米空軍が依存する州兵部隊の老朽化、F

米空軍の戦闘機戦力を下支えしているF-16の稼働率は徐々に低下しており、2026年1月から6月まで日本の嘉手納空軍基地に展開していた第120戦闘飛行隊のフランク・プロコップ中佐は「F-16C Block30の運用維持に課題がある」と明かしており、米空軍のF-16は耐用年数の限界に近づいている。

参考:Guard F-16s Kept Pace on Kadena Deployment, but Edge Wears Thin

米軍機の稼働率に関する指標はフルミッション達成率(Full Mission Capable Rate:FMC率)とミッション達成率(Mission Capable Rate:MC率)に分かれており、FMC率とは作戦機がミッション要件を完全に実行できる状態のこと、MC率とは作戦機が少なくともミッション要件の1つ以上を実行できる状態のことで、例えば照準ポッドとの接続不良で空対空任務しか実行できないF-16Cはミッション要件の1つ以上を実行できる状態、空対空任務と空対地任務の両方が行えるF-16Cはミッション要件を完全に実行できる状態に分類され、この数値は当該機種の準備状態や即応性を示す重要な指標になっている。

2022年/MC率 2023年/MC率 2024年/MC率 2025年/MC率 A-10 69.70% ▼67.00% 67.11%   F-15C 45.70% ▼33.00% 52.90%   F-15E 51.60% 55.00% 55.44%   F-15EX 84.60% 85.00% ▼83.13%   F-16C 70.70% ▼69.00% ▼64.05%   F-16D 68.90% ▼65.00% ▼59.03%   F-22A 57.40% ▼52.00% ▼40.19%   F-35A 56.00% ▼51.90% ▼51.50% ▼38.60% E-3G 63.90% ▼60.00% ▼55.68%   E-4B 55.40% 61.00% 61.17%   E-8C 49.20% 63.00% 66.14%   B-52H 59.30% ▼54.00% ▼53.77%   B-1B 54.80% ▼47.00% ▼43.44%   B-2A 52.80% 56.00% ▼55.04%   MQ-9A 89.90% ▼86.00% ▼85.65%   RQ-4B 70.80% ▼50.00% 64.59%   U-2S 73.50% 76.00% ▼61.87%   KC-10A 80.40% ▼79.00% 85.25%   KC-135R 72.00% ▼69.00% 67.66%   KC-135T 69.60% 69.70% 62.80%   KC-46A 69.90% ▼65.00% 61.05%  

F-35に関しては2026年に2025年度のFMC率とMC率が公表されたものの、その他の航空戦力のFMC率とMC率は2025年に公表された「2024年度の数字」が最新で、老朽化が激しいF-15Cの状況改善(33.00%→41.97%)は退役が進みスペアパーツ確保が容易になったこと、F-15EXのMC率が異常に高いのは機齢の若さと運用機が8機しかないためで、米空軍の戦闘機戦力を下支えしているF-16のMC率も徐々に低下しており、これに関して興味深い話が登場した。

コロラド州空軍州兵の第140航空団に所属する第120戦闘飛行隊は恒久的なF-15EX部隊の配備が実現するまでのギャップを埋めるため、F-16C Block30×12機を2026年1月から5月の予定で日本の嘉手納空軍基地に配備したが、エピック・フューリー作戦の影響を受けて配備期間が6週間延長され、6月に日本を離れてコロラド州オーロラのバックリー宇宙軍基地に帰還したが、今回の嘉手納展開で飛行隊長を務めたフランク・プロコップ中佐はF-16C Block30の運用維持に課題があると明かしている。

出典:U.S. Air National Guard photo by Senior Airman Kylie Davidson

プロコップ中佐は「F-16が最初に製造された当時、1飛行時間あたりにかかる整備工数=整備マンアワーは概ね6〜8時間程度だったが、現在は1飛行時間あたり平均15〜20時間の整備工数を費やしている」と述べ、これは機体のひび割れなど構造的欠陥が非常に高い頻度で発生し「より綿密な整備」が要求されているためで、プロコップ中佐は「恐らく我々が直面している最大の課題は機体の整備時間の要求が高まっているにもかかわらず、それに見合うだけの人員増強が整備部隊に対して行われていないことだ」と指摘した。

第120戦闘飛行隊にはF-16に精通した経験豊富なベテラン整備員が揃っていたものの整備にかかる時間は増大し、その影響で第120戦闘飛行隊のパイロットは実機による飛行訓練を減らし、シミュレーターでの訓練時間を増やすなどの調整を迫られているらしい。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Francisco Huerta

米空軍のF-16は新型のAESAレーダーやリンク16への換装、継続的なソフトウェアの更新などにより有効性を維持する努力が続いているものの設計上の耐用年数の限界に近づいており、ミッチェル航空宇宙研究所のヘザー・ペニー氏(元F-16パイロット)は「老朽化し​​た機体は運用稼働率と日常の運用ペースに悪影響を及ぼすだろう」「例えるなら35年前の車でF1に出場するようなものだ」「本当にそんなことをやりたいか?」「今のところF-16を運用し続けることは出来るが、空軍はF-16に関する長期的な計画をまだ示しておらず、旧型機を置き換えるのに十分な速さで新型機を購入する予定もない」と指摘する。

“空軍は機種更新ペースの引き上げを先送りし遅らせてきたのだから、今後は意味のあるペースで機種更新を行わなければならない。もし2035年までに機種更新を完了させたいのであれば年間100機以上の戦闘機を調達する必要がある”

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Jennifer Nesbitt

米空軍上層部も「保有する戦闘機の平均機齢上昇を防ぐためには、少なくとも年72機の戦闘機を調達しなければならない」と訴えているものの、この最低ラインを最後にクリアしたのは2024会計年度予算で、2025年度の予算要求は60機(成立はF-35Aが44機+F-15EXが18機で計62機)、2026年度は45機(成立はF-35Aが24機+F-15EXが22機で計46機)という低水準に留まり、現在審議中の2027会計年度予算でも62機しか要求しておらず、さらに問題なのはF-35AやF-15EXの大半が現役部隊に配備されて州兵部隊に回ってこないことだ。

この点についてペニー氏は「現在の州兵部隊は単なる追加戦力としてではなく必須戦力として展開しているため、この不味い状況は連鎖的な波及効果をもたらすだろう」「空軍が現役部隊と並行して州兵部隊の機種更新を行わなければ戦力全体の重要な要素を失うリスクがあるだけでなく、実戦では通用しない機体を州兵部隊に抱えさせるリスクがある」と警告している。

出典:U.S. Air National Guard photo by Senior Airman Kylie Davidson

米国において州兵は戦争や国家非常事態時などに大統領令で連邦化され、現役部隊に編入されて海外派兵が可能になる予備戦力であり、現役部隊とは異なり州兵勤務の兵士は原則パートタイム勤務(月に1回の週末訓練+年2週間の訓練)なのだが、現実は戦力不足をカバーするため現役部隊とほぼ同等の訓練水準を維持し、F-35AやC-17など最新装備を運用する即応戦力として機能している。

今回のような嘉手納展開の際には大統領令で連邦化=フルタイム勤務の現役兵士化され、民間企業で働く州兵を何ヶ月間も動員できるのはUniformed Services Employment and Reemployment Rights Act=雇用主及び軍事サービス就労者の権利保障法によって動員された兵士の地位や元の職場に復職する権利を厳格に保障しているためで、民間企業は動員された兵士が任務を終えて帰ってくると「動員されていなければ到達していたはずの地位と給与」で復職させなければならず、州兵の海外展開も現役部隊と同じローテーションが組まれているため民間企業と州兵は事前に調整することが可能だ。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Melany Bermudez

それでも現役部隊の戦力不足をカバーするため恒久的に州兵を動員することは民間企業に負担を肩代わりさせていることになり、その州兵部隊の大半も運用機材が老朽化しているため、戦争や国家非常事態時に頼れる戦力としての有効性が低下し、老朽化した機材を維持していくには整備上の要求がどんどん増え、そのための人員増強が行われていないため「何とか保たれている運用と維持のバランスがいつか崩壊するかもしれない」という意味になる。

こういった問題は軽視されがちで静かに事態が悪化していき手に負えなくなった頃に大騒ぎするものなので、まだ救いがある状況なのかもしれないが、米空軍の戦闘機購入は最低ラインの年72機を下回っているため保有する戦闘機の平均機齢上昇に歯止めがかかる状況ではない。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Melany Bermudez

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