EU、ウクライナへのロシア凍結資産使った24兆円融資案見送り 支援継続は約束
画像提供, EPA
欧州連合(EU)は23日、ブリュッセルで首脳会議を開き、今後2年間、ウクライナの「財政的ニーズ」を支援することで合意した。ただ、ロシアの凍結資産数十億ユーロをウクライナの防衛資金に充てる案は見送られた。
EUは、ベルギーの決済機関に保管されている約1400億ユーロ(約24兆3500億円)のロシア資産を使ったウクライナ支援を検討していた。しかし、ベルギーが懸念を示したため、決定は12月まで持ち越しとなった。
ウクライナ侵攻をめぐり、EUは対ロシア制裁を発動している。23日には、ロシア政府の石油収入を標的とした措置を発表した。
EU首脳会議の翌日24日には、英ロンドンで、ウクライナを支援する欧州中心の「有志連合」の首脳会議が開かれる。キア・スターマー英首相は欧州各国の指導者に、ウクライナへの長距離ミサイルの供与拡大を求める方針。
「有志連合」首脳会議にはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相、オランダのディック・スホーフ首相が出席する予定。フランスのエマニュエル・マクロン大統領ら複数の首脳は、オンラインで参加する。
欧州各国の閣僚らは23日の首脳会議で、数十億ユーロのロシア凍結資産をいわゆる「賠償ローン」としてウクライナに融資する案について協議した。
多くのEU加盟国は、今回の会議でこの案が支持され、EUの政策執行機関である欧州委員会に対して、数週間以内に正式な法的提案を策定するよう要請できることを期待していた。
しかし、長時間の協議の末に採択された最終文書は、計画の承認には至らなかった。代わりに、「ウクライナの財政的ニーズの評価に基づく支援の選択肢」を欧州委員会に求める内容となった。
文書には、「ロシアの資産は、ロシアがウクライナに対する侵略戦争を停止し、その戦争によって生じた損害を賠償するまで、凍結され続けるべきだ」とも付け加えられた。
EU首脳はロシア凍結資産を使った融資案について、12月の首脳会議で合意したい考え。
「これは決してささいな問題ではない。非常に複雑だ」と、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は首脳会議後に語った。「明確にすべき点があることもはっきりした」。
欧州理事会のアントニオ・コスタ議長は、「EUはウクライナの財政的ニーズを今後2年間にわたり確実に支援することを約束した」と、前向きに述べた。
「ロシアはこれをしっかり受け止めるべきだ。ウクライナは自衛に必要な資金を確保することになる」と、コスタ氏は記者会見で語った。
首脳会議に出席したウクライナのゼレンスキー大統領は、今回の合意内容を、ウクライナ政府が戦闘を継続できるようにロシア資産を活用するという考えに対する「政治的支持」の表れだと評価した。
ロシア資産の活用には、法的に複雑な懸念点が複数伴う。
特にベルギーの場合、ロシア資産が保管されている決済機関ユーロクリアに対してロシアが法的措置に出た場合に責任を負う可能性を懸念し、凍結資産の活用に慎重な姿勢を示している。
ベルギーのバルト・デウェーフェル首相は、ロシア凍結資産を使う案は「未知の領域」だと指摘。ベルギーがこれを支持するには、具体的かつ確固たる保証が必要だと述べた。
ベルギー政府は、ユーロクリアが訴訟に直面し、最終的に大規模な金融危機を引き起こす恐れがあると主張している。
「これ(ロシア凍結資産を使う案)は合法か? 非常に良い質問だ(中略)それに対する明確な答えはない」と、デウェーフェル首相は述べた。
「いずれにせよ、我々は訴訟に引きずり込まれることになる。そうなるのは確実だと思われる」
ロシアは凍結資産をめぐるEUの提案を批判している。
「EUによる取り立て措置は、必ず痛みを伴う対応を招く」と、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は述べた。
EUの最新の対ロシア制裁は、「ロシア産原油の大口買い手」となっている中国の3事業体を標的としている。うち二つは石油精製所、一つはエネルギー取引業者だ。
EUのカヤ・カラス外務・安全保障政策上級代表は、これらの措置は「ロシアの戦争資金の調達手段を奪うことを目的としている」と説明。「ロシアが我々より長く持ちこたえることはできない」というメッセージを発するものだとした。
中国はこの決定を非難している。中国商務省の報道官は、「中国とEUの経済・貿易協力の枠組み全体を深刻に損なうものだ」と述べた。
22日夜にアメリカの対ロシア制裁が発表された後、トランプ氏はプーチン氏とのハンガリー・ブダペストでの直接会談が無期限に延期されたことを認めた。
トランプ氏は、「私はウラジーミルと話すたびに、良い会話をしている。しかし、それはどこにも進展しない」と述べた。
アメリカの新しい対ロシア制裁は、ロシアの2大石油企業のロスネフチとルクオイルを標的としたもの。プーチン氏は、アメリカの「非友好的な」措置は「一定の影響をもたらすが、我々の経済的豊かさに重大な影響を与えることはない」と述べた。
石油はロシア最大の輸出品の一つ。ウクライナは長距離ミサイルを使い、ロシアの石油・エネルギー施設を攻撃したい考えだ。
ゼレンスキー氏は、アメリカからの長距離巡航ミサイル「トマホーク」の供与を望んでいた。しかし、トランプ氏は先週、トマホークは「非常に複雑な」兵器で、運用するには1年間の集中的な訓練が必要だとして、ゼレンスキー氏の要請を拒否した。
プーチン氏は、もしアメリカがウクライナにトマホークを使ったロシア攻撃を許可するのなら、ロシアは「非常に強力な」対応を取ると警告していた。ロシア領深部への攻撃は「事態の激化」と見なすとも、プーチン氏は述べている。