アップル発表イベント、交錯する期待と懸念-株価高値圏で売り誘発も
米アップルの株価をさらに押し上げる要因として、投資家の関心は9日に予定される製品発表イベントに集まっている。ただ、市場の期待は空振りに終わる公算が大きい。
アップル株は8月、月間ベースでは昨年5月以来の大幅高を記録。さらに先週には、グーグルをめぐって司法省が起こした反トラスト法(独占禁止法)訴訟で裁判所で下した判断が追い風となり、週間ベースで3.3%上昇した。アップルはグーグルの検索エンジンを自社端末でデフォルトに設定する見返りに年間200億ドル(約3兆円)受け取っているが、今回の判断でその枠組みが今後も維持されることになった。
こうした中、9日の発表イベントで目新しいサプライズがない限り、アップル株の上昇余地は限られるとの見方が強い。7月末以降に時価総額が4500億ドル余り膨らんだ後でもあり、とりわけ人工知能(AI)戦略を巡る不透明感が株価の重しとなりそうだ。
プライム・キャピタルのポートフォリオマネジャー、クレイトン・アリソン氏は「今回の上昇局面の後では、発表会を前にアップル株に新たに投資したり、持ち株を増やしたりすることは推奨しにくい。買い意欲をかき立てるような機能が披露される見込みは低いからだ」と指摘。「AI分野でつまずきが続けば、むしろアップル株には懸念がある」と語った。
アップルは今回のイベントで「iPhone 17」シリーズを発表する見通しで、その中には従来より薄型のモデルも含まれると報じられている。「Apple Watch」や「Vision Pro」の改良版も披露されるとみられる。ただ最大の焦点は、今回の製品アップデートが同社の成長を押し上げる原動力となるかどうかだ。高度なAI機能が欠けている現状では、この課題の重要性が一段と高まっている。
株価に割高感
アップルの4-6月(第3四半期)の売上高は10%増と、四半期ベースで約3年ぶりの高い伸び率を示した。しかし、続く2四半期は減速が見込まれている。また相対的に割安な水準で取引されているアルファベットやメタ・プラットフォームズと比べると、アップル株の割高感は否めない。
アップル株は足元、今後12カ月の予想利益の約31倍という水準で取引されており、S&P500構成銘柄の時価総額上位6社(エヌビディアやマイクロソフトを含む)の中で2番目に割高な銘柄となっている。株価は2月以来の高値圏にあり、これまでと同様、製品発表イベントが投資家にとって利益確定のきっかけとなる可能性がある。
もっとも、目立った新機能がなくても、ウォール街の一部ではアップルが成長押し上げの手段として値上げに踏み切るとの見方もある。同社が長らく実施していない策だ。
エリック・ウッドリング氏率いるモルガン・スタンレーのアナリストチームは、アップルの値上げ機会は「同社の成長材料として過小評価されている」と4日付のリポートで指摘。「成長見通しに関する市場の慎重なコンセンサスを踏まえれば、今回のイベントは久しぶりに株価の押し上げ材料となり得る」と記した。
原題:Apple’s $450 Billion Rally Faces Scrutiny of Product Unveiling(抜粋)