3相当の迎撃ミサイル開発計画を発表、元ロシア人が計画を主導

デスティナス、タレス、エアバス、MBDA、サフランは弾道ミサイルを大気圏外で迎撃するBliksem EXO開発計画を発表し、これはSM-3やArrowの欧州バージョンを開発するという意味で、このコンソーシアムを主導するのはロシア国籍を捨てたココリッチ氏率いるデスティナスだ。

参考:European defence companies sign Letter of Intent to establish the Bliksem EXO Consortium: Europe’s exo-atmospheric interceptor against medium- and intermediate-range ballistic missiles. 参考:European defence companies sign Letter of Intent to establish the Bliksem EXO Consortium 参考:Raketenabwehr: Fünf europäische Unternehmen wollen exoatmosphärischen Effektor entwickeln

ウクライナのゼレンスキー大統領は13日にパリを訪問し、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、英国の首脳、欧州理事会のコスタ議長、欧州委員会のフォンデアライエン委員長、NATOのルッテ事務総長、英国のリチャード・ナイトン国防参謀総長、ドイツのヤン・シュトス国防省次官、各国の国家安全保障補佐官や国防相、コングスベルグ、タレス、サフラン、MBDA、ユーロサム、サーブ、ディール・ディフェンス、ウェイベル・サイエンティフィック、ファイアポイント、ヘンゾルト、セネル、レオナルドと共に弾道ミサイル迎撃連合の設立を正式に発表。

出典:Volodymyr Zelenskyy

ゼレンスキー大統領は「我々は現在、FREYJA(フレイヤ)計画の最終調整を行っている。他国にはレーダー等の重要コンポーネントがある。だからこそ我々が真に力を合わせることが重要だ。協力の意志を示してくれた各企業には感謝している。今日、首脳レベルにおいてFREYJA計画が我々の共通のプロジェクトであることを政治的に確認できたことは極めて重要である」と述べた。

“ロシアは我が国民の心を折り、ウクライナの自衛を阻止するために都市や村落への弾道ミサイル攻撃に最後の望みを懸けている。イラン政権も同様の手法で戦っている。またロシアと北朝鮮の協力関係が北朝鮮製ミサイルの性能向上をもたらしている。FREYJA計画は実現すれば欧州は自ら欧州域内にシステムがいくつ必要で、どこに配備すべきかを決定できるようになるだろう。これにより戦略的に全く新たな状況が生まれる。欧州の各システムがそれぞれの強みを付加し、欧州の各地域に防衛のための戦略的基盤をもたらすことになる。今後12か月以内にFREYJAが実稼働することを期待している”

出典:Denys Shtilierman

FREYJAとはFIRE POINT製の弾道ミサイルをベースにした低コスト弾道弾迎撃ミサイル=FP-7.xをコアにした防空システムのことで、シンプルに言えばFP-7.xに欧州製のセンサー(ヘンゾルトのTRML-4D、サーブのGiraffe 4A/8A、タレスのGround Master 400)、欧州製の射撃管制・照射レーダー(ウェイベルのGFTR-2100/48、レオナルドのKRONOS LAND)、欧州製の指揮統制(コングスベルグのFire Distribution Center)、NATO規格のデータリンク(Link16)を組み合わせたものになる。

FP-7.xは複合材の採用でFP-7よりも軽量化することで高機動を実現し、誘導方式はIIRシーカーを採用する予定だが、ディール・ディフェンスが開発したSARHシーカーの統合やRFシーカーの追加も計画されており、直撃方式ではなく150kgの弾頭を搭載しているため、FP-7.xの特性は「PAC-3 MSEではなくPAC-2 GEM-Tに近い存在」「弾頭の爆発効果はPAC-2 GEM-Tの約2倍」「インフラへの負荷を許容してミサイルの小型を追求しない」「弾道ミサイル迎撃能力はPAC-2 GEM-Tよりも効果的だがPAC-3 MSEほどではない」「1発70万ドルの調達コストを実現して数で迎撃効果を高める」と言ったところだろう。

出典:NATO Support and Procurement Agency (NSPA)

さらにFREYJA計画に参加するタレス、エアバス、MBDA(ドイツ部門)、サフランと防衛スタートアップのデスティナスは準中距離弾道ミサイルと中距離弾道ミサイルを大気圏外で迎撃するBliksem EXO開発計画を発表、このBliksem EXOは多目標個別誘導弾頭(MIRV)を備えるオレシュニク級の弾道ミサイルに対抗する迎撃ミサイルで、米国のSM-3やイスラエルのArrowの欧州バージョンを開発するという意味だが、Bliksem EXO開発計画を主導するのは防衛スタートアップのデスティナスだ。

デスティナスはBliksem EXOコンソーシアムを主導しながらシステム統合と大気圏外キルビークル(EKV)の開発を、MBDAが迎撃ミサイルのブースター、発射装置、キャニスターを、サフランがEKVのシーカー、誘導、航法、制御を、エアバスが指揮統制および戦闘管理を、タレスが早期警戒から射撃管制までのレーダーおよびセンサーチェーンを担当する予定で、現在は意向表明書に署名した段階に過ぎないものの、コンソーシアムを構成する5社は3ヶ月以内に法的拘束力が伴う協定書に署名し、2027年には宇宙空間でEKVの試験を行う計画らしい。

出典:Thales

FREYJA計画のコアとなるFP-7.x開発も防衛スタートアップのFIRE POINTで、Bliksem EXO開発計画を主導してEKVを開発するもの防衛スタートアップのデスティナスで、さらに付け加えるならデスティナスは反プーチンのロシア人=ミハイル・ココリッチがスイスで立ち上げた企業で、元々は水素動力の極超音速旅客機を開発する企業としてスタートしたものの、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発すると防衛分野(迎撃ドローンや低コスト巡航ミサイルなど)に進出し、2024年にロシア国籍を捨ててスイス国籍を取得、さらに武器輸出規制が厳しいスイスからオランダに本社を移して防衛分野での存在感を高めている。

特にドイツのラインメタルとは低コスト巡航ミサイルのKryla(クリラ)やRuta(ルタ)シリーズを大量生産する合弁企業=Rheinmetall Destinus Strike Systemsを4月に立ち上げ、既にドイツ国内でKrylaの初期生産が始まっており、2027年末までに射程800kmのRuta Block2、2028年末までに射程2,000km以上のRuta Block3の資格取得(各種試験とNATO基準準拠への証明=航空機の型式証明取得のようなもの)を終えることが目標で、最優先はRuta Block3の実用化だ。

出典:Destinus

デスティナスの迎撃ドローン=Hornet(ホーネット)もスペイン軍やフィンランド軍がテストしており、Shield AIとの提携でHivemind AIも統合され、現在開発中のHornet Block2にはオランダ企業=TNOと共同開発する新型シーカーが採用され、ディール・ディフェンスと協力して地上配備型IRIS-Tの追加能力にHornet Block2を統合する作業が進行中で、オランダのイェッテン首相も「Bliksem EXO開発計画はオランダのデスティナスが主導する」と述べるほどココリッチ氏が率いるデスティナスは欧州で信頼を獲得している。

ちなみにフランスのHarmattan AI、オランダのDestinus、ドイツのHelsing、Quantum Systems、STARK、ウクライナのFire Pointは欧州防衛スタートアップの中でも飛び抜けた成功を収めており、特にHarmattan AIは2026年1月に2億ドルの資金調達(シリーズB)に成功して企業価値は14億ドル=約2,200億円に跳ね上がり、Helsingも7月に欧州防衛スタートアップ史上最高額となる18億ドルの資金調達(シリーズE)に成功して企業価値も130億ドルから180億ドル=約2.7兆円に急上昇し、今後の防衛関連ニュースで上記企業の名前を何度も見かけることになるだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Destinus

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