土曜・日曜のみの「週末だけ運動」で糖尿病リスクを減らせる 忙しくて運動をする時間がない人も大丈夫
ウォーキングなどの運動やスポーツを、週末の1~2日にまとめて行う「週末戦士」は、適度な量の運動を行っていると、健康状態の改善や死亡リスクの低下などのベネフィットを得られるという研究成果を、米国心臓学会(AHA)が発表した。
「健康を改善し維持するために、運動を行う必要があることを理解していても、仕事や家事、育児、介護などで毎日が忙しく、運動をする時間をなかなかみつけられないという人は多くいます」と、中国の南方医科大学公衆衛生大学院のジー-ハオ リー氏は言う。
「運動を毎日行うのが理想的ですが、それが無理という場合には、週に1日か2日に集中して行えば、活動量が十分であれば、糖尿病や肥満のリスクが低下し、心血管疾患やがんなどで死亡するリスクを大幅に減らせることが示されました」としている。
「週末運動」により糖尿病リスクが減り健康状態が改善
研究グループは、英国の大規模な調査研究であるUKバイオバンクに参加した、37~73歳の男女9万3,409人の2013~2015年のデータを解析した。参加者に、活動量計を7日間身に着けてもらい運動や身体活動を記録し、8年間追跡して調査した。
その結果、運動を週に2日のみ行っている人は、まったく運動を行わない人に比べて、2型糖尿病や肥満のリスクが低く、あらゆる原因による死亡リスクは32%低く、心血管疾患による死亡リスクは31%低く、がんによる死亡リスクは21%低いことが分かった。
なお、活動量計による測定では、週末にのみ運動をしている参加者は全体の42%以上で、平日も運動をしているという人は24%、運動をしていない運動不足の人は34%に上った。
運動や身体活動の内容は、ウォーキング、ジョギング、エアロバイク、家事、ガーデニング、ダンス、エクササイズマシンによる運動、さまざまな運動を行うクロストレーニングなどさまざまだった。
8年間の追跡調査中に、あらゆる原因で亡くなった人は3,965人、心血管疾患により亡くなった人は667人、がんにより亡くなった人は1,780人だった。
週末だけなら運動の時間をつくるのが難しい人も取り組める
「週末などにまとめて運動を行っている人は、身体活動を行うことは"週末戦士"とも呼ばれています。週の1~2日だけ、あるいは週末に集中して、ウォーキングや筋トレなどの中強度から高強度の運動を行い、体を活発に動かすことに取り組むだけで、効果を期待できることが示されました」と、同病院心臓・不整脈センターのシャーン クルシード氏は言う。
「ただし、運動の効果がみられたのは、中強度から高強度の運動を週に計150分以上行っている、運動ガイドラインで推奨されている運動量を満たしている人でした」。
「運動に毎日時間を割くのが難しいという人も、多くは週末などの数日間に集中的に運動に取り組むのは可能ではないでしょうか。そうした人々に対して、今回の研究で得られたメッセージは心強いものになります」と、米国心臓学会のキース ディアス氏は言う。
短時間の集中的な運動は負担がかかる ウォーミングアップなども忘れずに
だたし、注意しなければならないこともある。ひとつは、1~2日で150分程度の運動を短時間に集中的に行うと、体にかなりの負担がかかる場合があることだ。
「糖尿病や肥満症などの慢性疾患のある人や高齢者などは、運動を開始する前に、医学的な検査を受け、どのような運動が適しているのか、運動の負荷や強度、時間や頻度はどのくらいが適切かなどを事前に確認しておく必要がある場合があります」と、ディアス氏はアドバイス。
週末にのみ運動する人は、平日も運動している人に比べて、筋骨格系のケガのリスクがわずかに高いという報告もあるという。
「しかし、ほとんどの人は注意をしながら運動を取り組めば、安全に行うことができ、それにより得られるメリットは、潜在的なリスクをはるかに上回ります」と、ディアス氏は強調している。
週末のみ運動を行うという人は、はじめる前のウォーミングアップや、運動の後のクールダウンも十分な行い、運動量をいきなり増やさないで、時間をかけて徐々に増やしていくようにするとケガのリスクを減らすことができるとしている。
Being physically active, even just a couple of days a week, may be key to better health (米国心臓学会 2025年4月2日) Association of Accelerometer‐Derived Physical Activity Pattern With the Risks of All‐Cause, Cardiovascular Disease, and Cancer Death (Journal of the American Heart Association 2025年4月2日)