中古でも東京23区は2割が「億ション」 「手が出せない…」諦めで戸建てシフト加速
首都圏で現役世代の住宅購入が新築マンションから戸建てにシフトする動きが強まっている。新築マンションは建設コストの上昇による価格高騰が続くほか、中東情勢を受けた資材流通の混乱で引き渡しが遅れる可能性が出てきたためだ。新築が敬遠された結果、東京都内では中古でも「億ション」の物件が増え始めており、今後は価格上昇の緩やかな戸建ての購入が活発化する可能性がある。
「ナフサショック」で引き渡しに遅れも
「とてもじゃないが、手が出せない金額と感じた」
東京都多摩地域在住の40代の女性医師は価格の高騰からマンション購入を諦め、共働きの夫と共同で現住所に近い武蔵野市内の新築戸建てを3月に購入した。
子供の成長に伴い住み替えるに当たり、当初は戸建てに比べ維持・管理に手間がかからないマンションを検討していた。ただ、希望する広さの物件は新築・中古に関わらず、予算内では見つからなかったという。
女性は「戸建てと同じ金額で新築マンションを買おうと思ったら、半分以下の広さになってしまう印象だった」と語る。マンションに未練はあるが、購入した戸建ては駅から徒歩7分の好立地で資産価値も低下しづらいと判断したという。
首都圏のマンション価格は建設業界の人手不足や資材高を背景に上昇傾向が続く。4月に不動産経済研究所が発表した2025年度の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の新築マンション1戸当たりの平均価格は、前年度比15・3%高い9383万円で、5年連続で過去最高を更新した。
用地不足などを要因に発売戸数も4年連続で減少。中東情勢の混乱による「ナフサショック」によって新築物件は引き渡しの遅れも懸念されており、現役世代が購入しづらい状況が続いている。
加えて、新築の購入を諦めた人からの需要が高まった結果、都市部では中古マンションの価格も上昇している。不動産・住宅情報サイトのライフルホームズによると、東京23区内の中古マンションのうち価格が1億円を超える「中古億ション」の割合は25年に18・8%となり、20年の3・4%から大幅に増加した。
担当者は「共働き会社員などの(投資や転売目的ではない)実需層は、都内のマンションに容易に手を出せなくなっている」と指摘する。
20代の購入動機は「資産形成」
こうした中、マンションよりも、価格上昇の緩やかな戸建てを検討する人が増えてきている。
木造戸建て住宅事業を展開するタカマツハウス(東京都渋谷区)が3月に1都3県に住む20代~50代の1000人に対して行った調査によると、マンション購入検討者の4人に1人が後に戸建てを検討対象にしたと回答。20~30代に限ると、同様の回答は3人に1人に上った。
最大の理由は、将来的な管理費や修繕積立金の上昇懸念だ。戸建ての魅力を聞いた質問では「維持費がかからない」が最も多く、将来のインフレによるコスト増を回避したい堅実な心理がにじむ。
また、20代の購入動機では「資産形成・インフレ対策」が最多だった。戸建ては建物自体が劣化しても土地が資産として残るため、魅力に感じる人が多いとみられる。
同社は「今の現役世代は資産形成への意識が高い。永住ではなく、将来の住み替えも前提に売却価値を重視して住宅を探している」と分析。特に子育て世代に関しては「希望の学区内で将来値落ちしづらい利便性の高い戸建てを選ぶ傾向が強まっている」とみている。(福沢紫、根本和哉)