闇に隠れた「ゆがんだ世界」 中国系カジノがもたらした安全保障危機
毎日新聞 2025/4/15 05:30(最終更新 4/15 05:30) 有料記事 2451文字
かつてのオンラインカジノの拠点は現在、フィリピン組織犯罪対策委員会が拘束した容疑者の収容施設となっている=マニラで2025年2月12日午前11時3分、石山絵歩撮影
フィリピン・マニラ中心部。外務省庁舎の陰に隠れるように、その建物は存在していた。
表向きは政府公認のオンラインカジノ。
しかし、かつてその奥には、恐怖によって支配される「ゆがんだ世界」が広がっていた。
牛耳っていたのは中国系犯罪組織だった。
人身売買の被害者ら約730人が監禁され、特殊詐欺に加担させられていた。大半は中国人。「仕事」に成功すれば報酬としてカラオケやマッサージを楽しむことができたが、失敗すれば容赦のない制裁が待っていた。
<主な内容> ・詐欺拠点だったオンラインカジノ施設 ・背景にある前政権の対中融和政策
・「無策」でカジノを解禁したツケ
華やかな表の顔、その先に広がる地獄
2月中旬、記者はこの詐欺拠点を訪れた。
建物の1階にはカラオケラウンジやカジノルーム、マッサージ施設が並んでいた。これらの施設は閉鎖され、静けさに包まれていた。
だが、関係者によると、かつてこの場所は夜になると別の顔を見せていたという。
派手なネオンがともり、スピーカーからは騒がしい音楽が流れた。酒とたばこのにおいが充満し、ギャンブルに熱を上げる男たちの怒号や笑い声が響き渡った。
しかし、ここは単なる娯楽施設ではなかった。廊下の突き当たりにある、小さな扉の先には、異様な空間が広がっている。
そこは「拷問室」だった――。
今も壁には血の痕がこびりつき、手錠をつなぐための鉄製のレールが残されたままだ。
「ボス」の命令に背いた者や、結果を出せなかった者が連れてこられ、ムチで打たれ、電気ショックを与えられたという。
見せしめとしての役割もあり、ここを訪れる者たちは、組織の言いなりになっていった。
犯罪組織の「支配の仕組み」
一体、どのような手口で人々を支配していたのか?
当時、交流サイト(SNS…