プーチンによる「核の脅し」の弱さと懸念、原子力推進巡航ミサイル「ブレヴェストニク」の発射実験成功は見せかけの可能性も(Wedge(ウェッジ))
ワシントンポスト紙の10月27日付け解説記事が、トランプ大統領がロシアによる原子力推進巡航ミサイル「ブレヴェストニク」の発射実験を非難して「ミサイル実験より戦争を終わらせるべき」と述べたことに言及した上、同ミサイルの脆弱性とリスクにつき紹介している。要旨は以下の通り。 トランプ大統領は10月27日、ウクライナ紛争の終結に努めるどころか、核搭載可能な新型巡航ミサイルの実験を行っているとして、ロシアを非難した。この激しい応酬は、ここ数週間の両国関係の悪化を物語っている。 ロシアは10月26日、ブレヴェストニクと呼ばれる原子力推進巡航ミサイルの実験に成功したと発表した。トランプ氏は、今回の実験は核兵器による威嚇行為と見做すかとの記者団の質問に対し、米国はロシア沖に原子力潜水艦を配備している、8000マイルも航行する必要はないとした上で、「プーチン大統領はミサイル実験をするのではなく、戦争を終わらせるべきだ」と述べた。 米国ではスカイフォールとして知られるロシアの巡航ミサイルは、数年前から開発が進められており、これまで何度も実験に失敗している。プーチン大統領は2018年3月、ブレヴェストニクを含む6種類の「無敵」核ミサイルを公開していた。 トランプ氏の発言について、クレムリンのペスコフ報道官は、ロシアによる兵器の実験を思いとどまらせることはできない、と述べた。 前任者よりもはるかにロシアに対してオープンな政策を採用し、プーチン大統領と複数回直接会談したトランプ氏だが、今やウクライナ紛争を解決しようとしないとして、プーチン大統領に不満を表明している。
ロシアのゲラシモフ参謀総長は10月26日、ブレヴェストニク・ミサイルが21日に行われた実験で1万4000キロメートル(km)飛行し、如何に厳重に防護された標的であっても「確実な精度」で攻撃できると主張した。 プーチン大統領とゲラシモフ参謀総長によるミサイル試験に関する発言は、ウクライナ紛争におけるロシアの核態勢を示す最新の事例であり、アナリストたちは、これはロシアが米欧によるキーウへの支援を阻止しようとする試みだと分析している。 対立的なレトリックは、ウクライナの現在の戦線での戦闘停止を求めるトランプ大統領の呼びかけをロシアが拒否してから強くなった。ブダペストで予定されていたトランプ大統領とプーチン大統領の会談は中止となった。 軍事専門家たちは、このミサイルがモスクワの誇示する性能に見合うものかどうか疑問視しているが、同時に、米露関係が脆弱な中での新たな軍拡競争という状況下で、このミサイルが不安定要因となる可能性を指摘している。 国際安全保障の著名な研究者であるジェフリー・ルイス氏は、ミサイルは迎撃不可能だとするロシアの主張に疑問を呈している。彼は、このミサイルは「無敵ではない。亜音速(約260メートル/秒以下)の巡航ミサイルであり、北大西洋条約機構(NATO)軍の航空機で迎撃できる」と述べた。 「問題は、にもかかわらず、ブレヴェストニクがどちらの側にも勝利をもたらさない軍拡競争の新たな一歩になるということだ」とルイス氏はXに記した。以前の実験はエンジンが点火せず、4秒から2分間で失敗した。19年、ブレヴェストニク・ミサイルは実験失敗中に白海に沈没し、回収中に爆発が発生して放射能が放出され、核科学者を含む7人が死亡した。 * * *