仏首相、予算案を採決なしで強行通過-不信任決議のリスク高まる
フランスのバイル首相は3日の国民議会(下院)で、憲法の特例条項を使って2025年予算案の採択を強行した。野党から不信任動議が出される恐れがある。
極左の「不屈のフランス」は、すでに不信任案を提出すると表明した。社会党幹部はこの動議を支持しないと述べており、同党党員が従えば、内閣は崩壊を免れる可能性が高い。
マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いる極右・国民連合(RN)は、不信任案が出た場合の対応を明らかにしていない。同党広報は、5日午後に計画を発表するとしている。
フランス下院は、マクロン大統領が2024年夏に臨時総選挙を行った結果、いずれも過半数議席に届かない3つの勢力に分裂。以来、混乱が続いている。RNは単独政党として下院で最大の議席数を握り、ルペン氏がこれまでにない影響力を持つようになった。
バイル氏は下院に対し、「決定権を握るあなた方が決断すれば、フランスは10日以内に予算を成立させ、最も懸念している人々、つまり仏国民に、安定と責任のシグナルを送れる」と述べ、内閣を打倒せず、予算案を受け入れるよう訴えた。
Political groups in the National Assembly
Source: French National Assembly
一般的なリスク指標であるフランス債とドイツ債の10年物利回り差(スプレッド)は3日、73ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、約2bp縮小した。
バルニエ前内閣が昨年12月、予算案を巡る不信任案可決を受け崩壊した際には、独仏スプレッドは90bpを超えた。RNが社会党や不屈のフランスを含む左派連合に協力して不信任案を支持したためだ。
バイル氏の財政再建計画はそこまで野心的ではなく、十分な支持を得られるとの期待から、投資家はすでに1月にフランス債を購入していた。
バイル氏の予算案の強行通過も同様に、不信任案の引き金になり得る。一方、内閣の崩壊を免れれば、バイル氏は分裂状態の議会でも主導権を維持し、他の法案をも通せる力量を示すことになる。
フランスは現在、年間予算が成立しておらず、国家機能の停止を避けるための緊急立法に頼っている。バイル氏はバルニエ氏よりも財政緊縮の度合いを緩め、政府財政赤字を対国内総生産(GDP)比5.4%に抑えるため、500億ユーロの支出削減を計画している。バルニエ氏は、600億ユーロの増税と支出削減を目指していた。
バイル氏は週内にも、25年度予算の社会保障関連部分通過のため、特別条項である憲法第49条3項を再び発動する見通しだ。
原題:{French Premier Forces Through Budget, Risking Censure Vote (1) (原題)