ユニホームは「唯一無二」 青藍泰斗、27歳監督が挑む夏の甲子園

【青藍泰斗-佐賀北】ベンチで選手に声をかける青藍泰斗の青山尚緯監督=阪神甲子園球場で2025年8月9日、藤井達也撮影

 9日の第3試合に登場した青藍泰斗(栃木)を率いたのは今大会最年少となる27歳の青山尚緯(なおい)監督。寮で選手と寝食を共にし、悩み相談を受けるなど選手との結びつきを深め、35年ぶり2回目の夏の甲子園出場を果たした。真っ青に白の縦じまという印象的なユニホームで、新風を吹き込もうと「とにかく、あがこう」とナインを鼓舞してきたが、延長タイブレークの末、惜しくもサヨナラ負けした。

 夏の栃木大会決勝。強豪・作新学院を破り、ナインに促された青山監督は宙を舞った。胴上げを終え歓喜の涙を流す選手たちと握手や抱擁を交わし「野球も普段の生活も一生懸命頑張ってきたご褒美の優勝だ」とねぎらった。

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 群馬県太田市出身。高校時代は桐生市商で主将を務め、3年生の夏は群馬大会3回戦で敗退した。「将来、教え子たちと甲子園を目指そう」と指導者を志した。進学した地元の関東学園大で、青藍泰斗の卒業生と同期だった縁で同校の教員に。野球部ではコーチ、部長を経て2023年秋に監督に就いた。

 初の監督経験では当初、どう指導すれば良いか距離感に悩むこともあった。

甲子園出場を決め、選手たちに胴上げされ宙に舞う青藍泰斗の青山尚緯監督=宇都宮市のエイジェックスタジアムで2025年7月27日午後0時42分、池田一生撮影

 だが、10歳ほどの年の差の選手たちと一緒に野球に打ち込むうちに、「監督っぽくなくていい。寄り添い一緒に成長していこう」と肩の力が抜けた。選手目線で、親しみやすい指導者でいようと心掛けている。

 グラウンド外でも選手とコミュニケーションを重ねる。気軽に意見を交わせるよう無料通信アプリ「LINE(ライン)」で悩みを聞き、課題や練習メニューについて個々にアドバイスを送る。

 寮の監督者が不在になったため、監督就任と同時期に部員たちが暮らす寮へ移り住んだ。生活指導の傍らで一緒に食事を取り、食堂のテレビで野球観戦をして盛り上がるなど日々の生活を共に楽しむことも忘れない。

 昨秋に一新したユニホームも、選手たちと意見を出し合いながら決めた。それまでは白基調だったが、スクールカラーである青を前面に押し出したものに刷新することになり、「唯一無二」を目指して縦じまを入れた。

 エースの永井竣也投手(3年)は「何でも相談でき、意見も取り入れてもらえる。練習や寮生活を青山先生(監督)と一緒につくり上げる毎日だった」と振り返る。

 こうした寮などでの綿密なコミュニケーションは選手との距離を縮め、指導者としての手腕を磨くことにもつながった。青山監督は「選手個々の性格や考え方を深く理解できたことで、選手起用や作戦の幅が広がった」と語る。

 迎えた今夏の栃木大会では、決勝で延長十回タイブレークの末に作新学院を撃破し、05年に葛生から現在の校名になって初の甲子園を勝ち取った。

甲子園練習に臨む青藍泰斗の選手たち=阪神甲子園球場で2025年8月2日、皆川真仁撮影

 前回出場した1990年大会の山陽(広島)との初戦は九回裏2死走者無しから3点差を逆転された。

 この悲劇は部内で語り継がれている。当時の映像を何度も見返し、「35年前の忘れ物を選手たちと一緒に取りに行く」と話していた青山監督。悲願の初勝利とはならず、「(甲子園は)本当に素晴らしい場所だったし、怖い場所だとも感じた。選手たちを一から鍛え直していかないといけない」と巻き返しを誓った。

【池田一生、中田博維】

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