中国が通商交渉官を交代、元WTO大使起用 米中摩擦の中

米中貿易摩擦が激化する中、中国は16日、王受文商務次官に代わり、元世界貿易機関(WTO)大使の李成鋼氏を新たな通商交渉官に任命した。写真はロイターのインタビューに答える李氏。スイスで2021年に撮影(2025年 ロイター/Denis Balibouse)

[北京 16日 ロイター] - 米中貿易摩擦が激化する中、中国は16日、王受文商務次官に代わり、元世界貿易機関(WTO)大使の李成鋼氏を新たな通商交渉官に任命した。人事社会保障省が発表した。

今回の人事は予想外。対米貿易摩擦の解消に向けた交渉が行われる場合、重要な役割を果たすことになる。

李氏は58歳。第1次トランプ政権時代に商務次官補を務めた。また、商務省で条約・法律を担当する部門など複数の重要ポストを歴任した。名門の北京大学や独ハンブルク大学で学んだ経歴を持つ。

王氏は59歳。2022年から通商交渉官を務めていた。同氏は米国の関税引き上げに先立ち、ペプシコやビザなど外国企業幹部を北京に迎え、中国経済の見通しについてアピールしていた。

王氏が別の役職に就いたかは不明。北京駐在の外国企業関係者によると、王氏はタフな交渉人として知られ、過去の会議で米当局者と衝突していた。同関係者は「ブルドッグのようで、とても激しい性格だ」と述べた。

コンファレンス・ボード中国センターのシニアアドバイザー、アルフレド・モンチュファル・ヘル氏は、今回の人事について「非常に突然で、混乱を招く恐れがある」とし「なぜこのタイミングでこうしたことが起きたのかは、推測することしかできないが、緊張の激化が続いていることを受けて、米中の行き詰まりを打破し、交渉を開始できる別の人材が必要だと中国最高指導部が考えた可能性がある」と述べた。

李氏は今年2月のWTOの会合で、米国が中国を含む貿易相手国に恣意的に関税を課し、世界に「関税ショック」を引き起こしていると非難。

「米国の一方主義的な行動は、WTOのルールに明白に違反しており、経済の不確実性が高まり、世界貿易が混乱し、規則に基づく多国間貿易体制が崩壊する恐れさえある」とし「中国はこれに断固反対し、米国に誤った慣行を廃止すること求める」と述べた。 もっと見る

シンガポール国立大学のアルフレッド・ウー准教授は「経歴から判断すると、李氏は商務省やWTOで貿易問題に取り組んだ豊富な経験を持つ典型的な中国のテクノクラートだ」とし「通常の昇格のように見るが、今は米中関係の緊張で明らかにデリケートな局面にある」と述べた。

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