急性心不全患者における残存肺高血圧の意義を検証それは左室駆出率よりも大事な指標か?|慶應サイエンス|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト
心不全患者の増加、そして急性増悪による入院や再入院は深刻な医療課題です。予後の評価には従来、左室駆出率(LVEF)が用いられてきましたが、慢性期に肺高血圧(PH)を伴う患者は呼吸苦が続き、予後が悪いことが知られています。しかし急性増悪(ADHF)入院時に残るPHの意義や、その後の経過との関連は明らかではありませんでした。本研究では、多施設共同前向きコホート(WET-HF Registry)を用い、生存退院時のPH有無と退院後の予後をLVEF別に解析しました。その結果、PH合併例はLVEFにかかわらず予後不良であり、LVEFのみでは説明できないリスク因子であることが判明しました。さらにBNP改善率はPH非合併群でのみ予後と関連し、PH群ではうっ血の遷延が示唆されました。本研究は、長年にわたり多様な心不全患者のデータ登録を続けたWETレジストリ関連施設の方々尽力により可能となりました。この場をお借りして感謝申し上げます。
(東京慈恵会医科大学 田中寿一、循環器内科学教室 白石泰之 87相当、香坂 俊 76回)
Residual pulmonary hypertension and clinical outcomes in acute decompensated heart failure patients stratified by left ventricular ejection fraction
European Journal of Heart Failure
2025 Jul 4. doi: 10.1002/ejhf.3755.
Toshikazu D Tanaka, Yasuyuki Shiraishi, Ryeonshi Kang, Takashi Kohno, Satoshi Shoji, Toraaki Okuyama, Yuhei Oi, Ayumi Goda, Ryo Nakamaru, Yuji Nagatomo, Mitsunobu Kitamura, Munehisa Sakamoto, Michiru Nomoto, Atsushi Mizuno, Tomohisa Nagoshi, Shun Kohsaka, Tsutomu Yoshikawa
左から田中寿一(筆頭著者;東京慈恵会医科大学)、白石泰之(第二著者;循環器内科)
(2025/09/09 12:32)