身に覚えない出金 「親切だった」あの人に狙われた老後資金
トヨさん(仮名)の通帳からは50万円や30万円など身に覚えのない出金が繰り返されていた=大阪府内で2025年5月19日午後6時44分、斉藤朋恵撮影(画像の一部を加工しています)
15万、30万、50万……。
預金口座から身に覚えのない出金が繰り返されていた。
老後や孫たちのために、大切にためてきたのに。資金を盗んだとして警察に逮捕されたのは、親身になってくれていた「あの人」だった。
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大阪府内に住むトヨさん(81)=仮名=は夫と死別した3年前、認知症の症状が進んだ。
部分的に介助が必要な要介護2と診断され、デイサービスに通い始めた。
2人の娘は別の場所に住んでいる。1人暮らしのトヨさんにとって、週2回の施設通いは日ごろのさみしさを紛らわし、同世代の知人らと語らう憩いの時間になった。
楽しみは施設の中だけではない。自宅から施設への約10分の送迎中も、同乗する友人らと会話に花が咲いた。いつも送り迎えをしてくれる運転手の男性(69)も親切だった。
近くに住む孫の祐子さん(39)=同=はそんな祖母の様子にほっとしていた。
認知症と診断された後、マルチ商法のようなものに誘われ、高額なマッサージ機を購入しそうになったことがあった。症状が進んだのではと心配したが、身の回りのことは自分でこなせていた。
なにより、デイサービスに通い始めて表情が明るくなった。「このままなら大丈夫だろう」。この心の余裕がのちにあだとなった。
送迎運転手、突然の懇願
「お金を貸してもらえないか……」
運転手の男性がトヨさんに懇願してきたのは昨年秋ごろだった。
祐子さん…