中国の宇宙船「神舟21号」が「神舟20号」のクルーを乗せて地球に帰還 その理由は
CMSA=中国載人航天工程弁公室(中国有人宇宙プロジェクト弁公室)は2025年11月14日付で、宇宙船「神舟20号」のクルーが別の宇宙船「神舟21号」で地球に無事帰還したと発表しました。
スペースデブリ衝突の可能性を考慮して帰路の宇宙船を変更
【▲ 東風着陸場に着陸した宇宙船「神舟21号」の帰還モジュール(Credit: CMSA)】帰還したのは中国の陳冬(ちん・とう)宇宙飛行士、陳中瑞(ちん・ちゅうずい)宇宙飛行士、王傑(おう・けつ)宇宙飛行士です。
2025年4月に神舟20号でCSS=中国宇宙ステーションに到着した3名は、2025年11月1日に打ち上げられてCSSに到着した神舟21号のクルー3名と交替して、2025年11月5日に神舟20号で帰還する予定でした。
しかし帰還予定の当日、CMSAは神舟20号にスペースデブリ(宇宙ゴミ)が衝突した可能性を明らかにするとともに、宇宙飛行士の安全確保とミッション成功のためにクルーの帰還延期を決定したと発表。神舟20号のクルーはCSSに留まり、神舟21号のクルーとともに実験等に従事していました。
【▲ 神舟16号の帰還時に撮影されたCSS=中国宇宙ステーション(Credit: CASC)】延期発表から9日後の2025年11月14日、CMSAは神舟20号のクルーが神舟21号で地球に帰還することと、宇宙船を譲る形になった本来の神舟21号のクルーのために次の宇宙船「神舟22号」を後日打ち上げる予定であることを発表しました。
神舟20号で帰還する予定だった3名のクルーを乗せた神舟21号は、日本時間2025年11月14日12時14分にCSSを離脱。軌道モジュールと推進モジュールを切り離して大気圏に再突入した帰還モジュールは、日本時間同日17時40分に中国・内モンゴル自治区の東風着陸場へ着陸することに成功しました。
帰還した3名は今回のミッションで軌道上に204日間滞在し、中国の宇宙飛行士による単独の宇宙滞在期間として最長を記録しました。滞在中は微小重力環境を利用した基礎物理学、宇宙材料科学、宇宙生命科学、航空宇宙医学、航空宇宙技術といった分野における科学実験の他に、4回の船外活動も実施されたということです。
【▲ 神舟宇宙船のイメージ図(Credit: CMSA)】なお、CMSAによると、クルーの帰還に使用しなかった神舟20号は、関連する実験を行うために引き続き軌道上に留まります。
また、画像の分析、設計レビュー、シミュレーション解析、風洞試験などを通じて総合的な評価を行った結果、神舟20号の帰還モジュールに設けられている窓ガラスで軽微な亀裂の発生が判明したことや、その原因として外部からのスペースデブリの衝突が考えられるとCMSAは述べています。
CMSAやCASC=中国航天科技集団がこれまでに公開した情報によると、神舟宇宙船は打ち上げの時点で次の宇宙船が射場で待機する体制を敷いており、8.5日以内に無人の救援機として緊急の打ち上げを実施することが可能とされています。
“想定外の理由により別の宇宙船で帰還” 過去にはISSでも
当初から往復で別の宇宙船を使用することは予定しておらず、想定外の理由で帰路に別の宇宙船を使用することになった事例は、ISS=国際宇宙ステーションでも起きています。
3年ほど前の2022年12月には、ロシアの宇宙船「Soyuz(ソユーズ)MS-22」で冷却剤が漏洩するトラブルが発生。クルーはSoyuz MS-22を帰還に使用せず、2023年2月に無人でISSに送られた次の宇宙船「Soyuz MS-23」に搭乗して同年9月に帰還しました。
また、2024年には、有人飛行試験でISSに到着したアメリカ企業Boeing(ボーイング)の宇宙船「Starliner(スターライナー)」でスラスターのトラブルが発生し、同船でISSに到着した宇宙飛行士の帰還に使用されなかったことがありました。
搭乗していた2名の宇宙飛行士は2024年6月から2025年3月までISSに滞在し、アメリカ企業SpaceX(スペースX)の宇宙船「Crew Dragon(クルードラゴン)」で帰還しています。
文・編集/sorae編集部