トランプ米大統領、いら立ち隠さず-関税発動控え交渉の重大局面

トランプ米大統領の掲げる上乗せ関税の発動が目前に迫る中で、米国の貿易相手は交渉の最終局面で難しい対応を迫られている。トランプ氏自身が、もはや交渉にしびれを切らしていると隠していないためだ。

  欧州連合(EU)やインドを含め各国・地域の交渉担当者が制裁的な関税の回避に向け奔走する中で、トランプ氏は依然として一方的に関税率を定める書簡を送り続けている。ただし、多少の修正余地は残しているようだ。

  トランプ氏はメキシコと欧州連合(EU)に対し30%の関税を課すと表明。新たな税率を通告する2通の書簡をソーシャルメディア上で12日に公開し、交渉で条件が改善されなければ8月1日から適用すると伝えた。

  トランプ氏は、米国への合成麻薬フェンタニル流入を食い止めるメキシコの取り組みが不十分だとし、また米国の対EU貿易赤字は不公正だと非難。EUとメキシコの対応が不十分と見なせば、さらなる引き上げもあり得ると警告した。

  こうした厳しい関税の回避を目指す各国の動きは、8月1日に多くの輸入税が発動されるのを前にさらに活発化するとみられている。

  ベッセント米財務長官は日本を訪れる予定で、EUは自動車や農産品の関税を巡る暫定合意を目指し、交渉を加速させている。

  今後数日間で、トランプ氏が一方的に関税率を設定する新たな通告を発する可能性もある。すでに交渉に値しないと判断した国々が対象となる見通しだ。

発動準備

  トランプ氏の通商政策は大きな転換期を迎えている。同氏が推し進める関税戦略はこれまでで最も重大な局面を迎え、貿易相手のリスクも一段と高まっている。トランプ氏は今回の期限を最終と位置付け、強硬姿勢を一段と強めている。

  ここ数日、トランプ氏のいら立ちは顕著だ。8月1日に向けて一連の関税発動を準備しており、日本や韓国といった長年の同盟国に対しても手を緩めていない。

  国内の政治事情で交渉が難航している国も多く、トランプ氏はカナダのカーニー首相の懐柔策にもかかわらず一部関税を引き上げ、さらにはブラジルに対しては50%という異例の高関税を課した。

  トランプ氏の姿勢は明確だ。時間をかけた交渉を放棄し、一方的に関税率を決めるという脅しを実行に移す意思があるということだ。そして、4月の発表時に市場を混乱させたような関税の新たな波が再び押し寄せようとしている。

  米国との貿易に依存する国々にとって、トランプ氏の強硬路線が突き付ける「屈するか、対決するか」という難題にどう対応するか、その判断の猶予はほとんど残されていない。

  トランプ氏自身は、関税率を一方的に決める方が好ましいと繰り返し述べており、ベッセント氏ら側近の忍耐を求める声だけがそれを引き止めている状況だ。

  トランプ政権1期目で商務長官を務めたウィルバー・ロス氏はブルームバーグテレビジョンとの10日のインタビューで、「問題はトランプ氏が提示された内容を受け入れるかどうかだ。譲歩が少しでも上積みされるかどうか。そしてその中身が何かだ」と指摘し、トランプ氏は「最悪の場合、関税をそのまま発動する準備を十分している」と語った。

  関税をちらつかせても土壇場で引っ込めると市場に見られてきたトランプ氏は、いわゆる「TACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつも尻込みする)」トレードに不満を示し、今回の延長が最後だと強調。

  さらに、長らく検討していた銅に対する関税を50%と定め、8月1日から実施すると発表。幅広い派生品が対象となる見通しだ。また、医薬品に対しては200%の関税を検討中だとしている。

原題:Trump Patience on Tariffs Runs Thin as Nations Jostle for Deals (抜粋)

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