ペンギンの糞でオキアミの急旋回が通常の3倍に、研究
最新の研究によれば、ペンギンの糞があると、オキアミに食欲不振などの行動変化が見られる。(PHOTOGRAPH BY AUSCAPE INTERNATIONAL PTY LTD, ALAMY)
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オキアミは南極海のポップコーンシュリンプだ。クジラからアザラシ、魚類、ペンギンまで、誰もが食べたがる。しかし、最新の研究によれば、小指ほどしかないこの半透明な甲殻類は、それほど無力な存在ではないようだ。
野生のナンキョクオキアミ(Euphausia superba)を水槽に入れて、アデリーペンギン(Pygoscelis adeliae)の糞を流し入れたところ、オキアミは通常より速く泳ぎ、より大きな角度で3倍多く方向転換することが明らかになった。論文は3月20日付けで学術誌「Frontiers in Marine Science」に発表された。
「彼らが回避行動をとっていることはすぐにわかりました」と、論文の筆頭著者で、オーストラリア、タスマニア大学の南極海洋科学者のニコル・ヘレシー氏は振り返る。「彼らはジグザグに泳ぎ始めました」
ときにはオキアミが全く泳がなくなり、水槽の反対側まで流されてしまうこともあった。流れに乗れば、捕食者から遠ざかることができる場合、エネルギーを節約できるとヘレシー氏は指摘する。
興味深いことに、ペンギンの糞があると、オキアミは食欲を失うようで、摂食の効率が通常の条件下より64%低下した。
南極周辺の海域にはナンキョクオキアミの成体が700兆匹も生息しており、今回の発見は、一帯の食物網に関する理解に大きな影響を与える可能性がある。ペンギンやクジラといったカリスマ性のある大型動物が注目されがちだが、南極の生きものすべてを結び付けているのがオキアミだとヘレシー氏は強調する。
アデリーペンギンから逃げる
オキアミには多くの捕食者がいるため、状況に応じて異なる回避行動が必要になると思われる。
オキアミと聞いたら、ピンク色の巨大な雲のような群れを思い浮かべるかもしれない。しかし、オキアミは単独で泳ぐこともある。どちらの状況にも、それぞれのリスクがある。
ザトウクジラやシロナガスクジラはオキアミの巨大な群れを狙う。最もコストパフォーマンスが高いからだ。一方、オキアミは数によって身の安全を確保している。
「(辛うじて)逃げ延びるオキアミもいるはずです」とヘネシー氏は話す。