トランプ氏の政府効率化公約、米首都経済に甚大な影響及ぼす恐れ

トランプ次期米大統領が連邦政府職員数十万人に首都ワシントンの職場に復帰するよう命ずるか、従わなければ追放すると言うかにかかわらず、地元当局者は地域経済に甚大な影響が及ぶ事態を覚悟している。

  選挙戦中、トランプ氏は連邦政府の職員最大10万人の転勤や数万人の解雇も含む大規模な組織再編を公約。連邦政府が首都ワシントンを「引き継ぐ」方針も表明していた。

  連邦政府と地域経済の結びつきが極めて強いだけに地元リーダーらは警戒している。630万人が暮らす首都圏には、31万4000人の連邦政府職員が居住し、政府機関や職員にサービスを提供する広大な産業エコシステムもある。

  非営利団体のDC財政政策研究所のエグゼクティブディレクター、エリカ・ウィリアムズ氏は、連邦政府がワシントン経済の巨大セクターであることは間違いなく、「連邦政府職員への脅威は、今後の経済機能に深刻な影響を及ぼす」と話す。

  地元住民が懸念しているのは、トランプ氏が提案した「政府効率化省(DOGE)」の業務だ。富豪イーロン・マスク氏と2024年大統領選共和党候補の1人だったビベック・ラマスワミ氏が主導するこの新組織は、2兆ドル(約310兆円)程度の政府支出削減を目指す。ラマスワミ氏は元FOXニュース司会者のタッカー・カールソン氏とのユーチューブでの対談で、トランプ次期政権が連邦職員に週5日出勤を命じる可能性を示していた。

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  ラマスワミ氏にとっては、この戦略は職員に退職を迫り人員削減につなげることができるが、ワシントンのバウザー市長は、市中心部の活性化を目指し、職員を職場に復帰させるかオフィス不動産を手放すようバイデン政権に要請している。

  連邦政府職員が完全に職場に復帰すれば、地域経済の回復につながる可能性もある。23年のワシントンDCビジネス改善地区の報告書によると、オフィス空室率は依然として高く、ワシントンの中心街おける経済活動は新型コロナ禍前の68%で停滞している。

  ワシントンは長い間、不況に強い都市であることを誇りにしてきた。連邦政府の所在地であることが多くの嵐を乗り切るのに役立った。だが、今回は連邦政府自体が大荒れとなるかもしれない。次期大統領と支持者らがワシントン首都圏について話す言葉は、容赦のないトーンに満ちている。トランプ氏は否定しているが、次期政権のために書かれた文書「プロジェクト2025」でヘリテージ財団はワシントンを北朝鮮の首都になぞらえている。

朝鮮半島の夜間の衛星画像は、自由市場を持つ南側が明るく照らされ、住宅、企業、都市が全体的に電化されている様子をよく示している。対照的に北朝鮮は、独裁者と取り巻きが住む首都平壌の小さな点以外は、ほぼ完全に暗闇に包まれている。同じ現象は、米国で最も裕福な6郡のうち4郡が、生産的な産業がほとんどないことで悪名高いワシントンの郊外にあるという、腹立たしい事実にも表れている。

  「ワシントンは荒涼とした不毛の地ではない。われわれは地域経済のエンジンだ」とウィリアムズ氏は話した。

  連邦政府職員の移動による影響を確実に受けるのは、ワシントン住民だ。バイデン政権が導入を約束したものの、連邦政府職員には職場復帰ポリシーがほとんどない。不動産の価値低下や販売減少、空室率上昇により、中心部のオフィス街では損失が膨らみ続けている。

  連邦職員と地元当局者は、トランプ次期大統領の公約が実現するかどうか固唾(かたず)をのんで見守っている。

原題:Trump Promises Could Have Seismic Impact on Washington Economy(抜粋)

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