トランプ政治の大粛清が始まるか 中間選挙大勝の民主党議員が警告「弁護士を雇っておけ」 疑惑関係者を議会に召喚へ
FNNプライムオンライン
「Lawyer up.(弁護士を雇っておけ)」 わずか2語の声明だった。11月3日のアメリカ中間選挙で民主党が上下両院の多数派を奪還した直後、下院監視・政府改革委員会の委員長に就任する予定のロバート・ガルシア下院議員が発した言葉である。
【画像】「Subpoenas(召喚状)」という一語を発した上院議員
「Lawyer up」とは、捜査や訴追に備えて弁護士をつけろという意味で、トランプ大統領とその周辺に対する警告と受け取れる。ガルシア氏はすでに、トランプ一族の腐敗疑惑、企業との癒着、移民・税関捜査局(ICE)による権限乱用、エプスタイン関連文書の隠蔽疑惑などを徹底追及する方針を表明している。今回の中間選挙で民主党が議会の多数派を取り戻したことで、トランプ政権を取り巻く政治環境は一変する。◆疑惑の関係者を召喚可能にこれまで共和党が握っていた議会の委員長ポストが民主党に移り、政権関係者の召喚や証言、文書提出を要求する権限を行使できるようになるからだ。正当な理由なく召喚に応じなければ、議会侮辱の手続きや司法措置に発展する可能性もある。上院財政委員会の委員長に就任する見通しのロン・ワイデン上院議員も「Subpoenas(召喚状)」という一語を発信し、政権追及への意欲を示した。議会に直接の刑事訴追権限はないものの、2028年の大統領選挙までの2年間、トランプ政権とその関係者が厳しい調査にさらされることになりそうだ。◆物価高より“政治腐敗”が重要問題に民主党がこうした強硬姿勢を取る背景には、政治腐敗に対する米国民の意識の変化がある。米CNBCが10月23日に報じた世論調査では、米国が直面する最も重要な問題として「政府の腐敗」を挙げた有権者が36%で最多だった。「食料品の価格」は34%、「民主主義の擁護」と「ガソリン価格」はそれぞれ23%だった。経済問題が複数の項目に分かれているとはいえ、政治腐敗が物価高の個別項目を上回ったことは注目される。また、ワシントン・ポストなどの調査では、約3分の2がトランプ大統領は大統領職を利用して私腹を肥やしていると考えていた。民主党は、国民が物価高に苦しむ一方、大統領一族は巨額の利益を得ているのではないかという疑念を選挙戦で強調した。米国民はこれまで、政治腐敗の疑惑をそれほど深刻に受け止めてこなかった。民主党にも共和党にも腐敗した政治家はいると考え、投票行動に直接結びつくことは少なかったからだ。しかし、今回は違った。ニューヨーク・タイムズ紙は10月31日、政治腐敗が有権者の関心を集め始めたと報じた。同紙が取材したフロリダ州の共和党支持者マイケル・ネイブ氏(61)は、今回、共和党候補者全員に反対票を投じ、その理由をこう語った。「トランプは『沼の水を抜く』と言っていた。ところが、今や彼自身がその沼になってしまった」 「沼の水を抜く(Drain the swamp)」とは、ワシントンの腐敗を一掃するというトランプ氏自身の公約だった。その言葉が今度は、トランプ氏を批判する言葉になったのである。◆5つの疑惑では、民主党が今後2年間で追及しようとしている腐敗とは何か。政府監視団体などが指摘する主な疑惑は次の通りだ。(1) 暗号資産事業による私的蓄財 トランプ氏とその家族は「ワールド・リバティ・フィナンシャル」などの暗号資産事業を通じて巨額の利益を得たとされ、大統領の規制権限との利益相反が問題視されている。(2) 外国政府からの贈与や投資カタールからの高級仕様のボーイング747-8型機の受け入れや、中東の政府系ファンドからトランプ一族に関係する事業への投資が、外交政策に影響を与えていなかったかという疑惑である。(3) 恩赦と政治献金の関係暗号資産業界や企業経営者への大統領恩赦が、多額の政治献金や資金提供への見返りではなかったかという問題だ。(4) 政治献金と便宜供与大企業や富裕な献金者が、政府人事、規制緩和、政府契約などで特別扱いを受けていなかったかという、いわゆる「ペイ・トゥ・プレイ」の疑惑である。(5) 一族の事業と外交政策の利益相反娘婿ジャレッド・クシュナー氏の投資会社と中東の政府系ファンドとの関係など、一族の事業活動が米国の外交政策に影響していなかったかという問題もある。これらは調査や批判の対象となっている疑惑であり、すべてが違法行為として立証されたわけではない。トランプ政権側も不正を否定している。それでも、ガルシア氏の「Lawyer up」というわずか2語の警告は、トランプ氏とその周辺が厳しい説明責任を問われる時代の到来を告げているように聞こえる。来年1月、新しい議会が始動すれば、その言葉の真価が試される。トランプ政治の「大粛清」は始まるのか。それとも政治的な報復合戦に終わるのか。その行方は、2028年の大統領選挙にも大きな影響を及ぼすことになるだろう。(執筆:ジャーナリスト 木村太郎)