大会2勝のランガー「やめる時がきた」 67歳が最後のマスターズへ
◇メジャー初戦◇マスターズ 事前(7日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7555yd(パー72)
1985、93年大会覇者で終身の出場資格を持つ67歳のベルンハルト・ランガー(ドイツ)が、キャリア最後の「マスターズ」を迎える。
本来は昨年大会で退く考えだったが、開催を前にアキレス腱を断裂したことで出場を断念。万全な状態に戻して2年ぶりにオーガスタへ帰ってきた。1982年に初出場してから41回目のマスターズ。開幕3日前の月曜日、公式会見で胸中を明かした。
長きにわたり挑み続けてきたオーガスタでの戦い。終止符を打つときが近づき、やはり言葉が震える。「非常に感情的になる。数年前、クラブのチェアマンに『年齢制限はありますか? 60歳になったら引退ですか?』と聞いたら、『あなた次第』と言われた。その“やめる”時が来たということ。このコースではもう競争力がない」と苦渋の決断に至った。
2008年からチャンピオンズツアー(米シニアツアー)を主戦場にしながら、マスターズに出場してきた。シニアは総距離7000ydを切るコースも少なくない中で、延長を繰り返してきた現在のオーガスタは7555yd。積み重ねてきた経験値も武器にしてきたが、パワーヒッターがそろう若手選手らに対抗するのは「この距離では無理」と話す。
「コースはどんどん長くなるけど、私の飛距離はどんどん短くなる。若い選手らが8番、9番アイアン、もしかしたらウェッジで打っているところを私はハイブリッドで打つ。もう優勝争いには絡めない」
世界で戦うドイツ勢の先駆者として、長く母国のゴルフ界をけん引してきた。ドイツ勢として初めてマスターズに出場し、86年に始まった世界ランキングで初代1位に立った。DPワールドツアー(欧州ツアー)では通算42勝をマーク。「ゴルフが全く盛んではない、人口800人の村で生まれた若者がここまでたどり着き、マスターズの招待状を受け取った。ヨーロッパや海外選手が招待されることは困難な当時、3回目の出場で優勝できた時はまさに“夢が実現”した瞬間。本当に信じられないような旅路だった」と振り返る。
オーガスタでのお気に入りは、11番から13番の通称“アーメンコーナー”だという。とくに13番(パー5)は、初優勝の85年は3日目に、2勝目の93年は最終日にイーグルを奪ってタイトルを手繰り寄せた思い出のホールだ。
「間違いなく最終ホールでは『これが最後なのだ』と実感すると思う。18番までうまく自分をコントロールできることを望むけれど、保証はない」と“ラストラン”へ思いを寄せた。(ジョージア州オーガスタ/石井操)