本川越駅直結「西武本川越ペペ」閉店へ、再開発で川越3駅はどう変わる?《楽待新聞》(不動産投資の楽待)

7/21 19:00 配信

西武新宿線の終着駅である本川越駅。同駅のシンボルだった商業施設「西武本川越ペペ」が2026年1月で営業を終了することになった。閉店後の展開が注目されている。西武本川越ペペは1991年開業で地上5階建て。無印良品、ABCマートなど55店舗があり、生活密着型の施設である。運営会社によると、隣接する川越プリンスホテルは営業を継続するが、西武本川越ペペの閉店後の動きは未定で、「沿線価値の向上とともに不動産価値の向上を図る」としている。また、今回の決定は老朽化が閉店の原因ではないとの発表もされたものの、一部では解体する方向との報道もある。本川越周辺には東武線・JR線の川越駅、東武線の川越市駅があり、一帯は3駅が集中するエリアだ。利用者数は川越駅がダントツで、近年ではタワマンも建設された。駅周辺では現在再開発事業が進んでいるが、駅周辺の魅力を高める可能性はあるだろうか。川越を訪れ、3つの駅周辺の現状を調べてみた。■輸送力は東武鉄道がダントツ川越市は人口35万人以上を擁する。埼玉県から2024年に公表されたデータをみると、県内の人口はさいたま市、川口市に次ぐ3位となっている。川越市の中心地には川越駅、本川越駅、川越市駅の3駅が集中しており、その位置関係は「川越駅」の北、約1キロメートルの場所に「本川越駅」が、そのおよそ600メートル西に「川越市駅」がある。本川越駅は、西武新宿駅を起点とする西武新宿線の終着駅。川越駅はJR川越線や、池袋駅を起点とする東武東上線の停車駅だ。川越市駅も東武東上線の停車駅で、川越駅の隣駅である。各駅における2024年度の1日平均乗降人員はそれぞれ下記の通りだ。川越駅(東武鉄道):約11万7000人川越駅(JR):約3万5000人 ※2023年度の1日平均乗車人員本川越駅(西武鉄道):約4万9000人川越市駅(東武鉄道):約4万4000人川越駅において東武鉄道の乗降客数が多いのは、利便性に優れるためであろう。川越―池袋間の所要時間は東武東上線の急行で30分強。JRで池袋に向かう場合は、一度、西方の大宮に向かってから南下するため、同区間の所要時間は50分以上かかる。また、JR川越線はほぼ単線区間で、1時間に3、4本しかないのもネックである。西武新宿線も狭山市や所沢市を迂回するため、所要時間では東武線に劣るかもしれない。急行を利用する場合、本川越から高田馬場・西武新宿まで約1時間だ。ネット上の経路検索ツールで「本川越―池袋or新宿」のルートを検索すると、川越市駅まで歩いて東武東上線を利用するルートが優先的に表示される場合もある。■川越駅前にはタワーマンションも乗降客数が多いことからか、3駅の中では川越駅周辺が栄えてきた。駅東口にはアトレなどの商業施設があり、中層の雑居ビルが並ぶ。駅西口ではペデストリアンデッキが整備、2020年には川越東武ホテルが東口から西口へと場所を変えリニューアルした。2023年には駅前に地上25階建て・173戸のタワーマンション「ザ・パークハウス川越タワー」が竣工した。東口側より比較的閑散としていた西口側も、近年の再開発により街の雰囲気が変化している。なお、商業的に栄えているのは、川越駅から本川越駅方面に向かう商店街「クレアモール」沿いだ。クレアモールは約1キロメートルに及ぶ商店街で、午後の時間帯は歩行者天国となる。店舗や飲食店のほか、漫画喫茶などのサービス施設も立ち並ぶ。商店街と聞くと高齢者向けの店舗を思い浮かべる人もいるだろうが、クレアモールには若者向けの店舗も多い。ドン・キホーテや丸広百貨店などの大型施設もある。丸広百貨店は、埼玉県地盤の百貨店で、本店の川越店のほか、飯能や入間などにも店舗を構える。本川越駅周辺は前述の西武本川越ペペ、クレアモール以外に目立つ商業施設はない。同駅の西口は戸建住宅や低層のアパートが広がる住宅街であり、川越市駅周辺も同様に住宅街だ。なお、「時の鐘」で知られる蔵造りの町並みは本川越駅から北約1キロメートルの一帯で、インバウンド客も数多く見かけた。■中古のマンションの相場は4000万円後半川越3駅の不動産状況を見てみよう。川越駅西口から徒歩2分の区画では「ザ・パークハウス 川越フロント」が建設中だ。2027年1月の竣工を予定している。19階建て・192戸で、物件概要によると、67.48~80.62平米、3LDKが6768万~8358万円で売り出されている。本川越周辺には、駅から4分の場所に2024年2月に竣工した「ブランズ川越新富町」がある。本物件は、完成後に販売が開始され、現在も68.2平米、3LDKの1戸が、5990万円で売りに出ている。中古相場をみてみると、前出のタワマン「ザ・パークハウス川越タワー」の価格は堅調だ。新築時で3LDK、約75平米の部屋が7000万円前後で売れていたのに対し、中古物件は現在8480万~8900万円で売り出されている。なお、川越駅を起点に「徒歩15分以内・築20年以内・3LDK」の条件で探すと、中古マンションは4000万円台後半が相場である。新築の戸建ては、川越3駅の徒歩圏内でも4000万円台で購入できる。また、賃貸物件は駅から徒歩10分、築年数10年以内で探すと、概ね1Kで6万~7万円台、1LDKで9万~10万円台、2LDKで12万~13万円が相場だ。◇都内と同様、川越3駅周辺の不動産価格は2010年代後半から上昇してきた。池袋や新宿へのアクセスは良く、利便性に優れる。現在でも新築マンションの供給があり、都内よりもかなり安いため需要は根強い。川越市の人口は2028年頃にピークを迎え、36万人を超えずに減少に転じる見込みだが、3駅周辺の活況はしばらく続きそうだ。インバウンドも増え、観光客数もコロナ禍以前の水準に戻っている。こういった状況から、閉店する西武本川越ペペは、従来の生活密着型施設から行楽客向けの施設に変わる可能性もあるように思う。川越3駅の変化を今後も追っていきたい。

山口伸/楽待新聞編集部

不動産投資の楽待

最終更新:7/21(月) 19:00

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