秘書の給与口座の通帳の一部、事務所スタッフの管理が常態化か…維新・石井章参院議員巡る詐欺事件
石井章参院議員(68)(比例、日本維新の会を除名)が国から公設秘書の給与をだまし取ったとされる詐欺事件で、一部の公設秘書の給与振込先の口座について、石井氏の事務所スタッフが通帳を管理していた疑いのあることが関係者への取材でわかった。石井氏が自らの親族を公設秘書として届け出ていたとみられることも新たに判明。東京地検特捜部は、秘書給与の資金の流れや秘書採用を国に届け出た経緯などを詳しく調べている。
秘書給与詐欺事件の構図石井氏を巡っては、勤務実態のない公設秘書の給与を国から詐取した疑いがあるとして、特捜部が8月27日以降、東京・永田町にある国会議員会館の事務所や地元・茨城県取手市の関係先などを詐欺容疑で捜索。不正受給の総額は少なくとも計800万円に上るとみられている。
石井章参院議員公設秘書は特別職の国家公務員で、年齢や勤続年数に応じて月30万~60万円程度の給与が公費で賄われる。過去に相次いだ国会議員による詐欺事件を受けて2004年に改正された国会議員秘書給与法は、公設秘書の給与全額を本人に直接支給すると定めている。
だが、関係者によると、少なくとも一部の公設秘書について、石井氏の事務所のスタッフが給与振込先口座の通帳を管理していた疑いが浮上。特捜部は、公設秘書の給与を事務所側が実質的に管理する運用が常態化していた可能性があるとみて捜査している。
一方、石井氏の事務所では、複数の公設秘書に勤務実態がなかったとみられることが判明しているが、うち1人は石井氏の親族だったことが新たにわかった。特捜部は、石井氏側が親族の名義を借りていた疑いが強いとみており、捜索で押収した資料の詳しい分析などを進めている。
石井氏は取手市出身で、同市議などを経て、2009年衆院選で旧民主党から出馬して当選。その後、16年の参院選におおさか維新の会(当時)から立候補して当選し、現在2期目。
石井氏は8月29日、特捜部の強制捜査を受けた責任を取って議員辞職する意向を表明し、「捜査に全面的に協力する」などとするコメントを発表。日本維新の会は同日、石井氏を除名処分としている。
地元で動揺と落胆の声「頼りになる兄貴分だった」
地元では石井氏の議員辞職表明に対する動揺と落胆の声が広がっている。
石井氏の事務所近くの駐車場には、党名やスローガンが掲げられた街宣車が並んでいた(8月31日、茨城県取手市で)取手市の事務所近くに住む男性(63)は、「傷ついた道路の復旧を相談した時、すぐに自治体に掛け合って対応してくれた。辞職は残念だ」と話した。石井氏が代表を務めていた「茨城維新の会」の長田麻美幹事長は、「秘書給与詐欺が事実なら議員辞職もやむを得ない。『クリーンな政治』を掲げてきた党としては、ショックが大きい」と動揺した表情を見せた。
1990年、旧藤代町議選で初当選して政界入りした石井氏。2016年の参院選で当選し、茨城維新の会の「トップ」として活動してきた。ある取手市議は「頼りになる兄貴分だった。関東や東北の維新議員の中では、絶大な力を持っていたのに……」と語る。
石井氏は、国政選での候補者擁立や首長選での候補者推薦を積極的に進め、「保守王国」とされる茨城県で党勢を拡大。公設秘書を選挙応援に派遣するなどし、維新内での自らの発言力も高めていった。
反面、秘書の負担は大きく、支援者は「秘書やスタッフは頻繁に入れ替わっていた」と証言。過去に公設秘書を務めた男性は「全国各地に選挙応援に出され、在職中は休む暇もなかった」と振り返った。(水戸支局 大我寛樹、佐々木勇輝)