皇帝が通ったコロッセオの秘密のトンネル、今月一般公開へ ローマ

ローマのコロッセオの下には、皇帝が群衆に紛れず席に向かうための通路が作られていた/Simona Murrone/Archaeological Park of the Colosseum

(CNN) ローマ皇帝が人目につかずコロッセオに入り込むために使用した2000年前のトンネルが、今月一般公開される。皇帝のために作られた隠れた通路を見られる稀有(けう)な機会を提供する。

「コモドゥスの通路」として知られるこの約55メートルの通路は、皇帝や要人が群衆に紛れることなく皇帝らの専用席へ到達できるよう、コロッセオの下に建設された。

この通路の名は、西暦177年から192年まで帝国を統治した冷酷な皇帝コモドゥスに由来する。彼はこの地下通路で暗殺未遂に遭った人物でもある。

映画ファンには「グラディエーター」でホアキン・フェニックスが演じた陰謀家の皇帝コモドゥスとして記憶されているだろう。父マルクス・アウレリウスを殺害し、闘技場でラッセル・クロウ演じるマキシマスと対峙(たいじ)した人物だ。

史実では、コモドゥスの虚栄心はさらに過激だった。コロッセオ考古学公園によれば、彼はヘラクレスの装束で剣闘士の試合に参戦し、衰弱した戦士や動物さえも殺害した。ある時は観衆の歓声の中、ダチョウの首を斬り落としたという。

通路内部の壁には、装飾が施されていたことが分かる/Simona Murrone/Archaeological Park of the Colosseum

この隠し通路は1810年から14年にかけて、建築家カルロ・ルカンジェリ率いるフランス人発掘隊によって初めて発見された。その後74年に再発掘され、1990年代に改めて調査が行われた。2020年から21年にかけての遺跡全体の修復工事中、考古学者たちはトンネルの完全な測量図を作成し、新たな保存段階に入っていた。

最近の修復作業では、何世紀にもわたる埃(ほこり)や汚れを除去し、レーザー工具を用いて脆(もろ)くなった漆喰(しっくい)を再接着。その結果、大理石が覆う壁面に風景や神話的な場面——酒と宴の神ディオニュソスの物語を含む——が刻まれていることが明らかになった。入口付近には、猪(いのしし)狩りや熊との闘い、曲芸師の彫刻が施され、かつて競技場を埋め尽くした光景を偲(しの)ばせる。

「この通路が一般公開されれば、訪問者は皇帝の立場を実感できるだろう」。修復作業を指揮した考古学者バーバラ・ナッザロ氏はそう語った。

「コモドゥスの通路」というトンネルの名称は、紀元2世紀後期にローマ帝国を統治した冷酷な皇帝コモドゥスにちなむ/Simona Murrone/Archaeological Park of the Colosseum

イタリア博物館総局のマッシモ・オザンナ局長は、トンネルを改めて一般公開することについて、研究と保存を融合させた「重要な節目」と評する。触地図や映像による復元などの新たな取り組みにより、この遺跡を「あらゆる観客にとって真にアクセス可能で包括的な場所」とすることを目指している。

コロッセオの当初の建設から1~2世紀後に追加されたこのアーチ型の通路は、東西方向に2本、南北方向に1本の計3本の分岐路で構成されている。

修復工事には、長年封鎖されていた天窓から日光を再度取り入れる仕組みや、訪問者が考古学者の作業を見学できるガラスパネルの設置などを盛り込む。来年実施予定の新規発掘調査ではトンネルの経路を追跡する計画で、剣闘士の兵舎へと続く道筋が明らかになる可能性がある。

本プロジェクトはコロッセオ考古学公園とイタリアの「再興・回復のための国家計画(PNRR)」が資金を提供している。

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