しゃがむな、キケン。雷から身を守るには安全な場所に移動せよ
子どものときに「へそを隠せ」と言われて立ったまま手でカバーしたら、「そうじゃない」とツッコまれた理不尽な記憶がフラッシュバック。
かつては屋外で雷雨に遭ったら、身を守るためにしゃがんで姿勢を低くするよう勧められていました。でも実際のところは、しゃがんでも安全性を高める効果がないことがわかっているんですよね。
SNSやネット上で落雷の安全対策について誤った情報が広まっているとして、全米落雷安全協議会(National Lightning Safety Council: NLSC)は教育関係や気象キャスターに対し、「しゃがめ」というアドバイスをやめるよう呼びかけています。
雷が鳴ったら「安全な場所になる速で移動」が正解
NLSCに所属する雷の専門家John Jensenius氏は声明で次のように説明しています。
外にいるときに雷雨に遭ったら、できる限り速やかに安全な場所に移動するのが最善の行動です。安全な場所に早くたどり着くほど、リスクは低くなります。しゃがむのは、雷に打たれるリスクを長引かせるだけです。
「雷が鳴ったらしゃがめば安全」という迷信は、20年近く前に否定されているといいます。な
のに、2008年にNLSCとアメリカ国立気象局(NWS)が正式にしゃがむのを推奨しなくなったあとも、アメリカハイキング協会やテキサス州ベルミードなどは、雷の安全対策ガイドラインに「しゃがめばいい」と記載しているのだとか。
日本でも、「雷座り(雷しゃがみ)」など、姿勢を低くして雷のリスクを避ける方法を紹介しているケースが見られます。
「しゃがめば安全」が招くリスク
アメリカ国立気象局は、公式サイトで次のように呼びかけています。
しゃがんでも安全対策には不十分です。立っていてもしゃがんでいても、落雷の経路が真上から(またはほぼ真上から)近づいてくると、雷に打たれて死傷する可能性が非常に高いのです。
この声明ではさらに、しゃがめば大丈夫と信じてしまう人は、油断してギリギリまで避難しない可能性があるので危険と警告しています。
雷から身を守るうえで大事なのは、まずそもそも危険な状況に身を置かないこと、そして危険な状況から抜け出す方法を知っておくことだそう。
NLSCの気象学者であるChris Vagasky氏は、危険を避けるための例として、「雷雨が予測されている場合は、行事の中止または延期を検討するよう人々に呼びかけることがより効果的です」と先ほどの声明のなかで述べています。
完璧な対策はなくても、万事を尽くす価値はある
とはいえ、外で雷に遭遇したときに「こうすれば絶対に安全」といえる選択肢はないとアメリカ国立気象局も述べています。
それでも、周りに何もない場所やいちばん高い建造物、高い木やポツンと1本だけ立っている木に近づくのは避けたほうがよく、森や林のなかにいる場合はできるだけ木から離れて立つべきとのことです。
また、グループで行動している際には、雷が落ちたときに死傷する人数を最小限に抑えるために、分散したほうがいいそうです。
なお、NLSCは、2024年に全米で落雷によって12人が亡くなっており、それぞれ別の場所で雷に打たれたと報告しています。
Jensenius氏は、声明を次のように締めくくっています。
雷対策をしっかり実践するのは少し面倒かもしれませんが、最終的にその小さな手間があなたの命を守るかもしれないのです。
雷に限らず、さまざまな事案に対する安全対策でも同じことが言えそうですね。