ゾウの鼻にビールを……観光客の行動に批判殺到 ケニア
画像提供, skydive_kenya / Instagram
ワイクリフ・ムイア記者(BBCニュース)、ピーター・エムワイ記者(BBCヴェリファイ=検証チーム)、共にナイロビ
ケニアに滞在中のスペイン人男性が、ゾウの鼻にビールを注ぐ様子を撮影した動画を投稿し、ソーシャルメディア上で怒りの声が広がった。これを受け、複数の調査が開始されている。
この男性は、野生動物保護区内でケニアの人気ビール「タスカー」を缶から飲んだ後、その残りをゾウに与えた。
男性は、インスタグラムにこの動画を「牙(英語でTusk)のある友達とタスカー(Tusker)を一杯」という文章と共に投稿した。その後、ケニア人ユーザーからの批判が殺到したことを受け、動画は削除された。
BBCはこの映像を分析し、偽物ではないことを確認している。映像に映る風景や、よく知られたオスのゾウの姿から、撮影場所は中部ライキピア郡にある、民間所有のオル・ジョギ保護区であることがわかる。
BBCの取材に応じた、同保護区のスタッフは、この行為に衝撃を受けたと述べ、映像を「関係当局に提出する」と語った。
「こんなことは決して起きてはならない。我々は自然保護を目的としており、このような行為は容認できない」と、フランクとだけ名乗ったスタッフは述べた。
このスタッフは、「ゾウに近づくことすら許可していない」とも話した。
ケニア野生動物公社(KWS)の広報を務めるポール・ウドト氏も、この件について調査を進めているとBBCに話した。
ゾウにビールを与えた男性はソーシャルメディア上で本名を使用しておらず、すべてのアカウントで、「Skydive_Kenya」という言葉を少しずつ変えた名称を使用している。
26日にインスタグラムに投稿されていた別の動画では、この男性が2頭のゾウにニンジンを与えた後、「今はビールの時間だ」と発言する様子が映っている。
これらの動画には数百件の批判的なコメントが寄せられ、男性の国外退去を求めるユーザーもいた。その後、一連の投稿は削除された。
ビールを与えられたゾウは体が大きく、長い牙を持っている。特に片方の牙には損傷があり、特徴的だ。
インターネット上に投稿された他の画像や動画と照合した結果、このゾウはオル・ジョギ保護区にいるオスのゾウ「ブパ」である可能性が高い。ブパは人懐っこい性格で、訪問者によって頻繁に写真が共有されている。
ブパは1989年にジンバブエで行われた大規模なゾウの間引きから救出され、8歳のときに同保護区に移送された。
オル・ジョギ保護区には、約500頭のゾウが生息している。また、親を失った動物を保護し、野生に戻す取り組みの先駆者だと、保護区について紹介している。
この男性は、TikTokでは自らを「スリル中毒者」と称している。25日に投稿した動画の中では、近隣のオル・ペジェタ保護区で、サイにニンジンを与える様子を映していた。
同保護区のディラン・ハビル氏はBBCに対し、「彼はサイに触れてはならないという当保護区の規則を破った。サイはペットではない」と述べた。
ハビル氏は、映像に映っていたサイが同保護区の個体だと確認した。一方、オル・ペジェタにはゾウは生息していないと付け加えた。
ケニアの生物学者でゾウ保護活動家でもあるウィニー・キイル博士は、男性の行動について「不幸な出来事だ」と述べ、その行為が自身とゾウの命を危険にさらしたと指摘した。
「ケニアに生息するゾウの約95%は野生だ。ゾウに近づいて食べ物を与えられるかのような印象を与えるソーシャルメディア投稿は誤っている」と、キイル博士はBBCに語った。
ケニアでは先にも、マサイマラ国立保護区で季節ごとの大移動中のヌーの群れを観光客が妨害する様子が撮影されたばかり。ヌーの川渡りは、世界最大級の野生動物の壮観として知られている。
拡散された映像には、観光客がサファリ車両から降りて川岸に集まり、ヌーをワニの潜む水域へと追い込む様子が映っており、強い非難を呼んだ。
この事件を受けて、ケニアの観光・野生動物省は規則の強化を発表し、ツアー運営会社に対し、公園内の規則を徹底し、指定区域以外では訪問者を車両の外に出さないよう指示した。
また、野生動物保護区内の標識の改善と、安全規則に関する訪問者への教育強化も約束した。
マサイマラのヌーの川渡りは、毎年数千人の観光客を引きつけており、ケニアが誇る自然遺産のひとつとされている。