腸を健康に保つ秘訣、意外と簡単な食事のポイントは、最新研究

最新の研究によれば、ビーガン、ベジタリアン、雑食にかかわらず、腸内微生物叢のバランスを保つには、さまざまな植物性食品を食べることが最も効果的だという。(PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

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 腸内環境を改善する秘訣の一つは、あなたが考えているよりシンプルかもしれない。さまざまな植物性食品を食べると、腸内微生物叢(そう)(マイクロバイオーム)に多様な善玉菌がすみ着きやすくなることが、学術誌「Nature Microbiology」に2025年1月6日付けで発表された大規模な研究で示された。また、肉は悪玉菌と関連付けられているが、肉をたまに食べる場合も、さまざまな植物性食品を食べれば腸内環境を改善できる。

 この研究では、米国、英国、イタリアの2万1000人以上が、日常的に食べているものに関する詳細なアンケートにアプリで回答した。被験者の食事は雑食(肉、乳製品、植物を食べる)、ベジタリアン(肉は食べない)、ビーガン(動物性の食品は食べない)に分類された。

 研究チームは被験者の便サンプルをDNA技術で分析し、腸内微生物叢で繁殖している細菌の種類を特定したと、研究に参加したイタリア、トレント大学CIBIO(細胞・コンピューター・統合生物)学部の教授兼主任研究員ニコラ・セガタ氏は述べている。

 この研究では、果物、野菜、全粒穀物といった植物性ホールフードを多く食べると、血圧やコレステロール値の正常化、炎症の抑制などと関連付けられている善玉菌が増えることがわかった。特にビーガンの腸内微生物叢は善玉菌が豊富にみられた。

 一方、雑食の被験者、特に赤肉(ウシ、ブタ、ヒツジなどの肉)を食べる人の腸内微生物叢には、炎症性腸疾患(IBD)や大腸がんのリスク上昇と関連するものを含め、より多くの悪玉菌が存在した。(参考記事:「若い世代で大腸がんが増加、見逃してはいけない兆候とは、研究」

細菌、ウイルス、真菌、寄生虫など、腸管に生息する生物群集のイラスト。腸内微生物叢または腸内フローラとして知られるこれらの微生物は消化、免疫系、さらには気分にまで影響を与える。(ILLUSTRATION BY NOBEASTSOFIERCE, SCIENCE PHOTO LIBRARY)

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 ただし、朗報がある。肉とともにさまざまな植物性食品を食べていた人は、ビーガンやベジタリアンと同じように、腸内に多くの善玉菌がいた。

 つまり、植物をより多く食べることで善玉菌が増え、赤肉や加工肉の摂取と関連付けられている悪玉菌の影響を打ち消したり、抑えたりする可能性もあると、米フロリダ州立大学健康栄養食品科学科の助教で腸内細菌叢研究室を主宰するラビンダー・ナグパル氏は述べる。氏は今回の研究には参加していない。(参考記事:「牛や豚などの赤肉、週2食でも2型糖尿病のリスク上昇、研究」

 これが病気の予防にどれくらい役立つかを判断するのはまだ早い。今ある研究結果は確かに有望だが、植物を食べることで増える善玉菌が赤肉に関連する悪玉菌を打ち消すと言い切るには、より広範なデータが必要だと専門家は考えている。

 また、腸内微生物叢は健康状態の一面にすぎない。そのため、この微生物の集団が健康全般に与える影響をより深く理解するには、やはりさらなる研究が必要だ。

 ただし、1つだけはっきりしていることがある。「腸内微生物叢を良好に保つことは重要です」とセガタ氏は断言する。そして、植物をたくさん食べることは、腸内微生物叢をより良い方向に変えるための自然な方法だ。(参考記事:「「炭水化物と脂肪を減らす、タンパク質を増やす」は健康的なのか」

何を食べるかが腸内環境を左右する

 腸内細菌叢を庭に例えると、そこには何兆もの異なる花(微生物)があり、それぞれに肥料(食べ物)の好みがある。特定の肥料が特定の花をたくさん咲かせるように、あなたが何を食べるかは、あなたの腸にどのような微生物が定着するかを左右するとナグパル氏は説明する。

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