増える「親子で推し活」一家全員でアイドル映像視聴も 深まる家族間コミュニケーション

親子での推し活が増えている。家族共通の推し活がある人の方が、個人の推し活はあるが家族共通の推し活はない人の場合より幸福度が大きいという調査もあるという(写真はイメージです) この記事の写真をすべて見る

 親子での推し活が増えている──。その実態はいかなるものなのか。推し活に勤しむ親子たちに取材した。AERA 2024年11月4日号より。

【写真】栃木県在住の13歳。大ハマりしているアイドルグループがこちら

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 親子での推し活が増えている。オタク系ユーチューバーあくにゃんの「推し活ラボ」で2022年、約600人対象のアンケートを実施したところ、21.3%の人が親子で推し活をしているとの結果だった。

「推しって言葉には否定的。そんな軽い言葉では済まされない。人生をかけてますから」

 ある男性アイドルを20年近く応援している女性(32)がきっぱり。5年前、そのアイドルが所属するグループが6人から9人体制となり、そのタイミングで母親(50代)も別メンバーの熱烈ファンとなった。

「このグループを応援する」という点が一致しているので、価値観が違うところが見えても「そういう考え方もある」と受け入れられる。自分の中の「かっこいい、可愛い」を理解してくれる相手が身近にいることは大きく、自己肯定感につながっている。娘の友達ともライブに出かける母親は若々しく、とても50代には見えない。

一家全員夕飯中に観る

「オタクだからこそ北は北海道から南は沖縄まで友達がいて、さらに親子でオタクだから最強。こんなこと、普通に生活していたらあり得ないですよ」

 母親(43)と妹(8)、叔母(40)を巻き込んでの推し活をしているのが栃木県在住の13歳。アニメの「妖怪ウォッチ」「鬼滅の刃」などを経て、現在彼女が大ハマりしているのがアイドルグループの「INI」だ。

 好きになると、テレビの大画面でも推しの映像を流したい。必然的に祖父母や時々帰省する叔母を含め一家全員が夕飯中に観ることになり、叔母曰く「父親(祖父)なんてグループの名前を覚えるばかりか、目が肥えちゃって、売れているアイドルとそうでないアイドルについての違いを語っちゃうくらい。先日帰省した時は車中でINIのDVDが流れていて“何何何?”となりました。目にする機会が多いからそのうち拡散し、他の家族もハマりだす」。


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2024/11/04/ 09:00
羽根田真智

「娘のためというより、私が欲しくて」(母親)、目当てのグッズは並んででも手にいれる。親子喧嘩をしても、推し活で盛り上がれる。

「ママとの推し活の良さは、否定されないこと。どんどん本音で話せること。インスタグラムで投稿が上がった瞬間、どっちがいいねを早く押せるか競争したりしています」

 東京都在住の50代女性は「姉とは性格が違う。共通の推しがいなかったら、こんなにしょっちゅう話したりしてなかったかも」。岐阜県に住む50代の姉と30代の姪、そしてこの女性を強く結びつけているのは、あるフィギュアスケート選手。

「姉が高校時代、フィギュアスケート部に所属するほどフィギュア好きで、その選手推しに。姉からアイスショーに誘われるうち、姪と私も彼推しになったんです」(女性)

「親子で推し活の良い点、良くない点は?」という質問をLINEで送ってもらうと、お姉さんからこんな返事があった。

【良い点】

「グッズ売り場など混んでいるところも娘が走って買いに行ってくれる」「チケットが余った時に融通がきく」「姑が娘に甘いので出かけるときに気が楽」「SNSと語学を娘が駆使してくれ、入手困難なチケットをゲットできた」

【良くない点】

「娘と一緒のため、母親持ちの経費が増える」「娘の結婚が遠のく気がする」

 一方、姪御さんからは「母が興奮してやかましい」。二人に共通していたのは「グッズや写真集を共有できるのは良い点だが、親子で推し活のためテンションが高まりすぎグッズが無限に増える」だった。(ライター・羽根田真智)

AERA 2024年11月4日号より抜粋

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