レッドブルF1解雇クリスチャン・ホーナーはどこへ行く? 他陣営のチーム代表やご意見番……今後を考察
7月9日(水)、レッドブル・レーシングは創設期からチームを指揮してきた代表兼CEOのクリスチャン・ホーナーを解任することを発表。ホーナーのF1での今後は不透明だ。 【動画】ハースF1小松礼雄代表、2024マシンVF-24をドライブ|グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード 少なくともホーナーの母国イギリスでは、7月は1年のうちで“土いじり”には絶好の季節。レッドブルを無念の形で去った今、庭の手入れで気を紛らわす時間を持つべきだ。それくらいしかすることがないガーデニング休暇はたっぷりある。 とはいえホーナーは成功に飢えている男だ。モータースポーツの最高峰で20年間、彼が残した記録を勝利なしで語ることはできない。 では、じょうろを置いて熊手を納屋に戻し、プロの園芸師に庭を任せることができるとなったら、ホーナーは一体何をするのだろうか? レッドブルを後にしたホーナーに残された選択肢のいくつかを紹介する。 ■跳ね馬を駆る レッドブルを去る前から、ホーナーがフェラーリ復活を担う次期チーム代表候補に挙がっているとの憶測が流れていた。 現職のフレデリック・バスール代表に残された時間は少ないと言われており、イタリア・マラネロのフェラーリ内部には、ホーナーのような長年の経験とノウハウを持つ明確な後任はいない。 ホーナーは以前、フェラーリ会長ジョン・エルカンの誘いを断ったことがある。ただ、それはホーナーがレッドブルをクビになる前のことだ。 フェラーリ代表のオファーは、ホーナーのエゴに訴えかける提案のはずだ。フェラーリをチャンピオンに押し戻すのと同時にレッドブルの前に跳ね馬を押し上げることは魅力的な選択肢だろう。 2年前なら、ホーナーとルイス・ハミルトンによるフェラーリ再建など考えられていなかっただろうが、今となっては可能性を帯びている。 ■滑落続出の“アルプス”に登る アルピーヌはスティーブ・ニールセンをマネージング・ディレクターに任命したばかりだが、ここ数年のうちに何人が代表職を追われてきたかを考えると、9月1日の就任を前に用済みとなってしまうかもしれない。 現在のアルピーヌでは、フラビオ・ブリアトーレがエグゼクティブ・アドバイザーとしてチームを監督している。そのため、ニールセンは基本的にチーム代表のような役割だが、通常はブリアトーレが指揮を執るという但し書きが付いている。 こうした権力構造を持つチームにホーナーが乗り込むというシナリオは少し想像がつかないが、ホーナーのような経歴を持つ人物を迎え入れようとするのであれば、苦境に立たされるアルピーヌの野心のあらわれだろう。 アルピーヌの拠点があるイギリス・エンストンもまた、ホーナーの自宅から目と鼻の先。ほぼゼロから勝てるプロジェクトを立ち上げられると思えば、袖を捲り上げるかもしれない。 ■サイドチェンジで切り返す ホーナーは逆サイドに行くことはできるだろうか? FIAやF1自体には、彼がすんなりと溶け込める役割がたくさんある。 たとえレッドブル代表から解放されていたとしても、FIA会長選挙に出馬するだけの支持は得られなかったかもしれない。しかし元チーム代表がFIAで働いた前例は他にも沢山ある。 ジャン・トッド、ロス・ブラウン、そして現在F1のCEOを務めるステファノ・ドメニカリは皆、ピットウォールからの移籍組だ。ホーナーは悪名高い“ピラニアクラブ”ことF1パドックにいるチームやビジネスについて十分な知識を持ち、権力の中枢で役立つ人物になるだろう。 ■辛口評価には慣れている? ホーナーはレッドブルで20年間を過ごし、チームの406戦を監督。6つのコンストラクターズタイトルと8つのドライバーズタイトルの獲得に貢献した。 そしてホーナーはSky Sportsと強いつながりを持っている。予選前、予選後、レース前、レース中、レース後……自身とチームが伝えたいメッセージを発信する価値を知っていた。 フルタイムでテレビ中継の世界にホーナーは足を踏み入れることができるだろうか? Skyはここ数年でF1中継のスタッフを刷新しており、トップチームの内部事情に精通しているホーナーのような人物を迎えることは、まさに大成功だと言えるだろう。 Netflixのドキュメンタリー『Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』や2021年シーズン最終戦アブダビGPのタイトル争いのおかげで、ホーナーは悪役として見られがちだ。とはいえホーナーの意見にただ文句を言うために、多くの人々が耳を傾ける。現代社会では、どんな形であれエンゲージメント率向上は良いと評価される……。
Mark Mann-Bryans