの最近の棋譜が少ない状態で番勝負を戦うのは初めてなので結構、未知数で新鮮でした。休みの間に戦形選択も変わっている可能性もありますし。女流名人戦が開幕する前の女流王座戦で、感覚をつかめればと思います」

 ―昨年9月から今年1月まで挑んだ棋士編入試験も経て、今年も女流名人戦番勝負に挑む抱負をお願いします。

 「今回こそは前期のような一方的な将棋をなくしたいです。自分自身、棋士編入試験のあれこれで胆力はついたかなと思うので、それが福間戦でもしっかり出せればいいなと思っています」

 ◆西山 朋佳(にしやま・ともか)1995年6月27日、大阪狭山市生まれ。29歳。伊藤博文七段門下。5歳で将棋を始める。2010年、関西奨励会入会。14年1月に初段、同9月に二段、15年12月に三段昇段。18年、マイナビ女子オープンで初タイトルの女王を獲得。21年4月に女流棋士に転向。23年、初の女流名人を獲得。24年9月から25年1月まで棋士編入試験を受験した。実家で鳥を多く飼っていたことから鳥類が好き。

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