車の廃バッテリー液とプラごみから水素燃料をつくるレシピ

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こういうゴミからお宝系の話は大好物です。

奇妙な化学反応は、もっとも処理が困難な廃棄物をまったく予想外のものに変身させてしまうことがあります。たとえば、ある実験ではPFASを利用してバッテリーグレードのリチウムを精製したそうです。

そして今回、研究者たちは自動車のバッテリーの使用済み酸を利用して、クリーンな水素燃料をつくるレシピを見つけたみたいです。

廃バッテリー液と廃プラから水素燃料をつくる

科学誌Jouleに掲載された研究論文(オープンアクセスなので誰でも読めます)において、ケンブリッジ大学(イギリス)の研究チームは、自動車用バッテリーの廃酸(廃バッテリー液)を利用して、プラスチックをリサイクルする新たな手法を解説しています。

実験室のテストでは、性能を落とさずに反応器が260時間以上稼働できることが確認されたそう。研究チームは、この手法が複数の種類のプラスチック廃棄物に適用できると見込んでいます。

論文の上席執筆者であり、化学エンジニアでもあるErwin Reisner氏は、声明で次のように述べています。

以前は、酸はあらゆるものを溶かしてしまうため、こうした太陽光駆動システムでは絶対に使用できないと考えていました。しかし、私たちが開発した触媒はそうはならず、突然まったく新しい反応の世界が開けたのです。

一石二鳥のレシピ

世界経済フォーラムによると、世界では毎年約4億トンのプラスチックが生産されているといいます。

欧州環境機構は、これまでに生産されたプラスチックのうち、リサイクルされているのはたった9%に過ぎず、約12%が焼却処分され、残りは埋め立て地にとどまるか、自然環境に放出されていると報告しています。何十年もリサイクル、リサイクルって言いながら9%しかリサイクルできていないのは、もうプラのリサイクルは無理ってことなんじゃ…?

一方、自動車用バッテリーは、体積比で約20%~40%を酸が占めています。しかし、この酸は腐食性が非常に高いため、バッテリーから鉛を抽出して再販したあと、そのまま廃棄・中和処理されるのが一般的とのこと。

化学反応の抜け道を見つけた

同時に、酸はその腐食性ゆえに、プラスチックを分解するのにかなり役立つことを研究チームは知っていました。ただ、論文の主執筆者で博士課程の学生であるKay Kwarteng氏によると、「酸に耐えられて、安価で実用化できる光触媒はこれまで存在しなかった」そうです。

Image: University of Cambridge反応器の前に立つErwin Reisner氏(左)とKay Kwarteng氏(右)

そこで、今回の新たな研究では、酸の破壊的な影響に耐えられる光触媒(光を当てると反応を加速させる物質)の開発を目指しました。試行錯誤の末に、研究チームはこっちの廃棄物問題とあっちの廃棄物問題を解決する閉鎖した「循環システム」を構築する手法にたどり着きます。

Kwarteng氏は声明でこう説明します。

酸は「手つかずの資源」です。中和される前に酸を回収できれば、プラスチックを分解するために繰り返し使用できます。酸の中和に伴う環境負荷を回避しつつ、クリーンな水素の生成に活用できるため、まさにWin-Winの関係です。

酸と光のコラボで水素発生

研究チームの太陽光を用いた酸の光改質反応による新手法(solar-powered acid photoreforming)は、次のように機能します。

まず、反応器が廃プラスチックを酸で処理します。すると、廃プラスチックはエチレングリコール(不凍液やプリンターのインクの製造に使用される物質)などのより扱いやすい物質に分解されます。そこに太陽の光(実験では太陽光を模した光を使用)が当たると、光触媒がこの混合物をさらに水素と酢酸(酢の主成分)に変換します。

その後、チームは光触媒と反応器全体の効率を検証しました。論文によると、触媒は11日間、約264時間にわたって、著しい性能の低下をみせずに活性を維持したといいます。

プラごみ問題解決の一助に

とはいえ、この手法が商業化されるにはまだまだ時間がかかりそうとのこと。

研究チームは、この手法の基礎となる化学反応には自信を見せながらも、反応器が時間の経過とともに劣化してしまわないこと(少なくとも急速に劣化しないこと)を確実にするには、さらなる実験が必要と認めています。

また、この手法は従来のリサイクルに取って代わるものではなく、補完するものとし、Reisner氏は次のように付け加えています。

私たちは、世界的なプラスチック問題を解決すると約束しているわけではありません。しかし、この研究は廃棄物がいかに資源となり得るかを示しています。太陽光と廃棄されたバッテリーの酸を用いてプラスチック廃棄物から価値を生み出せるという事実が、このプロセスを実に有望なものにしているのです。

論文を読むと、商業規模の水素製造施設と比較して気が遠くなるくらい少量の水素しか生成できない段階ですけど、既存の化石燃料由来(グレー水素)や、水を大量に使用する(グリーン水素)必要がない、ゴミとゴミからつくる「クリーンな水素」に期待したいです。

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