激化するドローン戦争 歯止めの議論が急がれる
無人航空機(ドローン)が戦場を席巻している。大量殺傷を可能にする新興兵器だ。人道的な問題はないのか、議論が急がれる。
ウクライナ軍は6月、ロシアの空軍基地4カ所をドローンで攻撃し、爆撃機を破壊した。一部は極東近くまで到達した。ロシア軍は今月、800機を超える過去最大のドローン攻撃をウクライナに仕掛け、政府庁舎を損壊させた。
Advertisement先週には、ポーランド領空に侵入したロシア軍のドローンを北大西洋条約機構(NATO)加盟国の軍が撃墜する事態に発展した。
兵士や戦車をピンポイントで爆撃できる小型ドローンが戦場の主力になっている。イスラエルもイスラム組織ハマスやイランとの戦闘に投入している。
多用される理由は、費用対効果の高さにある。1機数万円程度の製造費で1両数億円の戦車を損壊させることが可能だ。
米シンクタンクによると、ウクライナは今年、400万機超の生産を見込んでいる。ロシアも対抗し、増産競争が激しさを増す。
被害も拡大している。ドローン攻撃による両国の死傷者数は、全体の最大8割を占めるという。
ドローン戦力が国家の防衛力の優劣を左右する時代といえよう。日本も「自爆型」の攻撃用無人機を導入する方針という。
だが、懸念も多い。
まず、市民が巻き添えになっていることだ。国連は、ロシア軍のドローン攻撃でウクライナでの犠牲者が急増していると警告した。
誤爆も頻繁に起きている。イスラエル軍が食料支援団体の車両や子どもが集まる給水所を攻撃し、国際的な非難を浴びた。
ドローン兵器の特性は、遠隔で操作するため、自軍の兵士の命を脅かすことなく敵軍に多大な損害を与えられる点にある。
攻撃のハードルが下がり、抑制が利かなくなる恐れがある。兵士と民間人の識別を人工知能(AI)が誤認するリスクも指摘される。問題点の洗い出しが急務だ。
無原則な使用は国際法に抵触しかねない。実態を踏まえた議論を国連の場で進める必要がある。
不特定多数が犠牲になるクラスター爆弾は、被害の実態把握が禁止の議論につながった。ドローンも同様の問題意識が欠かせない。