豪邸に住んでも寂しいだけの「単身リスク」が待ち受ける…社会学者「老後15年延長時代に本当に必要な資産」(プレジデントオンライン)

長生きするリスクとは何か。『単身リスク 「100年人生」をどう生きるか』(朝日新書)を出した社会学者の山田昌弘さんは「若い青春が15年延びるならいいが、老後が15年延びるとなれば、リスクも当然増えていく」という――。 共著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』で「人生100年時代」を広めた教授 ■令和版「100年人生ゲーム」の教え  皆さんは、子どもの頃、「人生ゲーム」で盛り上がった経験はおありだろうか。  「人生ゲーム」は、プレイヤーが人生を疑似体験する定番ファミリー・ボードゲームだ。アメリカで生まれ、日本では1968年に玩具メーカーの老舗、タカラ(現・タカラトミー)から発売された。  人生は一度きり。前世の記憶があるならいざ知らず、大抵の人は、まっさらな人生を歩んでいく。パイロットにもなりたいし、キャビンアテンダントにもなりたいし、宇宙飛行士にもなりたいし、お嫁さんにもなりたい……。たくさんの夢を抱きつつも、選べる人生は一つだけ。そんなことは百も承知だからこそ、「人生ゲーム」は面白い。現世では叶いそうもないライフコース、例えば「大金持ちになって人生の勝者!」になる夢をゲームでくらい楽しみたい。人生でとびっきりの大富豪になるか、はたまた人生のどん底に落ちるか。そのハラハラ感が、このゲームを息の長いものとしている。  ところがこの「人生ゲーム」、令和になってだいぶ様相が変わってきたといううわさを聞きつけた。その名も「100年人生ゲーム」なるものが販売されているという。調べてみると、「人生ゲーム」(2023年4月発売版)があれば、別に「100年人生ゲーム」を追加購入して遊べるという。さっそく、購入してみた。  なにより私の興味をそそったのは、この「100年人生ゲーム」は、博報堂のシンクタンク「100年生活者研究所」との共同研究で開発されたということ。かなり本気のボードゲームとみた。さらに従来版「人生ゲーム」が、「なるべく早く、できるだけ多くお金を稼ぐ」のが主眼だったのに対し、令和版「人生ゲーム」の「100年人生ゲーム」では、「ゆっくり、自分らしく幸せになる」が、人生の目的とされている点だ。 ■20歳時点で自分の価値観を選ぶルール  人生の目的は、本来人それぞれ違う。だから新しい人生ゲームでは、プレイヤーは20歳になった時点(つまり、20歳の誕生日のマスに到達した時点)で、自分の「価値観」を「健康マニア」や「家族想い」など14種類の中から選び取る。健康・趣味・ファッション・人間関係などの価値観をベースに、その後の「人生」は進んでいく。ゲーム内では選んだ価値観によって、その後の人生の特典も変わってくるというのが興味深い。  従来の人生ゲームでは、「自家発電で電気が売れた/3万ドルもらう」などお金を貯めるのが目的だが、このゲームで集めるのは「お金」ではない。ゲットして貯めていくのは、「ウェルビーイング・ポイント(通称ウェルポ)」。つまり、「いかに自分らしく、日々を幸福に暮らしながら100歳に達するか」がゲームの考え方になっており、「初任給で家族にハンバーグをご馳走、4000ウェルポ得る」など、通常のゲームではお金を失うイベントが逆に高得点につながるものになっている。  ゲーム内に登場するエピソードの数々は、1万人以上の生活者から集めた実際の体験談に基づいているというのも面白い。机上の空論ではなく、現実に起こりうる出来事の数々がゲーム内に投影され、参加者にリアリティを感じさせているのだ。  たかがゲーム、されどゲーム。ボードは人生の縮図でもある。「もしかしたら将来、自分の身に起きるかもしれないこと」を疑似体験しながら、来たるべき「人生100年時代」に備えよう。そんなゲームが売れているという現象自体、家族社会学をライフワークにしてきた私にとっては、なにより興味深いことなのだ。

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