機会損失8億円をAIエージェントで解消した、ある中小企業の転禍為福(ZDNET Japan)
顧客からの問い合わせが増えているが、対応できるマンパワーが限られている。年間8.1億円の機会損失を抱えており、このままでは2030年時点の累計機会損失は30億円に――。ある中小企業はAIエージェントの活用で、このリスクを乗り越えている。 セールスフォース・ジャパンは4月27日に記者会見を開催。中古住宅のリノベーションを手掛けるスクールバス空間設計(大阪市中央区)で代表取締役を務める田中将司氏が登壇して、同社がAIエージェントプラットフォーム「Salesforce Agentforce」を活用して、年間8.1億円と推定される機会損失をどのように改善していったかを解説した。 選択肢を増やす「中古住宅+リノベーション」 われわれの生活の基礎となるのが「衣食住」だが、田中氏は「衣服は好きなブランドや好きなスタイルを自由に選べる。食物も世界中の料理、オーガニック、こだわりの食材まで選択肢は無限で、自由に選べる。しかし、住居は万人向けの間取り、無難なデザイン、供給する側の都合で『選ばされている』のが現状。住居は自由に選べない」と解説する。 つまり、衣食住のうち住は自由に選べない。そこで同社は「中古住宅+リノベーション」を手掛けることで選択肢を増やそうとしてる。 「新築の注文住宅は、手が届かない価格になってしまったり、希望するエリアに土地が見つからなかったりと、自由度は高いがコストに直結する。建売住宅は、比較的安価だが、選べる範囲が限定的。建売住宅は在庫がある場所から選ぶしかない。自由度について言えば、間取りや仕様は決められたものになり、購入しても満足度は低い。中古+リノベだと、価格が安定した物件を賢く購入できる。新築注文住宅や建売住宅と比べるとコスパはかなり高い。中古であれば、好立地の選択肢は豊富。自由度で言えば、間取りもデザインも自分らしく自由に変更できる」(田中氏) 選択肢が増える中古+リノベだが、選択肢が増える分購入するまでに複数の企業とやり取りすることになる。土地を探すために不動産会社と交渉しなければならないし、ローンの相談は銀行、リノベーションするための設計や見積もりはリフォーム会社に行かなければならない。内装のデザインについては別のデザイナーと相談。「窓口がバラバラ、情報が分断され、時間も手間も増大することになる」(田中氏) そこで田中氏は、スクールバスが全てを一つの窓口で済むようにしている。スクールバス空間設計がリノベーションの設計と施工を担当。同社のグループ会社であるスクールバス不動産がリノベーションに最適な物件を見極める。 「スクールバス空間設計がデザインから施工管理まで一貫して手掛けることでクオリティーとスピードを両立できる。スクールバス不動産は、設計チームと連動していることから『この物件ならこう変えられる』まで踏み込んだ提案が可能」(田中氏) スクールバスであれば、物件探し(不動産)と資金計画(ローン)、設計施工とデザインまで、全てを一つの窓口で完結するワンストップの仕組みを構築している。 「『ワンストップ=なんでも屋』ではない。各領域を独立法人化して、高い専門性とサービス品質を提供できるようにしている」(田中氏) 2017年に大阪市中央区で創業し、2019年に京都、2020年に神戸、2021年に堺、2023年に東京、2025年に福岡、それぞれ店舗を開設。2026年12月に東京2号店を開設する予定。それぞれの店舗にはカフェが併設されており、リノベーションのアイデアをカフェからつかむといった仕掛けも施されている。 3000件が未対応 創業9年で7店舗という成長を遂げてきているが、田中氏は「経営上の巨大な空白」に気づくことになる。 スクールバス空間設計では、公式ウェブサイトなどに「中古+リノベーション」の資料をダウンロードできるようにしている。その資料をダウンロードする際にメールアドレス入力などを必須とすることで、見込客(リード)の情報を獲得する仕組みを講じていた。 このリード情報のうち3000件は対応していないことが判明した。「成長と共に資料請求は増え続けていた。しかし、その大半が対応されないまま蓄積されていた。成長する裏側で課題が積み上がっていた」(田中氏) リード情報に対応するのがインサイドセールスだが、人員は1人のみ。1人のインサイドセールスで3000件を把握するのは不可能。「誰に、いつ、何を提案すべきか判断しきれない状態」(田中氏)。顧客からの問い合わせにワンストップで対応できるのが同社の強みだが、「ワンストップだからこそ、不動産や建築、ローンの知識を持ち合わせていないと即時のアドバイスができない」 不動産と建築、ローンという3つの領域に精通した人材を採用、育成するのは現実的ではない。単純に人数を増やせばいいという問題ではなかった。