障害者雇用で好循環、オープンハウスの推進力に 7月1日~法定雇用率2・7%に引き上げ
民間企業の障害者法定雇用率が7月1日、2・5%から2・7%に引き上げられる。障害者雇用を巡っては、受け入れ態勢の充実や雇用率達成に苦労する企業がある一方、雇用事業を企業グループ全体の推進力にしてきた企業もある。行政機関などから多くの賞を受け、障害者雇用のモデルケースになってきたオープンハウスグループ(東京都千代田区)の現場を訪ね、体制構築までの経緯や乗り越えてきた課題について、マネジメント担当者に聞いた。
年20人以上を採用
「こんにちは!」「こんにちは!」。
広いオフィスフロアのあちこちで客を迎える声が響く。オープンハウスグループが設置している障害者の雇用に特化した特例子会社「オープンハウス・オペレーションズ」の横浜事務所(横浜市)。たくさんの従業員が、間仕切りのない見通しの良いフロアで、パソコンに向かって作業している。いずれも精神や身体になんらかの障害を持つという。おのおのが仕事に集中し、充実したオフィスワークをこなしているように感じられる。
「雇用率は3%を超えており、引き上げにはもともと対応できている状態です」。同事務所で障害を持つ従業員らをマネジメントする取締役の市川友和さん(50)は、こう語る。グループ本体のM&A(企業の合併・買収)などによる社員数の急増にも対応できるよう、雇用率にゆとりを持たせてきたのだという。数年にわたり年20人以上のペースで新規雇用を続けている。
「グループ全体に貢献したい」とオープンハウス・オペレーションズ取締役の市川友和さんは意気込む不動産事業を展開し、全国に約6500人の従業員を持つオープンハウスグループ。障害者雇用は、2021年まで障害者雇用ビジネス事業者に外部委託していた。企業規模の拡大に伴う働き方改革と企業価値向上の一環で、22年に自社化した。当初はグループ内の1部門として50人程度を雇用していた。24年に特例子会社化し、現在は東京都八王子市と千葉県柏市にも横浜市と同様の事務所を置き、3カ所で計約140人の従業員がいる。うち障害者は約130人。グループ全体では約160人の障害者が在籍している。25年6月時点の障害者雇用率は3・06%となっている。
横浜事務所では、約70人の従業員のうち、障害がない4人の従業員を除き、精神か身体などになんらかの障害を持つ。障害区分による内訳は精神・発達障害者が約76%、身体障害者が約22%、知的障害者が約2%。精神・発達障害者は、うつ症状などを後天的に発症した人や、働きづらさを感じる中で、医師の診断を受けて初めて発達障害だと知った人なども多く含まれるという。
グループリーダー起用も
「目指すのは、障害者らの働き甲斐の創出や就業環境の充実です」。市川さんは、こう話す。特例子会社が担う業務は、本体であるオープンハウスグループ全体の業務の一部分。不動産に関する図面の作成やデータ入力、契約書のスキャンによる電子化、社内の経費精算業務、反社会的勢力チェックなど、計150種類の業務を本体から請け負っている。
障害者が働きやすい環境づくりが進められているオープンハウス・オペレーションズのオフィスそんな中、障害者が生き生きと働ける環境構築のために工夫しているのが、モチベーション維持につなげる雇用形態だという。実績や在籍年数に応じ、障害者をマネジャーやグループリーダーなどの役職に登用している。「通常、こうした指導や統括をする立場には健常者を置くという組織が多いが、それでは障害者らのモチベーションが上がりません」と市川さん。「頑張ればそれに見合った立場が用意されているということが目標となり、職場に活力も生まれている」と効果を解説した。
定着率の上昇も生んでいる。障害者雇用の現場は、定着率の低さが課題とされる。高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)によると、就職後1年時点の定着率は、発達障害者、知的障害者、身体障害者が7割台、精神障害者が6割台半ば。同社では9割以上を達成しているという。
体調管理に注意
一方、精神・発達障害者の比率が多い職場ならでは難しさもあるという。市川さんがマネジメント上、特に気を使っているのは、体調やメンタルの管理。天候や気圧、家庭での家族関係などの原因によって情緒が不安定となるケースは少なくない。運営は「常時7~8人の休職を想定している」という。また、業務内容の「合う、合わない」や、対人関係の不和なども気を使う。定期的な面談を行い、心理的な困難を抱えていればすぐにサポートに入るなどの対応を取っている。
横浜事務所では、テナント入居の際に、ドアーを開閉しやすい左右開きにしたり、車椅子の人も使いやすい背丈の低いコピー機や、押しボタンを下方に集中させた自動販売機などを設置したりなど、物理的な環境も整えてきた。
オープンハウス・オペレーションズが整えた障害者が働きやすい環境にするための設備の一例。(左上から時計回りに)開閉に配慮したドアー、拡大読書器、背丈の低い複合機、ボタンが下方に集中している自動販売機(同社提供)こうした物心両面での体制整備で、同社は東京都の「障害者雇用エクセレントカンパニー賞」(令和6年度)を受賞。千葉県や横浜市などからも認定や事例紹介を受け、障害者雇用のモデルケースとしての地位を確立した。東京労働局から「障害者雇用相談援助事業者認定」も受けており、ほかの企業から障害者雇用に関する相談を受けた際に、アドバイスできる窓口も設けている。
市川さんは「(本社から)たくさん感謝されることが社員らのやる気につながっている。障害者による事業が業績アップと企業のイメージアップの両面で寄与し、グループの推進力になっていく、そんな好循環をさらに広げていきたい」と意気込んでいる。