南アフリカ前大統領の娘、国民を欺いてロシア軍に送り込んだ疑い 親族から告発
告発されたズマ前大統領の娘、ドゥドゥジレ・ズマ・サンブドラ氏=11月28日/Rajesh Jantilal/AFP/Getty Images
(CNN) 南アフリカのズマ前大統領(83)の長女はこのほど、異母妹が男性17人を欺いてウクライナに送り、ロシア側で戦闘に従事させたと告発した。17人のうち半数は親族とされ、家族関係がきしむ可能性もある。
今回の騒動は、ロシア人新兵の不足でアフリカ人のロシア軍への勧誘が増えていること、ロシア政府とアフリカ民族会議(ANC)出身者の間に緊密なつながりがあることを浮き彫りにするものだ。ANCは南アフリカの民主化を求めて戦った解放運動に起源を持ち、かつてはズマ氏も所属していた。
ズマ氏は相次ぐ汚職疑惑を受けて2018年に大統領辞任に追い込まれ、24年にはかつて率いたANCから除名された。黒人と白人を人種隔離していた制度「アパルトヘイト」の時代に、ソ連で軍事訓練を受けた経験を持つ。
ズマ・サンブドラ氏とは誰か、何を告発されているのか?
ドゥドゥジレ・ズマ・サンブドラ氏(43)は20人近くいるズマ氏の子どもの1人。ロシアのプーチン大統領の強力な支持者で、SNSで称賛の念を表したこともある。
ズマ・サンブドラ氏は父が率いる政党「民族の槍(MK)」の議員を務めていたが、異母姉から刑事告発され先週、議員辞職した。
今回の告発に先立ち、南アフリカ政府は、国民17人が戦争で荒廃したウクライナ・ドンバス地域に取り残された経緯について調査を始めていた。男性らが苦境を訴えて帰国を求めたことをきっかけに、政府が男性たちの窮状に気付いた。
当局は先月、男性たちは「高収入の求人契約という名目で、ウクライナとロシアの戦争に参加する傭兵(ようへい)部隊に誘い込まれた」と明らかしていた。
異母姉はズマ・サンブドラ氏や他の2人の行動が男性たちの苦境を招いたと主張している。ズマ・サンブドラ氏はこれまでのところ公に反論していない。
南アフリカ法では、政府の許可なく外国の軍隊に参加することは違法とされる。
ズマ・サンブドラ氏は、南アフリカ国民をロシア・ウクライナ戦争に参加する傭兵として勧誘する意図はなかったと説明している。
地元紙で報じられた宣誓供述書の中で、ズマ・サンブドラ氏はメッセージアプリ「ワッツアップ」で連絡を取ってきた人物にだまされたと言及。この人物はロシア在住の南アフリカ国民を自称しており、戦闘を伴わない「合法的な準軍事訓練プログラム」と関係があると主張したという。
地元紙によると、ズマ・サンブドラ氏は自身もロシアでの1カ月の訓練に登録、参加したものの、戦闘には一切関与しなかったと明かした。その後、親族を含む22人に同じプログラムへの登録を勧め、当初渡航した22人のうち、現在17人がロシア軍の一員としてドネツク州北部にいるとされる。