香港立法会、同性カップルの権利拡大を認める法案を否決

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画像説明, 香港の立法会(議会)で、「断固反対」と書かれたプラカードを掲げて発言するマギー・チャン議員

香港の立法会(議会)は10日、海外で婚姻関係を結んだ同性カップルに限定的な権利を認める法案を、賛成14、反対71の反対多数で否決した。香港におけるLGBTQ(性的少数者)の権利推進運動に打撃を与える結果となった。

この法案は、2023年の香港終審法院(最高裁)の判断に基づき、政府が提出したもの。終審法院は当時、同性婚の合法化は認めなかったものの、同性カップルのための代替的な枠組みを2年以内に整備するよう命じていた。

香港は近年、同性愛者に対して好意的な都市として認識されつつあるが、当事者の権利は制限されている。LGBTQを自認する成人は人口の6%を占めると推定されている。直近の世論調査では、LGBTQコミュニティーへの支持が高まっていることが示されている。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、LGBTQの権利に対する「憂慮すべき拒絶」を示すものだと、法案が否決されたことを批判。新たな改正法案を提示するよう香港政府に求めた。

香港のLGBTQ活動家のジミー・シャム氏は、法案が通らなかったことを「非常に遺憾」に思うとし、香港政府が同性カップルの権利を保護できない現状は「癒えない傷を残す」だろうと述べた。

そして、政府が違法かつ違憲な現状を「見て見ぬふりをする」ことはないだろうと信じていると付け加えた。

シャム氏は2013年に米ニューヨークで同性婚をした。香港でも夫との婚姻関係を公的に認めてもらおうと、同性婚の合法化を求めて長年にわたり法廷闘争を続けてきた。こうした活動が、今回否決された法案の提出につながった。

終審法院は2023年、同性婚の合法化は認めなかった一方で、同性カップルのための代替的な枠組みを2年以内に整備するよう政府に命じた。

判事はこの時、法的認知の欠如が同性カップルの私生活を「引き裂き、おとしめる」ことにつながる「恣意(しい)的な干渉」となり得ると指摘していた。

10日に否決された法案は、香港政府のこうした法的義務を果たす試みだった。

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画像説明, 同性カップルの権利をめぐる法案は、香港のLGBTQ活動家のジミー・シャム氏の長年の法廷闘争がきっかけだった。画像は香港立法会の外で記者団に応じるシャム氏

法案には、海外で婚姻したり、同性カップルに法的保護を与えるシヴィル・ユニオンを結んだりした同性カップルに対し、病院で面会する権利や、配偶者が受ける医療行為について判断する権利など、一部の権利を認める内容が盛り込まれていた。

この法案を支持する李家超(ジョン・リー)行政長官は、否決されれば香港の法の支配を損ない、「深刻な結果」を招くだろうと警告。立法会に成立させるよう求めていた。

しかし、法案をめぐっては、LGBTQ活動家と立法会議員の双方から批判が上がっていた。LGBTQ活動家は、代替的な枠組みとしては不十分だと主張。一方、議員らも、伝統的な家族の価値観に反するもので、同性婚の合法化への道を開くと反発していた。

今回否決されたことで、政府は再検討を迫られることになる。代替案の提出期限は10月27日と、時間的猶予は限られている。

両者は近年、政治的に足並みをそろえてきた。中国の中央政府が、香港への支配を強めていることが主な理由だ。

中央政府が2021年に、「愛国者」だけが香港の立法機関に携われるとする法律を施行したことで、立法会には親中派が多い。香港政府トップの行政長官も事実上、中央政府が指名している。

世論調査によると、香港市民の間では同性婚への支持が高まっている。2023年の調査では、同性婚を支持する人は60%に達し、10年前の38%から大きく増加している。

香港では2023年、同性愛者を対象とした総合競技大会「ゲイゲームズ」がアジアで初めて開催された。

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