変わるTOPIX、「大型株の相対的上昇で構成銘柄は1,000前後に」「除外銘柄は中長期で売り圧力も」 ニッセイ基礎研究所、森下氏インタビュー
トウシル編集部(以下、トウシル):2026年10月にTOPIXの見直しが予定されています。現状の1,700銘柄弱から採用銘柄数が減少する見込みですが、最新の試算ではどのような銘柄数となるのでしょうか。
ニッセイ基礎研究所 森下千鶴・研究員(以下、森下):2026年6月末時点の試算によると、継続採用が924銘柄、スタンダード市場やグロース市場からの新規採用が34銘柄、これまでの構成銘柄で次期TOPIXからは外れる「除外」候補が713銘柄になります。そのため次期TOPIXの構成銘柄は958となり、1,000銘柄より少なくなる想定です。
当初、新しいTOPIXの枠組みが公表となった時点ではおよそ1,100~1,200銘柄との試算となっていたので、当初想定よりも少なくなる可能性が高くなっています。相場の上下により最終的な銘柄数は変わりますが、1,000銘柄前後になるとみられます。
出所:ニッセイ基礎研究所、QUICK、JPXデータから作成
次期TOPIXは銘柄数を固定せず、二つの基準で採用銘柄が決まります。一つは上場株式の時価総額の何割が実際に売買されたかという「年間売買代金回転率」、二つ目は市場で流通する株式で計算した「浮動株時価総額の累積比率」です。
二つ目の基準は難しい言葉ですが、市場で流通する株式の時価総額を上位から累積して区切る形です。追加基準は上位96%以内、継続基準は上位97%以内です。つまり市場で流通する株式の時価総額が低い銘柄がTOPIXに採用されない、現状採用されている銘柄は「除外」になります。
トウシル:なぜ、想定以上に銘柄数が減少する見込みなのでしょうか。
森下:日本株全体の上昇、特に時価総額が大きい大型株に資金が集中しているためです。
例えば、TOPIXの上位10銘柄の浮動株時価総額が全体に占める比率は24年8月末時点では20.5%でしたが、2026年6月末時点では22.8%まで上昇しました。上位50銘柄など相対的に時価総額が大きい銘柄の割合が全体として増えています。上位で累積して採用銘柄を区切るため、大型株の割合が増えると規模の小さい銘柄があぶりだされる形になってしまいます。
出所:ニッセイ基礎研究所、QUICK、JPXデータから作成
「浮動株時価総額」は通常の時価総額に浮動株比率を掛け合わせたものです。現在TOPIXに採用されていない銘柄が新たに採用になる基準は浮動株時価総額で590億円程度、現在の構成銘柄で除外となるボーダーラインは同基準で400億円程度です。浮動株は個々に違うため、採用基準は通常の時価総額で700~1,200億円程度という幅になります。
「採用」銘柄には買いが入りやすく、「除外」銘柄はすでに下落も持続的な売り圧力
トウシル:新たに「採用」となる銘柄、「除外」となる銘柄にはどのような株価への影響があると考えていますか。
森下:新たに「採用」となる期待の銘柄の直近までの動きは、TOPIX全体とほぼ変わりません。10月には新たに指数への組み入れとなるとTOPIXには巨額な連動資産がありますので、買いが入りやすくなるとみています。
一方、「除外」候補となる銘柄群はすでに平均的にTOPIXを下回る株価推移となっています。アクティブ投資をする機関投資家などが、TOPIXから外れる銘柄に先行して売りを出しているとみられます。
仮にTOPIXから除外となると、2026年10月から四半期ごとに段階的にウエートが低減されていきます。TOPIXの連動資産から段階的に抜けていく形になるため、継続的な売り圧力にさらされる可能性が高くなってしまうとみています。
「除外」候補は先行して株価が下がっているため買い戻しが入る可能性もありますが、そもそも規模が小さく日々の売買も少ない銘柄群となるため、指数連動の資産が抜けていく中で売り圧力は当面継続するとみられます。
出所:日本取引所グループ「TOPIX等の見直しの概要」から抜粋
今回のTOPIXの見直しでは移行措置として2027年10月に再評価という救済措置が設けられています。初回の選定で「除外」となっても1年後に改めて基準を満たせばウエート低減を停止するというものです。
ただし、段階的ウエート低減で1年をかけて従来の半分のウエートとなってしまうため、いったん除外となった銘柄にとって再度基準を満たすのはかなりの難易度の高さとなります。
TOPIXの変身で規律ある市場形成へ、企業にはプレッシャー継続
トウシル:TOPIXの見直しへの全体的な評価と、長期目線ではどのような影響があると考えていますか。
森下:規律ある市場形成につながると期待しています。市場再編前のTOPIXは東証1部の銘柄となっていました。つまり東証1部にさえ上場していれば連動資産からの資金流入という恩恵が受けられた面があり、企業の緊張感が薄い状況でした。
今回の見直しは企業に「TOPIXに残るため(連動資産からの資金流入を受けるため)には何かしなくてはいけない」という動機付けにつながると考えています。アメとムチのように企業や経営者には緊張感を高める施策となるはずです。TOPIX残留・採用となれば企業価値そのものが上がり、レピュテーションも上がるとみています。
定期入れ替えとなるため、企業にはプレッシャーが継続します。TOPIXに採用されている銘柄であれば引き続き残留を続けるための動き、非採用銘柄であれば新たに採用されるための能動的な動きが期待できるとみています。結果として企業経営の方向も見えやすくなるという副次的効果を生む可能性があるとみています。
加えていったんTOPIXから除外となった銘柄の一角には上場コストも鑑み、経営陣による買収(MBO)などで市場からの退出を自ら選ぶ企業も出てくるでしょう。除外銘柄には、物言う株主といわれるアクティビストに目を付けられる企業も出てくる可能性があります。
特に中小型の企業にとっては、個人投資家の関心と応援をどれだけつかめるかが一つのカギとなります。経営者の姿勢、TOPIXの定期入れ替えに向けて企業がどのような能動的な行動をするかなど、丹念に見ていく必要が高まっていくはずです。TOPIXという日本を代表する指数の変身が投資家、企業の双方にとって前向きな変化になると期待しています。
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