国勢調査の詐欺は終わったと思っていませんか?違います。国勢調査をかたる偽メールはこれからが本番です(多田文明)
国勢調査票の郵送と調査員への提出は、10月8日に終了しました。もしかすると、これで国勢調査をかたる詐欺は終わったと思っている方もいるかもしれません。そうではありません。確かに、調査員をかたって訪問するなどのケースはほぼなくなると思いますが、偽メールにおいてはこれからが本番です。
偽メールと気づかずに、60代男性のアクセスした事例も
先日、60代男性から「国勢関連調査のメールにアクセスして、電話番号と認証コードを入れてしまいました!」という連絡がありました。
もしかすると、これが偽メールだと気づかずに、だまされて個人情報を入力している人もいるかもしれません。というのも、国勢調査にインターネットで答えた人が多いために、その種のメールがくると覚えがあるために、つい対応してしまうからです。
「【重要】国勢調査2025 再確認手続きのお願い」の偽メールが届く
筆者のところにも、13日に「【重要】国勢調査2025 再確認手続きのお願い」が届いています。
本文は「2025年実施予定の国勢調査(全国統一人口・世帯調査)に関連し、以下の対象者に対して登録情報の再確認手続きが必要となっております。ご対応いただけない場合、統計法第61条に基づく行政措置が講じられる場合がございます」とあります。
ここで注目すべきは「再確認」の言葉です。
「ネットでの回答をしたものの不備があったのだろうか」
そう思う気持ちにつけ入ってきます。しかも61条は、報告義務違反の罰則を規定したもので、虚偽回答した者などに対して「50万円以下の罰金に処する」となっています。真摯に対応しないことへの恐怖心をあおった上で、手続期限も24時間以内の10月13日になっているという手の込みようです。
この先はどうなっている?「再確認を今すぐ行う」をクリックする
この先を調べるために「再確認を今すぐ行う」をクリックしてみました。すると「あなたが人間であることを確認してください」という画面に飛びました。チェックを入れてアクセスしてみます。しかし、国勢調査の公式のHPに飛ばされます。どうやら、パソコンからでは偽サイトにアクセスできないようです。
次に、スマホからリンク先にアクセスしてみました。今度は「国勢調査オンライン」という画面が出てきました。
「国勢調査は、人口・世帯の実態を明らかにする国のもっとも重要な統計調査です」とあり、自分たちのところが偽サイトと思わせないためでしょう。お知らせには「国勢調査をよそおった詐欺や不審な調査にご注意ください」とあります。
アクセスした偽サイト・筆者撮影「回答をはじめる」のボタンを押します。すると、電話番号のログインという画面がでます。
かなり危険!国勢調査の偽メールのURLにアクセスすると、こうなる 加害行為に利用される手口が明らかに(多田文明)
すでに記事にて、国勢調査が始まる前に送られてきた偽メールにアクセスして手口を暴きましたが、この時と同じ電話番号を抜き取るページが出てきました。ただし、前の偽サイトと違うのは、「SAMPLE」の赤い判が押された画面が付加されて信ぴょう性を持たせるようになっているところです。
アクセスした偽サイト・筆者撮影前回同様、ここに電話番号を入れると、有名なキャラクターのゲームや商品を販売する公式ショップから、ショートメッセージで認証コードが送られてくると思われます。その後、偽サイトの画面に認証コードを入れてしまうと、犯罪グループに公式ショップに電話番号で不正ログインされてしまい、別人のクレジットカードを使い、ゲームアイテムや関連商品などの不正購入がなされる可能性があります。
60代男性のもとにやってきたメールは【国勢関連調査】のメール
さて、先ほどの60代男性のもとにやってきたメールは「【国勢関連調査】給付金・補助金に関する意向調査のお願い」というタイトルで、本文には「個人向け給付金・補助金制度の見直しと支援拡充に向けて、全国的な意向調査を実施しております」となっていました。男性は、個人事業主として活動しており、補助金などを受けることもあったので、このメールを総務省からきたものと信じてしまいました。
筆者撮影・修正メールに載る「調査フォームへ進む」のボタンをクリックすると、電話番号の入力画面が出てきたので、入力して次に進みます。しばらくすると、やはりショートメッセージで公式ショップから認証コードが送られてきて、それを偽サイトに入力します。その後は、本物の国勢調査ページに飛ばされます。
しかし、いくら待っても給付金・補助金のアンケートのURLが届きません。おかしいと思うなかで「もしかして詐欺に遭ったのかもしれない」と思い、筆者のところに連絡をしてきました。
偽サイトに入力してから1時間は、不正行為をするには充分な時間
すでに男性はクレジットカードに紐づけている銀行口座の暗証番号を変えるなどの対策をとっていましたが、大事なこととして、彼の電話番号が犯罪グループに踏み台として使われていることが考えられるので、すぐにショートメッセージを送ってきた公式ショップに連絡をすることを勧めました。
男性は「自分の電話番号での不正登録やログインをされて、不正に商品が買われている可能性がある」といった旨のメッセージをサイトのフォームから送りました。
私のところに連絡したのは、情報を偽サイトに入力してから1時間たってからでしたが、犯罪グループが不正行為をするには充分な時間です。
現在のところ、公式ショップからの返答はありませんが、万が一不正購入などの形跡があった場合、電話番号の主である彼が、詐欺グループの一員に疑われる可能性もあるので、すぐに警察に相談することも必要となります。
なぜ、アクセスしたのでしょうか?
男性に話を聞くと「毎日のルーティンでメールの処理作業をしているなかで、総務省からのメールがきていました。数日前に国勢調査のネット回答をしたこともあって、何の疑いの気持ちも起こらず、さっさと回答して、今日の仕事にとりかかろうと思ってしまいました」と話します。
多くの方が忙しく仕事をするなかで、こうした身に覚えのある公的機関からのメールがくると、忘れないうちに、いの一番に対応してしまおうと思い、充分な確認をすることなく、アクセスしてしまいがちです。おそらく犯罪グループもその点がわかっていて、送ってきているはずです。
いずれにしても、メールのURLはクリックはせず、総務省から「国勢調査に関するメールが送られてくることがない」ことを心に留めおいてください。国勢調査をかたった「再確認」「関連調査」の偽メールは、多くの人がネットで回答した後のこれからが本番ですので、警戒が必要です。