回折スパイクが引き立てる美しさ ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した渦巻銀河「NGC 2283」
こちらは「おおいぬ座(大犬座)」の方向約4500万光年先の渦巻銀河「NGC 2283」です。その姿は闇夜に渦巻く炎を思わせますが、人の目でもこのように見えるわけではありません。
【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)で観測された渦巻銀河「NGC 2283」(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, A. Leroy)】星形成活動の理解を深める取り組みの一環としてウェッブ宇宙望遠鏡が観測
この画像は「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope: JWST)」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」と「中間赤外線観測装置(MIRI)」で取得したデータを使って作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡は赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています。
ESA=ヨーロッパ宇宙機関(欧州宇宙機関)によると、ウェッブ宇宙望遠鏡は星の集団や加熱された水素ガスなどから放射された赤外線を捉えています。研究者にとって特に興味深いのは温かな星間塵の分布に対応する多環芳香族炭化水素(ベンゼン環を2つ以上持つ化合物の総称、PAH)からの赤外線で、この画像ではオレンジ色や赤色で着色されています。
ウェッブ宇宙望遠鏡によるNGC 2283の観測は、天の川銀河の近くにある巨大で星形成活動が活発な銀河を調査する取り組みの一環として実施されました。対象となった銀河はウェッブ宇宙望遠鏡の観測機器で星形成活動を包括的に捉える上で、地球からの距離・規模・活動レベルが最適であり、観測データは今後何年にもわたって研究に役立てられるということです。
星形成が活発な銀河では、太陽と比べて8倍以上重い大質量星が起こすタイプの「II型超新星」が観測されることがあります。NGC 2283では2023年1月にII型超新星「SN 2023axu」が検出されました。II型超新星は進化した大質量星内部の核融合反応によって鉄のコア(中心核)が生成されるようになった頃、核融合のエネルギーで自重を支えることができなくなったコアが崩壊し、その反動によって恒星の外層が吹き飛ぶことで爆発に至る現象だと考えられています。爆発で放出された元素は周辺に放出され、次の世代の星々へ引き継がれていくことになります。
ちなみに、幾つかの星から伸びた針状の光は望遠鏡の構造によって生じる回折スパイク(diffraction spike)と呼ばれるもので、スパイクが現れているのは天の川銀河にある星々です。まるでNGC 2283を飾り立てるかのような美しさを感じませんか?
冒頭の画像は“ウェッブ宇宙望遠鏡の今月の画像”として、ESAから2025年2月28日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- ESA/Webb - Webb visits a star-forming spiral