天王星の衛星「アリエル」の地下に海が広がっている可能性 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が新発見

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アリエルが天王星を通過する様子 出典:NASA

太陽系の果てに、生命を育む環境が潜んでいるかもしれません。アメリカの研究チームが発表した、天王星の衛星「アリエル」に地下海が存在する可能性を示す、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測結果を紹介していきます。

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天王星の主要衛星のひとつ「アリエル」

天王星を公転している特に大きい5個の衛星の相対的な大きさを示した画像。左から順にミランダ、アリエル、ウンブリエル、チタニア、オベロン 出典:CactiStaccingCrane

アリエルは、天王星を回る27の衛星のうちの一つで、半径は約579km。天王星の五大衛星(アリエル、ウンブリエル、チタニア、オベロン、ミランダ)の中でも、特に地質学的な特徴が豊かで注目されています。

今回の研究は、JWSTによる「Moons of Uranus(天王星の衛星群)」観測プロジェクトの一環で、アリエルを含む4つの衛星を21時間かけて観測。その結果、二酸化炭素(CO₂)や一酸化炭素(CO)、炭酸塩などの物質がアリエルの表面に存在することが判明しました。

地表のCO₂とCOは「地下海」由来の可能性

天王星の大型衛星の内部構造 出典:NASA

天王星の軌道領域では、CO₂のような揮発性物質は太陽からの距離によりすぐに昇華してしまい、表面に長く留まることができません。にもかかわらず、アリエルの後半球(常に公転方向の逆を向く側)には、厚さ10ミリ以上にわたってCO₂の氷が濃く堆積していることが確認されています。

この不思議な現象の説明として、研究チームはアリエルの内部に液体の海が存在し、そこからCO₂やCOが放出されている可能性を示唆しています。氷の割れ目やプルーム(水柱)のような現象を通じて、内部の成分が表面に達しているというのです。

さらに、アリエルの表面には、液体と岩石が互いに作用することによってしか生成されないとされる「炭酸塩鉱物」の痕跡も見つかりました。これは、アリエルの内部で化学反応が活発に起きている証拠とされ、地下に液体の海があることを強く示唆しています。

観測では、一酸化炭素(CO)も後半球に明確に確認されました。COは極めて低温でしか安定しない分子で、アリエルの平均表面温度(約65K=-208度)では存在しにくいとされます。そのため、研究チームは、COが衛星の内部から供給されており、さらに放射線によるCO₂の分解や氷の昇華によって継続的に補充されている可能性があるとしています。

今後に向けて:探査機の派遣を

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、アリエルが天王星を通過する様子 出典:NASA

液体の水、内部熱源、化学反応がそろった環境は、生命が誕生する条件の一つとされており、今回の発見によりアリエルもその候補に加わる可能性が出てきました。NASAでは現在、天王星系を探査するミッション「Uranus Orbiter and Probe(UOP)」の技術検討が進められています。打ち上げは2030年代初頭が候補とされ、到着には約12〜13年が見込まれています。天王星に向かうための軌道には最適なタイミングが存在するため、早期の意思決定と準備が必要です。アリエルをはじめとする天王星の衛星群は、これからの惑星科学のフロンティアとなるかもしれません。

極寒の天王星圏であっても、地中には熱と水と化学反応が生きているかもしれない。その謎を解き明かす日が、少しずつ近づいているのかもしれません。その名の通り、リトル・マーメイドのような世界がそこにあるのかと期待が膨らみますが、みなさんはアリエルの地下にどのような光景が広がっていると思いますか?是非コメントお待ちしています。

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